2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Watershed Management Models Integrating Land-and-sea Areas in the Scarce-data Watersheds of South-east Asian Developing Countries
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18H03968
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
平松 和昭 九州大学, 農学研究院, 教授 (10199094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原田 昌佳 九州大学, 農学研究院, 准教授 (80325000)
田畑 俊範 九州大学, 農学研究院, 助教 (80764985)
凌 祥之 九州大学, 農学研究院, 教授 (10399363)
谷口 智之 九州大学, 農学研究院, 助教 (00549123)
矢部 光保 九州大学, 農学研究院, 教授 (20356299)
尾崎 彰則 九州大学, 熱帯農学研究センター, 助教 (40535944)
齋 幸治 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 准教授 (30516117)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 統合流域管理 / 水理モデル / 水文モデル / 人工知能技術 / 機械学習技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
東南アジアの新興国・発展途上国では,経済発展に伴う都市化・混住化の進行で,農村地域や閉鎖性水域での有機汚濁が急速に拡がっている.日本が1970年代以降,経験してきた農村地域での有機汚濁を,新興国・発展途上国では,近年,より深刻な水環境の悪化を伴って急速に経験しつつある.高い農業生産性を維持しつつ,陸域から排出される窒素・リンの負荷を削減するとともに,閉鎖性水域の水環境保全を図ることが喫緊の課題となっている.流域圏における水質環境は,陸域上流から下流の閉鎖性内湾に至る流域圏の物質フロー系によって形成されるため,流域圏の水質保全のためには,陸域と海域を個別に考えるのでは無く,連続的に捉え,陸海域流域圏全体の水循環系と物質循環系を統合的に俯瞰する,いわゆる陸海域統合-流域圏水環境管理が極めて重要である. 本研究では,上記のコンセプトに基づき,窒素・リンを対象に,急速な経済発展に伴い都市化・混住化が進む東南アジアの農業流域圏における陸海域統合-流域圏管理モデルの構築を目指した.4グループの研究組織を構成し,先ず陸域を対象に,面源負荷グループとGIS流域解析グループは連携してGIS援用-流域負荷流出モデルの構築を進めるとともに,両グループの成果を負荷源入力として,閉鎖性湖沼グループと閉鎖性海域グループは水理学-生態系モデルの開発を進めた.本研究では「データの寡少性をいかに克服するか」がポイントとなる.そのため,流域圏データ寡少地域では,データ寡少性が故に定量化が容易でない素過程のモデル化に際しては,個々の素過程の物理・生物化学的特性に基づきつつ,できる限り簡便な定式化を目ざした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GIS流域解析グループでは,ベトナム南部のDau Tieng貯水池を対象に,貯水池操作規則の最適化手法の精度向上を進めた.農業,工業,上水,発電,環境維持に必要な用水の確保と洪水の発生防止を目指した.開発した長期流出解析モデルと最適管理手法により,地球温暖化と地域開発を想定したシナリオ分析を実施し,将来の影響評価を行った.コロンビア流域圏では,衛星リモートセンシングにより農業用ため池の抽出を行った.また,タイ流域圏とミャンマー流域圏においても必要な水文気象要素の連続観測を継続した.さらに,国内の精査流域での洪水予測のためのプロトタイプモデルの開発を目的に,筑後川支流の宝満川流域を対象に,DEMと現地観測した水位記録から平成30年7月豪雨における水田地域内の雨水貯留ポテンシャルについて検討した.閉鎖性海域グループでは,ベトナム南部に位置するCan Gio湾を対象に,地球温暖化に伴う海水面上昇や,現在ベトナム政府が検討を進めている堤防建設が同湾内の湛水環境や塩分環境に及ぼす影響を検討した.さらに,ベトナム北部に位置するRed River流域に設置されている洪水調整池・Van Coc湖の最適操作手法をシナリオ分析により明らかにした.閉鎖性湖沼グループでは,国内の二つの閉鎖性水域を対象に,気温・雨量の気象的要因が無酸素化に起因する水質動態に及ぼす影響と,窒素制限的な過栄養化水域での藍藻類の増殖特性を定量化し,水質汚濁問題の発生要因に関する知見を得た.面源負荷グループでは,バイオマス炭化物を用いて水質浄化方法を検討するとともに,ベトナム・ハノイ近郊の養豚農家270戸を対象に,企業的な契約養豚農家と小規模な非契約養豚農家を比較し,契約養豚農家の方が養豚排水の水質管理がより適切に行われており,ふん尿の固液分離やバイオガス化導入も進んでいる実態を明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き4グループの研究組織を構成し,先ず陸域を対象に,面源負荷グループとGIS流域解析グループは連携してGIS援用-流域負荷流出モデルの開発を,両グループの成果を負荷源入力として,閉鎖性湖沼グループと閉鎖性海域グループは水理学-生態系モデルの開発を目指す. GIS流域解析グループでは,ベトナム南部に位置するSaigon-Dong Nai川流域を対象に,貯水池群の最適管理手法の開発を試みる.流域内の多目的貯水池群の操作を最適化して必要用水の確保と洪水の発生防止を目指す.また,得られた結果を用いて,地球温暖化と地域開発を想定したシナリオ分析を実施する.また,タイ流域圏とミャンマー流域圏におけるデータ収集も継続する.国内の精査流域での洪水予測のためのプロトタイプモデルの開発を目的に,新たにUAV測量と高精細地形データを解析データに加え,宝満川流域内の水田地域が有する雨水貯留ポテンシャルを推定分析する.閉鎖性海域グループでは,ベトナム南部に位置するCan Gio湾を対象に,地球温暖化に伴う海水面上昇や,地域開発が同湾内の湛水環境や塩分環境に及ぼす影響を検討する.さらに,ベトナム北部に位置するRed River流域に設置されている洪水調整池・Van Coc湖の洪水調節機能をシナリオ分析により評価する.閉鎖性湖沼グループでは,水深が比較的深く長期的な無酸素条化が発生する国内の有機汚濁水域を対象に,嫌気的条件下での水環境動態に影響を及ぼす環境要因を定量的に評価する.面源負荷グループでは,ベトナム水質環境政策が養豚農家の排水処理行動に及ぼす影響を検討し,ベトナムにおける養豚経営の水利用改善の方向性を明らかにする. 以上の成果を統合し,水質保全対策に対するシナリオ分析を行い,水質総量規制を含む流域圏水環境改善に向けた最適ロードマップを提言する.
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Research Products
(43 results)