2018 Fiscal Year Annual Research Report
精神障害の神経・グリアネットワーク病態解明:病態に基づく診断体系構築を目指して
Project/Area Number |
18H04040
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
尾崎 紀夫 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (40281480)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | グリア細胞 / 精神障害 / iPS細胞 / 脳オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
iPS細胞由来の脳オルガノイドは、ヒトの正常な脳発達に加えて、精神障害のモデルとしての有用性が報告されている。本年度は、健常者から樹立したiPS細胞由来の脳オルガノイドを作製し、神経細胞とグリア細胞に関して解析を行った。脳オルガノイドの作成は、既報の方法に基づいて実施した(PNAS110,50 p20284-9,2013)。まず、iPS細胞から誘導した脳オルガノイドが、どのような神経系細胞で構成されているかを確認するため、免疫組織化学染色を実施した。誘導後約3ヶ月の脳オルガノイドは、神経細胞(βIII-tubulin)とグリア細胞[アストロサイト(GFAP)、オリゴデンドロサイト(Olig2)]の各マーカーを発現する細胞で構成されていることが明らかとなった。また、脳オルガノイド内には、TH陽性、vGAT陽性、vGLUT1陽性の細胞も確認され、ドパミン作動性、GABA作動性、グルタミン酸作動性の神経細胞が存在していることが示唆された。一方で、オルガノイド間のばらつきが大きかったことから、一定の基準を満たしたオルガノイドを解析に使用する必要性が考えられた。 ゲノム解析では、グリアネットワークに影響を与える精神障害関連のゲノムコピー数変異(CNV)の探索を行った結果、22q11.2欠失、ASTN2欠失を有する患者を新たに同定することができ、前者はiPS細胞の樹立に着手した。またグリア関連遺伝子をターゲットとしたリシーケンス解析を行うため、候補遺伝子の選定について検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健常者iPS細胞から脳オルガノイドを作製し、免疫組織化学染色で各種の神経細胞(ドパミン作動性、GABA作動性、グルタミン酸作動性の神経細胞)とグリア細胞(アストロサイトやオリゴデンドロサイト)が存在することを見出し、神経・グリアネットワーク病態の検討における脳オルガノイドの有用性を確認できた。ゲノム解析では、神経・グリアネットワークに影響するゲノム変異(22q11.2欠失、ASTN2欠失)をもつ患者を新たに同定し、iPS細胞の樹立へ繋げた。以上から、本年度はおおむね順調に進展したといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討をふまえて、脳オルガノイドの最適な解析条件について検討する。さらに健常者に加えて、ゲノム変異(22q11.2欠失等)をもつ精神障害患者からも神経細胞あるいは脳オルガノイドを作製して、神経・グリアネットワーク病態を神経病理学的に検討する。並行して、22q11.2欠失のモデルマウスの脳組織でも神経・グリアネットワーク病態の検討を行い、22q11.2欠失患者の脳オルガノイドで得られた知見と比較する。 ゲノム解析では、CNV解析やターゲットリシーケンス解析を実施して神経・グリアネットワークに影響するゲノム変異をさらに同定することを目指す。
|
Research Products
(5 results)