2019 Fiscal Year Annual Research Report
植物の浸透圧ストレスに対する感知システムと初期応答の分子機構の解明
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18H03996
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
篠崎 和子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (30221295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝井 順哉 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20469753)
城所 聡 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (70588368)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | シロイヌナズナ / 浸透圧ストレス応答 / シグナル伝達機構 / ストレス感知システム / SnRK2キナーゼ / RAFキナーゼ / オスモセンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) SnRK2の活性化を担うRAFキナーゼの同定 2019年度はサブクラスI SnRK2をリン酸化して活性化する候補として同定された3つのB4 RAFキナーゼの変異体を用いて、多重変異体を作製した。得られた変異体を用いて、サブクラスI SnRK2のリン酸化活性を測定し、これらの3つのB4 RAFキナーゼが浸透圧ストレス時にサブクラスI SnRK2を特異的に活性化することを示した。また、これらのB4 RAFキナーゼは、ABA応答において中心的な役割を果たすサブクラスIII SnRK2は標的とせず、その活性化を起こさないことも明らかにした。さらに、トランスクリプトーム解析法により、これらのB4 RAFキナーゼの多重変異体とサブクラスI SnRK2の多重変異体において発現が変化した遺伝子を網羅的に解析して比較した。その結果、発現が増加した遺伝子及び発現が減少した遺伝子が、2種の変異体で一致していた。さらにこれら2種の変異体の生育を観察すると、どちらの変異体も乾燥ストレス時特異的に生育が遅れたことから、これらは同じシグナル伝達系で機能していることが示された。得られた結果をまとめて、論文を作成して投稿した結果、Nature Communications誌に掲載された。
(2) オスモセンサー候補遺伝子の機能解析 これまでに収集しているオスモセンサー候補遺伝子の欠損変異体を用いて多重変異体の作製を進めた。オスモセンサー候補遺伝子である二成分系ヒスチジンキナーゼの欠損変異体を用いてSnRK2活性を測定し活性の減少を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度までにLC-MS/MS解析法を用いて同定したサブクラスI SnRK2をリン酸化して活性化する3つのタンパク質キナーゼ候補遺伝子に関し多重変異体を作製し、これを用いて解析することでこれらのB4 RAFキナーゼが浸透圧ストレス時にサブクラスI SnRK2を特異的に活性化することを明らかにした。また、これらのB4 RAFキナーゼの多重変異体とサブクラスI SnRK2の多重変異体は、共にストレス時特異的に生育が阻害されること、またトランスクリプトーム解析法により、2種の多重変異体において発現が上昇した遺伝子や減少した遺伝子の多くが一致していたことから、同定したB4 RAFキナーゼはサブクラスI SnRK2の上流因子であることが解明された。得られた結果を論文として投稿しNature Communications誌に発表した点は当初の計画以上の進展であった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに同定された3つのB4 RAFキナーゼに相同性を持つRAFキナーゼ遺伝子の変異体を収集し、多重変異体の作製を行っている。また、新たなLC-MS/MS解析も行いサブクラスIII SnRK2をリン酸化する活性を持つRAFキナーゼも同定した。次年度はこれらのRAFキナーゼ遺伝子の組織特異的発現やタンパク質の局在を解析すると共に、得られた多重変異体を用いて表現型やSnRK2を基質としたリン酸化活性を測定する。また、トランスクリプトーム解析を行い、これらのRAFキナーゼの浸透圧ストレス応答における役割を明らかにする。一方、オスモセンサーの候補遺伝子の変異体の作製も続けており、得られた多重変異体を用いて、植物体の形態を観察するとともに、変異体中のサブクラスI及びIII SnRK2のリン酸化活性を解析する。また、トランスクリプトーム解析により、ストレス誘導性遺伝子発現の変化を明らかにする。
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