2020 Fiscal Year Annual Research Report
Approaches to standardization of humanized mice by transplanting human hematopoietic stem cells (HSC) and thymus generated from induced pluripotent stem (iPS) cells.
Project/Area Number |
18H03975
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Research Institution | Central Institute for Experimental Animals |
Principal Investigator |
伊藤 守 公益財団法人実験動物中央研究所, 役員, 所長 (00176364)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 亮治 公益財団法人実験動物中央研究所, 実験動物研究部, 室長 (60425436)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 造血幹細胞 / 胸腺 / ヒト化マウス / 免疫不全マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトiPS細胞よりヒト造血幹細胞およびヒト胸腺を分化・増殖させ、これらを重度免疫不全マウスに接種することにより、マウスの中でヒト免疫細胞が機能するヒト免疫系マウスを作製するのが本研究の目的である。初年度、2年度と同様、様々なヒト造血幹細胞およびヒト胸腺の分化条件の検討を行い、免疫不全マウスへの移植を行った。微量の造血幹細胞移植に適した免疫不全マウスとして、c-kitの変異を入れたNOG-W41マウスの開発を行った。造血幹細胞分化に関しては、既報のSugimuraらの方法(Sugimura R et al. Nature, 2017)に加え、Ohtaらの方法(Ohta, M. et al. J. Vis. Exp, 2019)を用いて分化誘導を行った。方法としては、StemFitを培地として胚様体を作製し、それを段階的にEssential 8、Essential 6、StemPro 34培地に移動させながら、様々な分化因子と共に培養した。また、造血幹細胞はCD34+/CD45+細胞をenrichする必要があると判断し、最終分化にOP1/DL1細胞との共培養によるCD34/ CD45+細胞の比率を算定したところ、陽性率は80%の高率になることが確認できた。しかし、それら細胞 1 x 10^6 cellsのNOG、新規NOG-W41マウスへの骨髄または静脈内投与によっても、末梢血および脾臓等リンパ臓器にヒト造血細胞は検出できていない。 胸腺上皮細胞への分化に関しては、より分化度が高いと考えられるSuらの方法(Su, M. et al, Sci Rep, 2019)らの方法に変更して実施した。胸腺上皮前駆細胞 (TEPC) に発現するEpCAM、Kelatin 5/ 8の発現が確認できており、効率の良いpheroid作製条件も検討できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年に継続して、ヒトiPS細胞の分化誘導を様々な条件で検討した。iPS細胞から造血幹細胞への分化誘導では、未分化状態のiPS細胞からCD34+/CD45+の造血幹細胞様の細胞が高率に得られるようになった。この効率化に向けて、EZSPHERE(Iwaki)でのEB作製法、未分化維持培地の種類によるCD34+/CD45+細胞の出現率の検討、Matrigel、FibronectinやiMatrixなどのコーテイング剤の検討、造血幹細胞維持においてHSCの分化に関連するニコチンアミドの検討、造血幹細胞の増殖、ES細胞から血球系、リンパ球系への細胞分化を支持すると考えられるOP9/DLI細胞との共培養、iPS細胞種(253G1、201B7)による分化度の相違など様々な検討を行った。免疫不全マウスの開発では、異種細胞の生着性向上を目指し、c-kit変異遺伝子をゲノム編集にて導入したNOG-c-kitV831M (W41)マウスまたはNOG-c-kitV831C (Wc)マウスの2系統を開発した。また、NOGマウスをヒト化させるためには通常50,000個程度のヒト造血幹細胞が必要であるが、5,000個の移入でもおよそ50%程度のヒト細胞生着を認めた。これは従来のNOGマウスに比べて10倍程度生着性が高いものであった。上記の検討から現時点でより高率に得られるプロトコートで作製したCD34+/CD45+細胞のこれらマウスへの骨髄内、静脈内移植によっても、未だマウス末梢血や脾臓などでヒト造血細胞は検出できていない。 昨年度検討した分化胸腺上皮前駆細胞では細胞単独でのSpheriod形成が難しかった。本来はヒト胎児線維芽細胞を用いるのが正しいと思うが、入手が難しいため、新生児由来ヒト皮膚線維芽細胞との共培養でSpheroidの作製を行い、良好な結果を得た。腎皮膜下への移植は現在検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
造血幹細胞様細胞への分化は一定の結果が得られているが、実際に免疫不全マウスへの移植による造血細胞が未だ検出できていない。今後どのように展開するかであるが、今年度行った移植時の分化細胞と実際に移植実験に用いている市販ヒト造血幹細胞の表面マーカーの発現をFACSで検討した。その結果、ヒト造血幹細胞で陽性となるCD34、CD45、CD43、CD59、CD117については陽性であった。しかし、未分化マーカーであるCD117(c-kit)に関しては造血幹細胞の発現強度に比べ、分化細胞では陽性であるものの発現は極めて低いものであった。このCD117の発現強度を1つの目安として、更に分化方法を検討する。必要であれば、CD117をLentivirusなどで強制発現させる方法も検討する。いずれにしても、造血幹細胞の形態と遺伝子発現を指標にして、分化細胞を造血幹細胞に近づける方法論で実施する。 胸腺上皮細胞(TEC)への分化と胸腺形成に関しては、iPS細胞から分化させた胸腺上皮前駆細胞 (TEPC)とヒト新生児線維芽細胞との共培養で得られたSpheriodを免疫不全マウスの腎被膜下または皮下に移植し、胸腺形成が可能か否かを検討する。また、胸腺上皮細胞の分化に必須であることから、必要であればLentivirusなどで強制発現も試みる。iPS細胞より分化させた造血幹細胞様細胞(できれば、proT細胞)との混合移植も試みる。 以上の試みを行い、本年度中にiPS細胞によるヒト化マウス作製の標準化までは難しいが、作製の目処を立てたいと考えている。
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