2020 Fiscal Year Annual Research Report
Fundamental studies on liquid crystal compound with larger dielectric permittivity than 10000
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18H03920
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
菊池 裕嗣 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (50186201)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥村 泰志 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (50448073)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 強誘電性液晶 / ネマチック相 / 誘電異方性 / 自発分極 / 液晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
1,3-ジオキサン骨格を有する液晶化合物 (C3DIO) がある温度範囲で発現するMP相と呼ぶネマチック相に類似した液晶相が比誘電率約10,000を示すこと、その配向ベクトル方向に反転対称性が破れた極性構造をもつことを報告した。しかしこの MP相は降温過程の過冷却状態でのみ発現し、熱力学的に安定な相ではない。ある種ののMP相は昇温過程でも発現するが、80 度以上の高温であり低温域への拡大が望まれる。2020年度の研究では4種類のCnDIOの組み合わせる全6通りの混合系において、共融現象に基づいたMP相の発現温度範囲の低温域へ拡大を行った。誘電率測定、偏光顕微鏡観察、DSC測定に基づき相図を作成した結果、ある創製においてMP相特有の砂状テクスチャを示し、それより低温および高温では結晶および他の液晶相に由来する異なるテクスチャが観測された。MP相と他相の境界では、DSC測定でも吸熱ピークが現れた。また、ある組成の混合系では各単体より低温でMP相を発現し、凝固点の降下が確認された。さらに、54試料中から比較的低温かつ広い温度範囲 でMP相を単相状態として発現する組成を発見した。この組成においてMP相を発現する温度範囲で約7,000の比誘電率を示し、POM観察ではPMMAによる面内配向セル中でMP相に特有の欠陥線を有する縞状テクスチャが確認され、MP相の安定相の発現に成功した。 また、DIOの構造を系統的に変化させた類縁体の物性評価を行い、化学構造と特異な誘電特性との関係を明らかにした。DIO類縁体であるDIO2, DIO3を新たに合成し物性評価を行った結果、MP相を発現にはジオキサン環に直結するフェニル基におけるフッ素置換基の位置、あるいは、それによって生じる双極子モーメントの向きが重要な因子であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に述べたように、2020年度は大きな目標であった、強誘電性を示す高極性相(MP相)の共融現象に基づく熱力学的安定化に成功し、この材料の可能性をさらに高めた。また、有機合成化学により新規DIO類縁体を合成し、分子構造と強誘電的物性の相関を調べた。その結果、分子論的メカニズム解明につながる重要な知見を得た。以上のように、研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、引き続き比誘電率および誘電異方性が異常に大きい液晶物質(DIO)の関連物質の合成をさらに進め、それらの誘電緩和、分極反転挙動、第二次高調波発生など を詳細に測定し、その電気的性質や分子配列構造の評価を行う。前年度に一定の成果を挙げた混合による共融現象を利用して高極性液晶相が室温付近で広温度域で安定に発現する手法をさらに展開し、異なる骨格基などのDIOとの混合系も検討する。基礎研究に加え、応用展開も開始する。また、シミュレーションによるメカニズム解明を進める。研究の遂行上問題は生じていない。
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[Presentation] 高誘電率を示す新規液晶相 ― 強誘電性ネマチック相? ―2020
Author(s)
菊池裕嗣, 西川浩矢, 城下和也, 遠藤聡太, 水城裕太, 祝迫宏記, 阿南静佳, 樋口博紀, 奥村泰志, 山本真一, 佐郷弘毅, 長谷場康宏
Organizer
日本液晶学会
Invited
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