2018 Fiscal Year Annual Research Report
上皮バリアの構築と機能を制御するタイトジャンクション・アピカル複合体の解析
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18H03999
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
月田 早智子 大阪大学, 生命機能研究科, 特任教授 (00188517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勝野 達也 京都大学, 医学研究科, 研究員 (90527665)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | タイトジャンクション / アピカル骨格 / TJ-アピカル複合体 / クローディン / TJMAPs / アピカル面バリア / 細胞間バリア / 上皮バリア |
Outline of Annual Research Achievements |
生体は、腸・肺・脳という大きな区画から、毛細血管というような小区画まで、大小様々な区画に分かれる。各区画が上皮細胞シートで覆われ、恒常性が保たれることは、生体機能発現には必要不可欠である。上皮細胞は、タイトジャンクション (TJ) を介して側面で密着し、上皮細胞シートを形成する。上皮細胞シートには、TJの細胞間バリアと上皮細胞アピカル膜のアピカル面バリアが存在する。両者は連携し、上皮バリアとして、生体の各区画を形作り、自由な物質移動を制限し、必要物質を選択的に透過させるが、その連携機序は不詳である。私共は最近、先進的イメージング技術によりアピカル膜に沿った細胞骨格を発見した。本アピカル骨格とTJの構造的・機能的なリンクやそれを司る因子を複数見出した。それらの解析から、アピカル骨格とTJは「TJ-アピカル複合体」というシステムとして機能し、細胞間・アピカル面バリアを統合すると考えられた。さらに、TJ-アピカル複合体は、細胞内外の状況を反映して、細胞シグナル経路のインターフェースとなり、上皮バリア動態を制御するという予備知見も得ている。従来、細胞間・アピカル面バリアは別個に解析されてきたが、本研究では、TJ-アピカルを軸とした上皮バリアの統合的解析・理解を目指し、上皮バリアによる生体機能の新規構築原理を開拓する。上皮バリア研究の切り口として、私共が提唱しているTJ-アピカル複合体は新しく、類似研究はない。 本年度の本研究では、特にTJMAP-2による上皮細胞アピカル面構築の機能解析を進め、既知の機序とは異なるアピカル面の構築機序を見出し、論文化への解析を進めた。成果については、2019年度より採択された特別推進研究へ引き継ぎ、並行して解析中の他のTJMAPsとともに、TJ-アピカル複合体の構造と機能の理解に繋げる。確立してきた高解像イメージングもさらに発展させる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 「TJ-アピカル複合体」の分子構造レベルでの解析として、分子構造レベルでの精度の高い解析が必須である。ここでは、構造解析を専門とする研究分担者と極低温における電子顕微鏡解析を用いて、「TJ-アピカル複合体」の複合体の状態での分子構造を、詳細に明らかにすることを目指して解析を進めた。初めに、「TJ-アピカル複合体」を生化学的に分画として精製する方法について工夫し、最適なsucrose密度勾配分画方法の検討や、イオン濃度、界面活性剤の有無・濃度の検討、遠心速度の検討など、構造解析に適したサンプル調製法の検討・試行を行った。 条件検討の結果については、電顕を用いて確認した。本件については、精製度の問題が完全に解決できず、FIB-SEMを用いた「TJ-アピカル複合体」解析も進めた。 2. 細胞レベルでの「TJ-アピカル複合体」の機能解析では、これまでにアピカル微小管の結合蛋白質として「TJ-アピカル複合体」に存在する、少なくとも4種類の分子(TJMAPs:TJ Microtubule-associated Proteins と命名)と「TJ-アピカル複合体」との相互作用様式や、細胞シグナル情報伝達における役割を明らかにするために、CRISPR-CAS9システムを用いた遺伝子欠損細胞等の作製・解析を進めた。 TJ-MAP3については、AMPKによるリン酸化がアクチンや微小管といった細胞骨格への結合能を反転させることを見出し論文化した。3. 細胞-組織レベルでの「TJ-アピカル複合体」の機能解析: PCP(平面内細胞極性:Planar Cell Polarity)を示す気管上皮初代培養細胞系で、TJMAPsの分布とPCPの関連について解析を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
基盤研究Aの内容については、特別推進研究へ引き継がれる(主に以下の4項目)。以下の細胞での解析に加え、遺伝子改変マウスを用いた解析も進める。1:「TJ-アピカル複合体」については、が細胞内シグナルが密集したシグナルネクサスと捉える。2:TJ-アピカル複合体」の分子レベルで詳細な解析に高分解能の凍結電子顕微鏡解析を適用するという挑戦性の高い課題を含む。3:「TJ-アピカル複合体」の細胞レベルでの研究と組織・個体レベルでの研究を橋渡しするというポジショニングに気管上皮細胞の初代培養系を置く。4:これまでのマウス解析について、「TJ-アピカル複合体」から視た、新しい視点を開く。一例として、肝&脳連関である。CldnのKOマウスで見られるこれらの症状は、アピカルバリアに重要なERMのメンバーであるradixinKOでも見られる。共通の事項を解析することは、そのメカニズムの解明と対策につなる。TJMAPsKOマウスの解析も視野に入れて、今後の個体レベルの解析を進める。
