2020 Fiscal Year Annual Research Report
細胞間情報を担う糖鎖AMORの発見に基づく植物糖鎖シグナリングの解明
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18H03997
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東山 哲也 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (00313205)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 糖鎖 / 植物 / 細胞間シグナリング / 受容体 / 有機化学合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
AMOR活性を担う2糖構造は、トレニアの雌しべに限らず、広く様々な植物、そして様々な器官のAG糖鎖に見られる末端構造である。しかし、雌しべの中でもその分布は一様ではないように(Mizukami et al., Curr. Biol. 2016)、特定の発生ステージや、植物体の特定の位置で、様々な細胞間コミュニケーションを担っている可能性がある。糖鎖構造の分布は、糖鎖の生合成系の酵素の組織特異的な発現が担っていると考えられる。そこで本年度は、以下の2つのアプローチから、植物糖鎖シグナリングの解明を目指した。
<研究計画1:AMORの可視化>これまでに有機化学合成により調製したAMOR抗原を用いて、モノクローナル抗体の樹立を進めた。その結果、AMOR活性に重要な末端のメチル基があるAMOR糖鎖構造を認識し、メチル基のない糖鎖構造は認識しない抗体を算出する6種のハイブリドーマを得ることに成功した。植物糖鎖を用いて調べた反応性も良好であり、今年度、免疫蛍光染色による、トレニア雌しべ内でのAMORの分布の可視化を目指した。汎用性の高いパラフィン切片による染色を目指した。その結果、裸出する胚嚢に近い珠皮の部分などに、シグナルが見られた。複数のモノクローナル抗体の比較や、染色条件の最適化を進めている。また、トレニアに近縁なウリクサを用いて、ウリクサの花粉管でも合成AMORにより花粉管が受精能を獲得することを見出した。
<研究計画2:AMORの受容メカニズムの解析> AMORが発見されたトレニアの系を用いて、花粉管におけるAMORの受容メカニズムを探る。有機化学合成により枝分かれ構造を導入した多量体AMORについて、分子数あたりの活性は向上することを示す定量的なデータをまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物糖鎖、特にアラビノガラクタン糖鎖に対するモノクローナル抗体は世界中で多数作製されているが、これまでAMOR糖鎖構造を特異的に認識するものは存在しなかった。その有力な候補となるモノクローナル抗体の樹立に成功し、本年度、免疫染色によりその有用性が示唆されたことは、重要な進展である。さらに抗体の種類、染色法を最適化し、トレニアおよびシロイヌナズナにおける組織内でのAMOR糖鎖構造を可視化できれば、植物糖鎖生物学における重要な成果となる。
またこれまでに、トレニアデータベースから 見出したレクチンドメイン(糖鎖結合ドメイン)をもつ受容体キナーゼをAMOR受容体の候補と考え、ノックアウトラインを得た。ノックアウトラインにおいて、近交弱性や培養変異の影響が考えられる稔性の低下が見られたため、野生型と交配して系統の整備を進めるなどやや難航はしているが、重要な研究であり、着実に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
トレニアおよびシロイヌナズナにおけるAMORの可視化について、引き続き解析を進める。これによりAMORを可視化するための、汎用性の高い、重要なプロトコールを確立する。抗体の販売による技術の普及も視野に進める。また、シロイヌナズナにおいては、AMOR構造が減少していると期待される変異体を用いた解析も進める。AMORの受容メカニズムについても、引き続き合成AMORとトレニアノックアウトラインを用いた解析を進める。
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