2018 Fiscal Year Annual Research Report
Photo-thermal Energy Conversion Based on Photo-Electrochromic Molecules
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18H03919
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
河合 壯 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40221197)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フォトクロミック分子 / 光熱エネルギー貯蔵 / 光異性化 / 光反応量子収率 |
Outline of Annual Research Achievements |
光により異性化する分子フォトクロミック分子の光反応を利用し、光エネルギーを熱として貯蔵し、必要な時に放熱する光熱エネルギー変換・貯蔵機能分子の学理を探求し、その実現可能性を明らかにする。ここでは光反応による異性化の効率が高い、ターアリーレン系分子を検討してきた。異性化前後での内部エネルギー変化が、反応に関与する複素芳香環の芳香族安定化エネルギーによってチューニング可能であるとの基本的な考え方に基づき、種々の芳香族ユニットを有するターアリーレン誘導体に関して光異性化前後の内部エネルギーを班密度関数(DFT)法に基づく量子科学計算を行った。その結果、開環体から閉環体へ光異性化するに伴って3つの芳香族ユニットが非芳香族化するターアリーレン系フォトクロミック分子では、比較的大きな内部エネルギー変化が得られることが明らかになった。さらに芳香族安定性が比較的大きいチオフェン環を導入することでさらに大きなエネルギー変化が可能であることが見出された。実際にいくつかの分子の誘導体を合成した。その結果、ターアリーレン誘導体に特徴的な光閉環反応・光開環反応を示す新規フォトクロミック分子の開発に成功した。その光反応量子収率を検討したところいずれも、50%以上の比較的高い反応量子収率が見出され、効率よく紫外光エネルギーを内部エネルギーとして貯蔵できることが明らかになった。逆方向の異性化を誘起するためには可視光を照射する。この場合、光反応量子収率は3%以下で、逆方向の光反応感度は比較的低いことが明らかになった。その光反応性の原因については別途調査が必要であると考えられる。一方、放熱反応に相当する開環異性化反応の誘起方法として電気化学反応が有効であることが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、新しい光熱エネルギー変換分子の開発を目指し、その学理を探求することとその可能性の実証を目指している。本研究で目指す性能要件として350nm-400nmに感度波長を有する、光反応量子収率Φphが70%以上を有する、着色体半減期τ1/2、が1週間以上、電気化学トリガーを用いて連鎖的な開環反応が誘起され、その消費エネルギーが下記の保持エンタルピーの1/20以下。分子内に保持されるエンタルピー>20kcal/mol。これらが満たされると単色光エネルギー貯蔵変換効率η>30%が達成される。2018年度はターアリーレンの芳香族安定化エネルギーと内部エンタルピー変化との相関を考慮し、チオフェン、チアゾールなどさまざまなヘテロ元素を含む芳香族分子を有するターアリーレンについて量子科学計算による評価と分子合成を行い上記の性能要件の相関解明に大きな進歩を見た。具体的には内部エンタルピー変化が芳香族安定性により予測できることを明らかにし、分子設計の主導原理を明らかにすることが出来た。この知見を基盤に分子材料のチューンニングを行うことで、高効率光熱エネルギー変換分が達成されるものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の検討を経て、大きな進捗が得られたとともに一部では当初予想していなかった新たな課題も見いだされた。例えば、高い光閉環反応量子収率を示すフォトクロミック分子は比較的光開環反応量子収率が低い傾向が見出された。先行研究の分子では励起状態のエネルギー曲面上の双曲交差が形成していることに相当しているものと理解されるが、従来のモデルでは必ずしも全体を説明することが難しいことが明らかになった。このことから、超高速分光などの研究手法を取り入れて、研究を拡大することが必要と思われる。一方で、高性能分子開発に向けた研究推進の観点では、熱を取り出す開環反応の高効率化が重要で、その高効率がが必要となる。本研究では酸化反応に伴う連鎖開環反応を検討することとしており、その高効率化が重要な課題となる。すなわち高速、高効率の連鎖開環反応のための分子設計を進めることが当面の課題となる。
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Research Products
(17 results)