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[Journal Article] Vinculin is critical for the robustness of the epithelial cell sheet paracellular barrier for ions.2019
Author(s)
Konishi S, Yano T, Tanaka H, Mizuno T, Kanoh H, Tsukita K, Namba T, Tamura A, Yonemura S, Gotoh S, Matsumoto H, Hirai T, Tsukita S.
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Journal Title
Life Sci Alliance.
Volume: 2
Pages: e201900414-
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Interleukin 22 Expands Transit-Amplifying Cells While Depleting Lgr5(+) Stem Cells via Inhibition of Wnt and Notch Signaling.2019
Author(s)
Zha JM, Li HS, Lin Q, Kuo WT, Jiang ZH, Tsai PY, Ding N, Wu J, Xu SF, Wang YT, Pan J, Zhou XM, Chen K, Tao M, Odenwald MA, Tamura A, Tsukita S, Turner JR, He WQ. Interleukin 22 Expands Transit-Amplifying Cells While Depleting Lgr5(+) Stem Cells via Inhibition of Wnt and Notch Signaling.
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Journal Title
Cell Mol Gastroenterol Hepatol.
Volume: 7
Pages: 255-274
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Claudin-3 regulates bile canalicular paracellular barrier and cholesterol gallstone core formation in mice.2019
Author(s)
Tanaka H, Imasato M, Yamazaki Y, Matsumoto K, Kunimoto K, Delpierre J, Meyer K, Zerial M, Kitamura N, Watanabe M, Tamura A, Tsukita S.
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Journal Title
J Hepatol.
Volume: 69
Pages: 1308-1316
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Role of planar cell polarity-dependent distribution of apical microtubules in the coordinated ciliary beating of tracheal multiciliated cells.2018
Author(s)
Shogo Nakayama, Elisa Herawati, Maki Takagishi, Takayuki Torisawa, Toshinori Namba, Tomoki Yano, Atsushi Tamura, Shuji Ishihara, Kazuhiro Oiwa, Masahide Takahashi, Sachiko Tsukita
Organizer
ASCB 2018 Annual Meeting
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[Presentation] Establishment of a PCP-dependent apical microtubule network in tracheal MCCs2018
Author(s)
Shogo Nakayama, Elisa Herawati, Maki Takagishi, Tomoki Nishida, Kanako Inoue, Takayuki Torisawa, Toshinori Namba, Shuji Ishihara, Hiroo Tanaka, Tomoki Yano, Atsushi Tamura, Kazuhiro Oiwa, Masahide Takahashi, SachikoTsukita
Organizer
Joint Annual Meeting Of JSDB 51st and JSCB 70th(第70回日本細胞生物学会・第53回日本発生生物学会合同大会)
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