2018 Fiscal Year Annual Research Report
Asymmetric Borylation with Chiral Dense Reaction Space
Project/Area Number |
18H03907
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 肇 北海道大学, 工学研究院, 教授 (90282300)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 朋宏 北海道大学, 工学研究院, 助教 (50638187)
前田 理 北海道大学, 理学研究院, 教授 (60584836)
百合野 大雅 北海道大学, 工学研究院, 助教 (20771504)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 不斉合成 / 光学活性配位子 / ホウ素化 / 計算化学 / 反応経路自動探索法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的の一つは、計算化学を援用することで、光学活性銅(I)触媒の合理的設計を行い、ロンドン分散力などの弱い相互作用をコントロールし、最終的には未踏の研究領域である「非対称稠密型触媒」を開発することである。本年度では、以下の成果を得た。 1. 末端アレンのホウ素化環化反応(Chem. Commun. 2018, 54, 4991):アルキルハライド部位を有するアレン基質に対して銅(I)触媒によるホウ素化を施すと、末端アレン選択的にホウ素化が進行し、生じるアルキル銅(I)中間体がアルキルハライド部位に環化反応下生成物が選択的に得られた。計算化学による反応機構解析を行った。 2. 脱フッ素化ホウ素化による光学活性アリルホウ素化合物の合成法開発(Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 7196): CF3基をもつE-アルケンに対して、光学活性銅(I)触媒によるホウ素化を実施すると、対応する1,1-ジフルオロ光学活性アリルホウ素化合物を高収率かつ高エナンチオ選択性で得た。 3. 量子化学計算主導デザインによる脂肪族末端アルケンの不斉ヒドロホウ素化(Nature Commun. 2018, 9, 2290): 実験結果をもとに遷移状態を計算・解析し触媒の設計原理を抽出、さらに実験を繰り返すことで高い選択性、活性をもつ触媒のデザインに成功した。今回開発した触媒は、C1対称性をもつ「非対称稠密型触媒」であり、これまでの配位子設計手法では到達し得ない、独自の構造を持つ。 4. アシルボラン化合物の高効率合成法の開発(Angew. Chem. Int. Ed. 2019, Just Accepted): 5. メカノケミストリーによるホウ素化反応の開発 (Nature Commun. 2019, 10, 111; Chem. Eur. J. 2019, 25, 4654)
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初研究計画では、「1. 末端アルケン・非対称内部アルケン・ポリエンの位置選択的不斉ホウ素化の開発(平成30年度から33年度)」「2. 不斉脱芳香族ホウ素化による環状光学活性有機ホウ素の新合成手法の開発(平成31年度から33を度)」「3. 光学活性含フッ素有機ホウ素化合物の新しい合成法とキラルフッ素合成ブロックの開発(平成32年度から33年度)」「4. アシルボロン化合物の新合成法開発(平成32年度から33年度)」を研究目標の項目としてあげたが、1のうち最も重要な末端アルケンのヒドロホウ素化に関しては一年で研究を達成した。2に関しては未発表であるが、ピロールからの不斉脱芳香族ホウ素化を達成しており、80%程度の完成度となっている。また、3,4に関してもすでに当初予定を前倒しして研究を完成させ、報告している。こうした状況から、当初予定よりも大幅に早く研究が進展している。さらに、本研究を遂行している中で、「メカノケミストリー」に着目した研究を行うことができ、全く新しい条件におけるホウ素化反応を開発することに成功した。当初研究計画を超えて研究が進展している。また、本年のみ、共同研究者として百合野助教に参画してもらい、本研究の基本コンセプトである「計算化学を用いた触媒設計」が、他の金属でも可能かどうかを確認する作業を行った。その結果、一定の成果とノウハウを蓄積することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画のうち、「1. 末端アルケン・非対称内部アルケン・ポリエンの位置選択的不斉ホウ素化の開発」に関しては、未達成の、非対称内部アルケン、ポリエンの位置選択的不斉ホウ素化の開発について研究を集中する。本年度の研究で、「実験結果をもとに遷移状態を計算・解析し触媒の設計原理を抽出、さらに実験を繰り返すことで高い選択性、活性をもつ触媒のデザインがを行う」という研究手法の有効性が明らかになった。これを援用、発展させることで、これらの課題を解決したい。また、「2. 不斉脱芳香族ホウ素化による環状光学活性有機ホウ素の新合成手法の開発」に関しては、残り20%の研究を本年中に完成させ、論文発表を行う。新しく得られた研究の方向性である「メカノケミストリーによるホウ素化」については、現象の基本原理や適用範囲の見極め、更に応用可能性の展開を求めて鋭意研究を遂行する。
|