2020 Fiscal Year Annual Research Report
狭線幅かつ高安定な周波数安定化レーザーに関する研究
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18H03886
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
洪 鋒雷 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (10260217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 雅人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (20635817)
赤松 大輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (90549883)
吉井 一倫 徳島大学, ポストLEDフォトニクス研究所, 特任准教授 (90582627)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レーザー分光 / 周波数安定化レーザー / 光コム / 原子・分子物理 / 超精密測定 / 量子エレクトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
2mのヨウ素セルを用いて実現したヨウ素安定化Nd:YAGレーザーの周波数安定度を評価するために、もう一台同じレーザーを構築し、ヨウ素の吸収信号の観測と周波数安定化を実現した。2つの安定化レーザーを同じ実験条件に設定し、ビート周波数計測を実施した結果、平均時間1秒でのアラン標準偏差が2.7×10-14であることがわかった。このことから、2mのヨウ素セルを用いて実現したヨウ素安定化Nd:YAGレーザーの周波数安定度が平均時間1秒で1.9×10-14となることがわかった。この安定度は今までヨウ素セルで実現した最高レベルのレーザー周波数安定度である。 レーザーの周波数雑音パワースペクトル密度を正確に評価するために、構築した光ファイバーマイケルソン干渉計を音響雑音及び振動雑音を低減した高安定環境下に設置した。その結果、1~105 Hzの範囲において波長1542 nmの半導体レーザーの周波数雑音パワースペクトル密度を測定することができた。さらに、測定したレーザー周波数雑音の情報をレーザーの注入電流にフィードバックすることにより、レーザーの線幅狭窄化に成功した。 これまでレーザーの狭線幅化は1.5 μmの半導体レーザー、周波数安定化は1 μm のNd:YAGレーザーで行われた来ており、同じレーザーおいて狭線幅化と周波数安定化を同時に施すことはできなかった。我々は一つの導波路内で二つの異なる分極反転周期をもつデュアルピッチPPLN導波路を用いた1542 nmレーザー光の3倍波発生と、それを用いたヨウ素分子の飽和吸収分光およびレーザーの周波数安定化を実施した。さらに、アセチレンのP(16)吸収線の3倍周波数付近にあるヨウ素分子R(73)46-0: a1超微細構造の絶対周波数計測を実施した。これで、1.5 μmの半導体レーザーで狭線幅化と周波数安定化を同時に施す道が開けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
我々は、2mのヨウ素セルを用いて2台目のヨウ素安定化Nd:YAGレーザーを構築し、ヨウ素分子の吸収信号の観測と周波数安定化を実現した。2つの安定化レーザーを同じ実験条件に設定し、ビート周波数計測を実施した。このことから、2mのヨウ素セルを用いて実現したヨウ素安定化Nd:YAGレーザーの高い周波数安定度の評価が計画通りに進んでいる。また、2mのヨウ素セルを用いて実現したヨウ素安定化Nd:YAGレーザーの周波数安定度が平均時間1秒で1.9×10-14となることがわかった。この安定度は今までヨウ素セルで実現した最高レベルのレーザー周波数安定度であるので、現時点で当初の計画以上に進展している。 ファイバー遅延線を用いたマイケルソン干渉計においては、1~105 Hzの範囲において波長1542 nmの半導体レーザーの周波数雑音パワースペクトル密度を測定することができたので、計画通りに進んでいる。また、測定したレーザー周波数雑音の情報をレーザーの注入電流にフィードバックすることによりレーザーの線幅狭窄化に成功し、レーザー線幅の上限が1.2 kHzと評価できたので、これは当初の計画よりも進んでいる。 さらに、これまで1.5 μmの半導体レーザーと1 μm のNd:YAGレーザーで別々に進めてきたレーザーの狭線幅化と周波数安定化が1.5 μmの半導体レーザーに一本化できたことが当初の計画以上に進展であり、研究計画成功の道筋が完全に見えてきた。一つの導波路内で二つの異なる分極反転周期をもつデュアルピッチPPLN導波路を用いた1542 nmレーザー光の3倍波発生が実現され、1.5 μmの半導体レーザーによるヨウ素分子の飽和吸収分光およびレーザーの周波数安定化が可能となった。それにより、同じレーザーおける狭線幅化と周波数安定化の同時実施が可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
レーザーの周波数安定化において、長時間運転が可能でメンテナンスフリーという実用性の観点を捉え、光時計などの応用で必要となる狭線幅かつ高安定なレーザーを、原理から実証まで研究を進める。そのために、光ファイバーマイケルソン干渉計によるレーザーの狭線幅化とヨウ素分子吸収線によるレーザーの周波数安定化のハイブリッド安定化方式を研究し、その実現可能性を明らかにする。また、システムの評価と改良により、長期連続運転可能な光周波数中継器を実現し、光時計への応用を実証する。さらに、より短い波長帯のヨウ素吸収線を探索し、ガスセルによる安定化としては未踏の周波数安定度の実現を目指す。 今後は、1.5 μmの半導体レーザーによる狭線幅化と周波数安定化を同時に実施する。それにより、光ファイバーマイケルソン干渉計によるレーザーの狭線幅化とヨウ素分子吸収線によるレーザーの周波数安定化のハイブリッド安定化方式の実現を目指す。周波数安定化では、1.5 μmの半導体レーザーに合わせて、相互作用長6mで、変調周波数、ヨウ素セル圧力、光パワーなどの最適化を行う。また狭線幅化においては、光ファイバー干渉計で得られた周波数雑音の情報を使って高速制御を施す。その上で最終的に制御帯域の分離を実施し、最適なハイブリッド安定化を実現する。 ハイブリッド安定化を実現レーザーシステムの評価を実施するために、2台の同様なレーザー構築する。そうすることで、システムの評価と改良が可能となる。改良は短期の安定度のみならず、長期連続運転も可能となるように進める。 さらに今回1.5 μmの半導体レーザーの3倍波である514 nmであり、従来Nd:YAGレーザーによる532 nmのヨウ素分子分光よりも短い波長帯である。この波長帯のヨウ素分子吸収線はより狭い線幅を持つので、これらの吸収線を利用してガスセルで未踏の周波数安定度の実現を目指す。
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Research Products
(27 results)