2020 Fiscal Year Annual Research Report
Photo-thermal Energy Conversion Based on Photo-Electrochromic Molecules
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18H03919
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
河合 壯 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40221197)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東田 卓 大阪府立大学工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00208745)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フォトクロミズム / エネルギー貯蔵 / 太陽エネルギー / 連鎖反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では光により異性化する分子フォトクロミック分子の光反応を利用し、光エネルギーを熱として貯蔵し、必要な時に放熱する光熱エネルギー変換・貯蔵機能分子の学理を探求し、その実現可能性の解明を目指している。光子は可視光で約2eV、紫外光では3eVのエネルギーを有し、約400kJ/molの熱エネルギーに相当する。これはおよそ100kJ/mol程度といわれる単結合の形成エネルギーの4倍に相当する。通常の太陽電池の変換効率が20%程度であることを考えると、将来の低炭素化とエネルギーの安定確保の両立に向けた視点から光による単結合の形成開裂反応は光子エネルギーの貯蔵媒体として検討に値する。ここでは光照射により炭素―炭素単結合が形成、乖離する異性化の効率が高い、ターアリーレン系分子における熱貯蔵性について検討してきた。前年までに異性化前後での内部エネル ギー変化が、単結合の形成、反応に関与する複素芳香環の芳香族安定化エネルギーおよび反応によって形成されるsp3型炭素原子周囲の立体障害によって変化することを示唆する結果を得ている。そこで引き続き芳香族性の異なる芳香族ユニットを有するターアリーレン誘導体とそのフェニル置換体に関して光異性化前後の内部エネルギーを班密度関数(DFT)法に基づく量子化学計算を進めた。また励起状態についての検討を加えたほか、実際に合成した分子について連鎖反応に伴う温度上昇から発熱の実測に成功した。発熱量の90%以上が内部エンタルピー変化により貯蔵された講師エネルギーに由来するものと推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的としてきた分子材料の設計と合成を進め、さらにその物理化学的な性質の解明を進めた。本研究では、新しい光熱エネルギー変換分子の開発を目指し、その学理を探求することとその可能性の実証を目指している。本研究で目指す感度波長帯域350nm-400nm、光反応量子収率Φph70%以上、着色体半減期τ1/2が1週間以上、電気化学トリガーを用いて連鎖的な開環反応が誘起され、その消費エネルギーが下記の保持エンタルピーの1/20以下などを同時に満たす分子材料を探索することとした。前年までに反応量子収率は60%以上で、τ1/2が1週間、なおかつ連鎖的な開環反などの条件を満たす分子が見いだされた。本年度は類似化合物の励起状態ダイナミクスを検討した結果、開環体の光励起状態から閉環体の光励起状態が形成する過程などの解析を進めた。これが蓄熱過程の物理化学的なメカニズム解明につながるものと考えられることから引き続き検討を行うこととした。また閉環体に酸化剤を導入した場合に連鎖的に開環反応が進行することが見いだされた。これに伴い温度が上昇し、熱エネルギーを放出可能で有ることが実証できた。この場合、導入した酸化剤の量は極めて小さく、発熱量の90%以上はフォトクロミック分子に貯蔵されている熱エネルギーであることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度には超高速分光などの研究に拡大し反応機構の詳細解明に取り組むとともに、熱を取り出す開環反応の高効率化の観点から、連鎖開環反応を検討し発熱を観測した。2021年度には発熱量の定量と計算結果との比較、さらに発熱量すなわち内部エンタルピー変化と分子構造や熱開環反応の活性化エネルギーとの相関に関して検討を進めることで構造物性相関を解明し高性能光エネルギー貯蔵分子の設計指針を明らかにする。
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