2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of new reactivity of novel metal-alkylidene and -carbene compllexes
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18H03911
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高井 和彦 岡山大学, 自然科学研究科, 特任教授 (00144329)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村井 征史 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (40647070)
浅子 壮美 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 上級研究員 (80737289)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 金属カルベン錯体 / Schrock型金属アルキリデン錯体 / gem-二金属化合物 / クロム / 亜鉛 / チタン / メタセシス / シクロプロパン |
Outline of Annual Research Achievements |
Schrock型金属アルキリデン(あるいはメチレン)錯体の反応としては、メタセシス、シクロプロパン化、カルボニル基のオレフィン化の反応があげられる。今年度はとくにクロムアルキリデン錯体とチタンメチレン錯体について大きな研究の進展があった。 1.gem-ジヨードアルカンであるMe3SiCHI2をクロム(II)で還元すると、ヨウ素二つが還元されgem-ジクロム錯体Aが生成する。錯体Aを用いると、アルデヒドのシリルオレフィン化反応や末端オレフィンのシリルシクロプロパン化反応がおこなえる。今回、第3の反応性であるメタセシス反応がこの錯体Aで進行することを見いだした。末端アルキンと末端アルケンを分子内の適切な位置にもつ基質にクロム錯体Aを作用させたところ、アルキンとのメタセシス反応が起こり、生じたクロムアルキリデン種が分子内でアルケンと反応しシクロプロパン化体を与えた。末端アルキン、内部アルキン、ケトンという三つの官能基をもつ基質では、高い官能基選択性を示し、その順番に反応した。とくにケトンとの反応ではオレフィンを与えるというSchrock型アルキリデン錯体の反応性を示した。 2.チタンメチレン錯体を亜鉛メチレン錯体とチタン(III)錯体から合成した。その単結晶を単離し、X線で錯体の構造解析をおこなった。単離されていた既知の二核チタノセン錯体はチタン(IV)の錯体であるが、これらとは異なり、チタン(III)の錯体で、Ti-Ti結合をもつ反磁性の錯体であることがわかった。この錯体の反応性を調べ、エステルのメチレン化だけでなく、末端共役ジエンからビニルシクロプロパンへの変換もひきおこすことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により、発表の機会となる国内外の学会はほとんど開催されなかった。また、大学での研究も構内立ち入り禁止措置などで長期間制限されることがあった。そのような状況ではあるが、研究成果は論文として発表できた。発表した論文は、Org. Lett., Chem. Commun., Chem. Sci., Asian J. Org. Chem. 各1報である。さらに4月の時点でChem. Commun. に1報、受理されている。いずれもIFの高い学術誌である。 本年度はとくに、次につながる結果として、トランスメタル化によりチタンやクロムなど他の遷移金属錯体の合成の原料となる安定で扱いやすいgem-二亜鉛錯体が単離できたことは大きい。 本プロジェクトは順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
1. ポリハロメタンをクロム(II)で還元して得られる錯体の単離と構造決定、反応性の探究:前年度、CCl4をクロム(II)で還元すると塩素三つが還元され、クロムカルビン錯体が生成することを見いだし、その単結晶構造解析をおこなった。この反応において、塩素を臭素に換えたところ、CBr4の炭素-臭素結合がすべて炭素-クロム結合となったカーバイド錯体が生成することを予備的に見いだしている。そこで、この錯体の単結晶を作成し、その構造解析をおこなうとともに、反応性を調べる。 2. 二核の金属メチレン錯体調製の試み:gem-ジ亜鉛化合物(=亜鉛μ-メチレン錯体)にチタン(III)錯体を混ぜると二核のチタンメチレン錯体(=チタンμ-メチレン錯体)が生成することを前年に報告した。このトランスメタル化がチタン以外の遷移金属、たとえばクロムやモリブデンでおこなえないかを調べる。 3. 亜鉛カルベノイドとgem-ジ亜鉛化合物の新たな調製法の確立と構造決定:ジヨードメタンを亜鉛で還元すると、溶媒や温度、添加物などの条件により、亜鉛カルベノイド(Simmons-Smith反応活性種)やgem-ジ亜鉛化合物(=亜鉛μ-メチレン錯体)が生成する。この反応について、その生成条件を精査する。さらにgem-ジ亜鉛化合物の結晶構造からSchlenk平衡の状況を明らかにする。 4.新たなモリブデンおよびタングステンアルキリデン錯体の調製と利用:ゼロ価のモリブデンあるいはタングステンカルボニル錯体にキノンを添加して、対応する低原子価モリブデン(あるいはタングステン)を調製し、それを用いるカルボニル化合物からの脱酸素反応を経由する新反応を開発する。
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Remarks |
定年退職により、上記のURLは変更になる可能性がある。
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Research Products
(6 results)