2018 Fiscal Year Annual Research Report
Integration analysis between RNA editing and circadian clock system for elucidation of interindividual variation of drug pharmacokinetics
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18H04019
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小柳 悟 九州大学, 薬学研究院, 教授 (60330932)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 概日リズム / RNA編集 / 薬物代謝酵素 / トランスポーター / 個体間変動 / 個体内変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬物の体内動態制御に関わるトランスポーターやチトクロームP450(CYPs)などの活性には大きな個人差が認められ、個々の患者に適した薬物治療を実践するうえで妨げのひとつになっている。我々はこれまでに、体内時計を構成する時計遺伝子がトランスポーターやCYPsの「発現量」に24時間周期の概日リズムを引き起こし、個々のリズムの違いが薬物動態の個人差につながることを明らかにしてきた。一方、DNAから転写されたRNAの配列はアデノシンデアミナーゼ(ADAR)の作用によって塩基配列の一部がアデノシンからイノシンに変換され、翻訳されるタンパク質のアミノ酸配列の一部が変化することがある。近年の報告で、本酵素によるRNAの編集効率が時刻によって変動することが明らかにされたが、トランスポーターやCYPsの機能に及ぼすRNA編集リズムの影響についての報告は皆無である。 そこで、本年度は培養ヒト肝細胞およびヒト腎臓の近位尿細管細胞を対象に概日リズムを再構築系させ、薬物動態制御分子の発現量とRNA編集の概日変動メカニズムの解析を行った。培養ヒト肝細胞およびヒト腎近位尿細管細胞に高濃度の血清処理を施すことで、時計遺伝子とADARの発現に約24時間周期のリズムを引き越すことに成功した。また、ADARの発現が高値を示す時間帯と低値を示す時間帯においてRNAを精製し、次世代シーケンサーによる解析を行った。その結果、ADARの発現リズムによって複数の遺伝子産物のRNA上に編集箇所が認められ、それら編集率には時刻依存的な変動が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画とおり、培養ヒト肝細胞および腎近位尿細管細胞を対象に概日リズムを再構築する実験系を確立し、その系内で実際にRNAの編集に時刻依存的な変動が生じていることを明らかにすることができた。また、同実験系において代表的な薬物代謝酵素の活性やトランスポーターの機能にも時刻による変動が引き起こされていることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの検討において、培養細胞内でRNA編集の概日リズムと薬物代謝酵素活性・トランスポーター機能の時刻依存的な変動が再構築できることを明らかにした。本年度はこれら薬物動態制御因子の時刻依存的な変動がRNA編集に基づくものなのかを明らかにするため、同培養細胞を対象にしたRNAシーケンスの解析事例を増やし、より詳細な検討を進める。また、培養条件の違いが、複数の薬物動態制御因子の発現レベルに影響を及ぼす可能性も見出したため、安定した発現レベルが維持できる培養条件についても引き続き検討を行っていく予定である。
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