2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of molecular mechanism of translational control by RNA-protein complexes in living cells
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18H03981
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
船津 高志 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (00190124)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 1分子計測(SMD) / ナノバイオ / 光ピンセット / 温度生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNA に蓄えられた遺伝情報は一時的にmRNA にコピーされ、リボソームによってタンパク質に翻訳される。翻訳の制御は、生命活動の根幹に関わる重要なプロセスである。本研究では、新たな遺伝子発現制御機構として注目されている以下の3つの翻訳発現制御について、翻訳制御の分子機構を明らかにする。本年度の研究成果は以下の通りである。 1.miRNA による遺伝子発現制御 蛍光標識miRNAが機能を保っているか調べた。標的 mRNA 発現プラスミドを導入し、導入 miRNA 前駆体が標的 mRNA の翻訳を抑制していることを確認した。 2.翻訳アレストによる遺伝子発現制御 新生SecM鎖のリボソーム外領域による翻訳アレストの安定化にD79, Y80, W81, H84, R87, I90, R91, F95が寄与していることが分かった。また、Y80, W81およびF95にBpaを導入し、光架橋反応を利用して接触している分子を調べた。その結果、架橋相手はリボソームタンパク質uL23であると同定された。また、SecMに加わる力と、翻訳アレストが解除されるまでの時間の関係を測定する実験系の構築を行った。 3.ストレス顆粒による遺伝子発現制御 SGを誘起するストレスを負荷する前後において蛍光寿命測定を行った。その結果、どちらのストレス時も細胞内平均温度が1.4℃上昇した。これにより、SG形成時に細胞内温度が上昇することが分かった。また、細胞内に高濃度の温度感受性ポリマーを注入するとSG形成が阻害された。SGの形成にはコア構造の形成と成長の二段階があることが知られているが、高濃度の温度感受性ポリマーがSGコア構造の形成段階だけを阻害することを確認した。以上の結果より、細胞内温度上昇が緩和されるとSG形成の初期段階が阻害されると分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.miRNA による遺伝子発現制御 蛍光標識したmiRNA前駆体を合成し、細胞内に直接導入することで内在性の生合成過程を通して成熟させた。これにより、細胞内miRNA可視化法を確立できた。また、蛍光標識したmiRNAが機能を有していることを標的mRNAの発現抑止により確認できた。 2.翻訳アレストによる遺伝子発現制御 新生SecM鎖のリボソーム外領域による翻訳アレストの安定化にD79, Y80, W81, H84, R87, I90, R91, F95が寄与していることが分かった。また、Y80, W81およびF95にBpaを導入し、光架橋反応を利用して接触している分子を調べた。その結果、架橋相手はリボソームタンパク質uL23であると同定された。 3.ストレス顆粒による遺伝子発現制御 細胞内に高濃度の温度感受性ポリマーを注入するとSG形成が阻害された。SGの形成にはコア構造の形成と成長の二段階があることが知られているが、高濃度の温度感受性ポリマーがSGコア構造の形成段階だけを阻害することを確認した。以上の結果より、細胞内温度上昇が緩和されるとSG形成の初期段階が阻害されると分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.miRNA による遺伝子発現制御 蛍光相関分光法と蛍光相互相関分光法を用いて 導入した miRNA の拡散を定量することにより、細胞内での miRNAの状態を明らかにする。 2.翻訳アレストによる遺伝子発現制御 磁気ピンセットによるSecM 翻訳アレスト複合体への張力負荷と翻訳再開を実証する。ジゴキシゲニンを付加したssDNA を結合させた長鎖のmRNA を鋳型として、N 末端にHaloTag を融合したSecM(HaloTag-SecM)をHaloTag PEG BiotinLigand 存在下でin vitro 合成する。翻訳アレスト複合体に抗ジゴキシゲニン抗体・ストレプトアビジンを介して2 つのマイクロビーズを結合させ、磁気ピンセットを利用して新生SecM 鎖に負荷を加える。翻訳アレストが解除されて翻訳が再開されることを、マイクロビーズの動きをナノメートル計測することにより証明する。 3.ストレス顆粒による遺伝子発現制御 SG の形成機構の解明と超微細構造の観察を行う。培養細胞のmRNA を、2’-O-methyl 化オリゴRNA を用いて蛍光標識し、SGの構成タンパク質であるG3BO、TIA1 、GTPBP2などを別の蛍光色素で2重染色する。培養細胞に0.5 mM sodium arsenite による酸化ストレスを負荷し、2種類の蛍光色素の分布を超解像顕微鏡観察し、SG の形成機構とストレスの解除に伴うSG の崩壊過程を明らかにする。さらに、mRNAの運動を1分子レベルで解析し、SGの内部微細構造とmRNAの運動性の関係を明らかにする。
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