2019 Fiscal Year Annual Research Report
Involvement of histone variants in the reprogramming of gene expression before and after fertilization
Project/Area Number |
18H03970
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 不学 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (20175160)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 遺伝子発現のリプログラミング / ヒストン変異体 / 着床前初期胚 / クロマチン構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、受精前の卵および受精直後の1細胞期胚では著しく緩んだクロマチン構造をしており、そこから2細胞後期にかけてクロマチン構造が締まっていくことが明らかとなっている。そして、このようなクロマチン構造の変化が受精前後における遺伝子発現のリプログラミングに関与している可能性があることから、その変化を引き起こすメカニズムの解明を当該年度の研究目的とした。そして、その変化を引き起こす因子として、ヒストンH3変異体に着目した。すなわち、H3.1/3.2は所謂締まったクロマチン構造を形成し遺伝子発現に対して抑制的に機能することが報告されている。一方でH3.3はクロマチン構造を緩めることで遺伝子発現の活性化に関与することが知られている。 まず、免疫染色でH3.3の核局在を調べたところ、卵および1、2細胞期胚のいずれにおいても同程度の核局在量であることが確認された。また、H3.1/H3/2については、1細胞期から2細胞期にかけて核局在量が増加することが確かめられた。次に、H3.1/3.2のクロマチンへの取り込みがクロマチン構造に及ぼす影響を調べるために、RNAiによるH3.1/3.2の発現抑制を行いクロマチン構造の緩みの変化を解析した。その結果、コントロール胚では1から2細胞期にかけてクロマチンが締まるのに対し、発現抑制胚では緩んだ状態のままであった。さらに、1細胞期で一過的に発現するが2細胞期で発現が著しく低下する遺伝子をRT-PCRで解析したところ、H3.1/3.2の発現抑制胚では2細胞期における発現低下が十分に起こらなかった。従って、H3.1/3.2のクロマチンへの取り込みによるクロマチン構造の変化が、1細胞期から2細胞期にかけての遺伝子発現のリプログラミングに関与していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画は、研究実績の項で記したように、受精前後におけるヒストンH3変異体の局在変化がクロマチン構造、さらには遺伝子発現にどのように関与しているかを明らかにするものであった。ヒストンH3変異体はクロマチン構造の調節に重要な役割を担っていることが知られていることから、その変化と遺伝子発現の関連を明らかにすることはゲノムリプログラミングのメカニズムを解明するための重要な基礎情報となるものである。そして実験の結果、H3変異体の中でH3.1/3.2は卵および1細胞期胚で非常に低いレベルであり、その後2細胞にかけて増加することが明らかとなった。さらにこの増加がクロマチン構造の締まりに関係し、また遺伝子発現の変化にもかかわっていることを明らかにした。これらの結果は、H3変異体が1から2細胞期における遺伝子発現プログラムの調節に関わっている可能性を示すものであり、今後の解析により受精前後の遺伝子発現リプログラミングのメカニズムの解明が大きく進展することが期待される。 したがって、本研究プロジェクトは、ここまでの結果で十分な進展があったものと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
ヒストン変異体の核局在がクロマチン構造の変化を引き起こし、さらにそれが遺伝子発現の調節に関わっている可能性のあることが示された。当該年度ではヒストンH3に着目したが、コアヒストンを構成する他のヒストンであるH2AもH3同様にクロマチン構造及び遺伝子発現の調節に重要な役割を果たしていることが知られている。また、H3とH2A変異体の組み合わせが、実際のクロマチン構造の調節に関わっているという報告もある。さらに、当研究室の研究結果で、受精前後でH2A変異体の構成が著しく変化することが明らかとなっている。すなわち、受精後の1細胞期胚においては、H2A変異体はほぼH2A.Xだけが核局在していることが分かっている。さらに他の報告で、当研究室で解析しなかったTH2Aが1細胞期胚で多く局在していることが示されている。 そこで、本年度はヒストンH2Aに着目して、そのクロマチン構造および遺伝子発現への関与を明らかにしていく。そのために、H2A.XおよびTH2Aのノックアウトマウスを用いた解析を計画し、現在それらの作成が完了し解析をスタートさせたところである。
|
Research Products
(7 results)
-
-
-
-
-
-
-
[Book] 繁殖生物学2020
Author(s)
青木不学 他26名
Total Pages
351
Publisher
株式会社インターズー
ISBN
978-4-86671-110-2