2020 Fiscal Year Annual Research Report
Metabolic pathways creating and maintaining ceramide diversity, and molecular mechanism of the pathology due to their impairment
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18H03976
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木原 章雄 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (50333620)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脂質 / セラミド / スフィンゴ脂質 / アルファ酸化 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
フィトセラミドのアルファ酸化経路で働く脂肪酸ジオキシゲナーゼMPO1の生理機能として,炭素飢餓時の生育に重要であることを明らかにした。哺乳類のアルファ酸化に働く2-ヒドロキシアシルCoAリアーゼHacl2のKOマウスの広範な組織での脂肪酸組成解析を行った結果,2-水酸化脂肪酸量が小腸や顎下腺などの一部の組織で増加していた。一方,組織学的解析あるいは血液を用いた生化学的検査で異常は観察されなかった。 FADS3の基質特異性の解析から,FADS3はセラミドだけでなく,ジヒドロセラミド,フィトセラミドに対しても活性を示すものの,セラミドに対する活性が最も高いことが示された。また,スフィンガジエン型セラミドはセラミドよりもスフィンゴミエリンやヘキソシルセラミドへ代謝されづらいことが明らかとなった。Fads3 KOマウスに関しては計画通り,作成に成功した。 多様なセラミドを分離・定量できる質量分析法(LC-MS/MS)を確立した。この解析系を用いて,様々な組織における分岐鎖セラミド量を測定した結果,マイボーム腺,表皮,肝臓に比較的多く存在することが明らかとなった。また,口腔の超長鎖セラミド/アシルセラミドの生理機能の解明では,これらの産生ができないマウスは刺激物添加実験に対して強い忌避行動を示した。このことから,これらセラミド種が口腔における透過性バリア形成に関与していることが示唆された。 S1Pの多くは細胞膜上のリン酸化脂質ホスファターゼによって脱リン酸化された後に取り込まれてセラミドなどに代謝されるが,一部はS1Pのまま取り込まれることが明らかとなった。また,この取り込みはS1P排出トランスポーターとして知られるSPNS2またはMFSD2Bを過剰発現すると増加したことから,これらがチャネル型トランスポーターとして細胞膜を介した両方向のS1P輸送に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した内容は全て予定通り行った。MPO1,Hacl2は共にフィトセラミドのアルファ酸化経路において働く因子として我々が同定した遺伝子である。MPO1の解析に関しては本年度解明した生理機能の内容を含めてJ. Lipid Res.において公表した。本研究課題において,MPO1の酵素学的性質から生理機能までほぼ全てを解明することに成功した。Hacl2に関してはそのKOマウスの解析が順調に進行している。 スフィンガジエンは哺乳類長鎖塩基の中で唯一シス二重結合を持つユニークな長鎖塩基である。我々はこの二重結合を導入する不飽和化酵素としてFads3を同定して,昨年度報告した。今年度は,Fads3の詳細な基質特異性とスフィンガジエン型セラミドの代謝について知見を得た。また,スフィンガジエンの生理機能を解明するためにFads3 KOマウスを計画通り作成した。 セラミドの分離・定量に関しては当初の予定よりもさらに精度の高い分析法の確立に成功し,J. Lipid Res.において公表した。この方法により,従来知られていなかった分岐鎖セラミドの存在を見出し,Biochim. Biophys. Acta Mol. Cell Biol. Lipidsに公表した。これまでアシルセラミドは皮膚バリアに重要なことが知られていたが,口腔においてもバリア機能を持つことが本年度の研究によって示唆された。 細胞外のS1Pの新たな取り込み機構について解明することに成功した。血漿中のS1Pは免疫,血管形成に極めて重要であり,本研究は血漿S1P濃度の調節機構の解明に寄与した。また,この研究項目に関して,当初の計画よりも進行し,トランスポーターのSPNS2とMFSD2Bの関与が明らかとなった。 以上のことから,当初の計画以上に進展しているという判断に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
Hacl2 KOマウスの脳以外の組織における脂質解析について,セラミド,スフィンゴミエリン,ヘキソセラミドにまで対象を拡大する。Hacl2 KOマウスにおいて,アルファ酸化が完全に遮断されないのはHacl2のホモログであるHacl1との重複性に起因すると考えられる。そこで,Hacl1とHacl2の機能の重複性の程度あるいはそれぞれの特異的な基質を解明するために,Hacl1 KO,Hacl2 KO,Hacl1 Hacl2二重KO(DKO)細胞を用いて,長鎖2-OH脂肪酸(フィトセラミドのフィトスフィンゴシン部分の代謝物),極長鎖2-OH脂肪酸(アルファ水酸化セラミドの脂肪酸部分の代謝物),Hacl1の関与が知られている分岐脂肪酸(フィタン酸)の代謝を調べる。 本年度作成したFads3 KOマウスの解析を行い,Fads3遺伝子欠損によるセラミド組成変化への影響,生理機能の解明を行う。特にスフィンガジエンが多く存在する腎臓や脳を中心に脂質解析,表現型解析を行う。 S1Pの直接取り込みに関しては,血漿に接して活発にS1Pの取り込みを行っていると予測される血管内皮細胞や赤血球(様細胞)が実際にS1Pを直接取り込んでいるのかを明らかにする。また,SPNS2またはMFSD2BのKO細胞を作成し,S1Pの取り込みに与える影響を調べる。 セラミド代謝経路に働くアルデヒドデヒドロゲナーゼ(Aldh3a2とAldh3b2)の解析を行う。Aldh3a2 Aldh3b2 DKO マウスにおけるアシルセラミド量減少の原因について明らかにする。また,ALDH3A2 を欠損したヒト不死化ケラチノサイトを CRISPR/Cas9 システムによって作成し,セラミド代謝に与える影響を解明する。
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Research Products
(19 results)