2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H04036
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 啓一郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (70433654)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ゲノム編集 / 脳ゲノム / HITI |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞内の遺伝子変異により引き起こされる数多くの遺伝性神経疾患に対して、現在では有効な治療法は存在していない。申請者は最新の研究成果として、生きたマウス・ラットの脳・筋肉など成体の大部分を構成する非分裂細胞にてゲノム標的配列に自由に外来遺伝子を挿入する世界初の革新的なゲノム編集技術「HITI」の開発に成功し、実際に遺伝性疾患である網膜色素変性症のモデルラットの視覚機能障害の治療効果が得られた (Suzuki et al, Nature 2016)。しかしながら、当該技術では、標的ゲノム部位に外来DNAを挿入することはできるが、ゲノム上の病因変異を取り除くことができず、標的疾患が限定的であることが大きな問題である。本研究では非分裂神経細胞におけるゲノム編集技術の原理を解明することで、様々な疾患変異を任意の配列に置換できる、より自由度の高い新規の脳ゲノム編集技術を開発し、難治性神経疾患患者に対して有効なゲノム編集治療法の確立を目指している。 2018年度は、培養神経細胞のゲノム編集機構を明らかにし、この知見を基に新規脳ゲノム編集技術の開発を目指した。具体的には非分裂細胞であるマウス胎児脳由来の神経細胞を培養し、神経細胞特異的に発現するTubb3遺伝子の下流にGFP遺伝子のノックインを試みた。その結果、非分裂細胞でゲノム中の相同部位に対してドナーDNAの片側のみ相同配列 (one arm) を持たせ、ゲノム標的部位とドナーDNAを細胞内で同時に切断することで、外来遺伝子が標的遺伝子に置換される方法を新規発見し、さらにそのメカニズムの一端を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲノム編集技術は、細胞が元来から備える、ゲノムDNAの二本鎖切断 (DSB; Double-strand break) を修復する機構 (DSB修復機構) を利用していることが知られている。しかしながら、哺乳動物細胞のDSB修復機構及びゲノム編集技術は、分裂する培養細胞でのみ研究が進んでおり、培養が困難であるという理由から、生体内の大部分を構成する非分裂細胞では、それらの分子機構はほとんど明らかになっていない。 2018年度は培養神経細胞のゲノム編集機構を明らかにし、この知見を基に新規脳ゲノム編集技術の開発を目指した。具体的には非分裂細胞であるマウス胎児脳由来の神経細胞を培養し、神経細胞特異的に発現するTubb3遺伝子の下流にGFP遺伝子のノックインを試みた。その結果、非分裂細胞でゲノム中の相同部位に対してドナーDNAの片側のみ相同配列を持たせ、ゲノム標的部位とドナーDNAを細胞内で同時に切断することで、外来遺伝子が標的遺伝子に置換される方法を新規発見した。更に、shRNAを用いたスモールスケールのスクリーニングにより、当該修復経路の責任因子を複数同定し、メカニズムの一端を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、2018年度までの研究で明らかとした培養神経細胞の新規ゲノム編集機構を利用し、新規脳ゲノム編集技術の開発を目指す。具体的には新規発見した、片側のみ相同配列を持つドナーDNAを用いた遺伝子置換方法をさらに改良し、新規脳ゲノム編集技術とする。さらに治療応用を目指し、生体内でのDNA導入に優れているアデノ脳随伴ウイルス (AAV) ベクターに遺伝子治療用DNAを搭載し、遺伝性疾患モデルマウスを用いたゲノム編集治療を開始する。
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Research Products
(5 results)