2020 Fiscal Year Annual Research Report
Asymmetric Borylation with Chiral Dense Reaction Space
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18H03907
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 肇 北海道大学, 工学研究院, 教授 (90282300)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 朋宏 北海道大学, 工学研究院, 助教 (50638187)
前田 理 北海道大学, 理学研究院, 教授 (60584836)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 不斉合成 / 光学活性配位子 / ホウ素化 / 計算化学 / 反応経路自動探索法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、計算化学を援用することで、光学活性銅(I)触媒の合理的設計を行い、ロンドン分散力などの弱い相互作用をコントロールし、最終的には未踏の領域である「非対称稠密型触媒」を開発することである。本年度では、以下のような多大な成果を得た。 1. ラジカルリレー反応による活性化されていないアルケンの1,2-アルキルホウ素化(J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 5260):アルキルハライドに適切な置換基(フッ素基あるいは立体障害をもつもの)を導入することにより反応性を調整し、これから発生させたラジカルのアルケンへの付加とホウ素化を達成した。2. 銅(I)触媒によるインドール及びピリジン誘導体の脱芳香族ケイ素化 (Chem. Lett. 2021, 50, 289):シリルボランと同触媒の組み合わせにより、これまでに例のないケイ素化反応の開発に成功した。3. 安定な発光性環状アシルボラン誘導体の発見 (Bull. Chem. Soc. Jpn. 2021, Accepted) 前年度までにアシルボランの新しい合成法を開発しているが、これをアミンと反応させることで、新しい安定な発光性アシルボランを見出した。またこれらの発光性メカノクロミズムなどの特性も検討した。4. シリルボラン化合物の一般的合成法の開発 (J. Am. Chem. Soc. 2020, 142, 14125):ヒドロシランのIr触媒を用いたジボロンによるホウ素化反応が2008年にHartwigらによって報告されているが、本研究では新たにより高活性なRh触媒、Pt触媒を見出して、更に一般性の高い合成法を開発した。5. メカノケミカル合成開発:去年度に引き続き、新たなメカノケミカル合成の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、「1. 末端アルケン・非対称内部アルケン・ポリエンの位置選択的不斉ホウ素化の開発(平成2018年度から2021年度)」「2. 不斉脱芳香族ホウ素化による環状光学活性有機ホウ素の新合成手法の開発(平成2019年度から2021年度)」「3. 光学活性含フッ素有機ホウ素化合物の新しい合成法とキラルフッ素合成ブロックの開発(平成2020年度から2021年度)」「4. アシルボロン化合物の新合成法開発(平成2020年度から2021年度)」が項目としてあげたが、1に関しては2019年度までに研究を達成し更に本年度ではアレンの反応(論文作成中)に関してほぼ完成に至っている。2に関してはピロールの不斉脱芳香族ホウ素化・ケイ素化と環状エーテル構造を持つ有機ホウ素化合物の合成に成功し、目的をほぼ達成している(Chem. Lett. 2021, 50, 289)。3.に関しては、ほぼ達成し論文を発表しているほか(J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 5260)、さらに含フッ素ヘテロ環状化合物の不斉合成に成功している(論文作成中)。4に関しては、前年度までに新しい合成法を開発しており、本年度は更にその応用として、発光性アシルボラン誘導体の合成に成功した。またこれらの成果に加えて、エナンチオ収束型ホウ素化反応に非常に有効なSi-QuinoxP*配位子の開発に成功している。また、「メカノケミストリー」に着目した研究を行うことができ、全く新しい条件におけるホウ素化反応を開発することに成功しているが (Science 2019, 1500)、本年度では更に研究をすすめるとともに、ボールミルを用いた宮浦ホウ素化の開発にも成功している(論文作成中)。
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Strategy for Future Research Activity |
末端アルケン・内部アルケン・ポリエンの位置選択的不斉ホウ素化について、ほぼ目標を達成しているが、最も難しい内部アルケンの位置選択的不斉ホウ素化は未達成で、さらなる検討が必要である。この基質のコントロールは、基質の立体的な相互作用部位が小さいため本質的に困難であるが、2020年度に開発した、立体制御能に優れたSi-QuinoxP*配位子を活用し、分子間相互作用の精密なコントロールを達成する。さらに反応経路自動探索法と、機械学習を駆使し、実験的実証を組み合わせて合理的設計を実現する。触媒の構造のデザインにおいては、分散力、CH/π相互作用を考慮したDFT計算を用いる。本年度はさらに、多置換アレンの位置選択的ホウ素化・アルキル四置換アルケンの立体選択的合成法・シス型シリルボリルシクロプロパンの合成を達成する。さらに研究分担者である前田理教授(北海道大学)と協力して反応経路自動探索法を活用した反応経路の設計を行う。また光学活性触媒に必要な光学活性有機リン配位子の合成は、高度なテクニックを必要とするが、この化合物の合成に関して世界第一人者である今本恒雄・千葉大学名誉教授・北海道大学客員教授(研究協力者)からの実験指導、光学活性有機リン化合物中間体の供給によって本研究を達成する。また、非対称稠密反応空間の適用範囲を探るため、また本研究を遂行する中で新たに見出した、ヒドロシランの遷移金属触媒によるホウ素による光学活性シリルボランの不斉合成についても検討する。さらに、得られたシリルボランを用いて、複数のキラルセンターをもつ、光学活性ジシラン、オリゴシランの合成を行う。また、ボールミルを用いたメカノケミストリーを活用した新しい不斉触媒、ホウ素化反応の開発も引き続き行う。
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