2019 Fiscal Year Annual Research Report
Studies on molecular mechanism controlling food preference in Bombyx mori and the related silkmoths and the process of their evolution and domestication of their food
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18H03949
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
嶋田 透 学習院大学, 理学部, 教授 (20202111)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 晋治 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (40345179)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 食性 / カイコ / エリサン / 感覚神経 / 植物毒素 |
Outline of Annual Research Achievements |
カイコの食性について、今年度は引き続き順遺伝学的および逆遺伝学な手法で解析を行った。また、カイコの食餌植物であるクワの葉に含まれる糖類似アルカロイドへの耐性機構を明らかにするために、他昆虫との比較ゲノム解析から、スクラーゼ遺伝子の進化を再検討した。一方、エリサンの主な食餌植物はヒマ(Ricinus communis)である。しかし、エリサンの野生種であるSamia canningiや近縁種シンジュサン(Samia cynthia)は、シンジュ (Ailanthus altissima)などを主な寄主植物としている。これら野生種は、ヒマに寄生することはなく、ヒマ葉を与えても成長できずに死亡する。エリサンは、家畜化の過程で、シンジュからヒマへの食草転換を起こしたと推定される。そこで、エリサンのヒマ食性の獲得に関わる遺伝子機構を解明する目的で、比較トランスクリプトーム解析によって、ヒマ葉が含有するピリドンアルカロイドであるリシニン(ricinine)への耐性に関わる遺伝子を探索した。 ヒマを与えたエリサン幼虫の体組織にリシニンの蓄積が見られなかったので、リシニンの分解が消化管内で起こっていると推定した。リシニンの分解に関わる遺伝子を同定するため、ヒマ、シンジュ、人工飼料のそれぞれで飼育したエリサン5齢幼虫の中腸を、RNA-seqに供した。ヒマ育のエリサンにおいて高発現している転写物を探したところ、約10個の遺伝子が該当した。これらは、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、チトクロームP450、およびニトリラーゼをコードしている遺伝子の転写物であった。特に、ニトリラーゼをコードする転写物は、ヒマ葉育の幼虫の中腸において、人工飼料育やシンジュ葉育の幼虫の中腸よりも5倍-10倍ほど多く発現をしていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エリサンがヒマを食べて発育できるのに対して、シンジュサンがヒマでは発育できないことの原因が、リシニンであることが明確になった。また、RNA-seq解析により、エリサンにヒマを食べさせた場合には、シンジュや人工飼料を食べさせた場合に比べて、中腸の遺伝子発現が大きく変化することを明らかにした。特にグルタチオン-S-トランスフェラーゼやニトリラーゼのようにリシニンの解毒に関与している可能性がある酵素の遺伝子が、ヒマ育のエリサンで発現が顕著に増えていることが明らかになり、エリサンの耐性機構解明に、展望がでてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
カイコ幼虫の桑葉への適応については、引き続き消化酵素の特殊性の解明と、食性変異体の遺伝学的研究を継続する。エリサンのヒマ葉への適応については、中腸でヒマ育で特異的に発現上昇する遺伝子を特定することができたので、リシニンとの関係を明らかにする。
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Research Products
(2 results)