2018 Fiscal Year Annual Research Report
Cross-talk between endocrine and environmental factors in neuroimmune disorders
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18H04045
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
山村 隆 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所, 特任研究部長 (90231670)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 和貴郎 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 免疫研究部, 室長 (90469990)
大木 伸司 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第六部, 室長 (50260328)
土居 芳充 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 免疫研究部, 流動研究員 (20597174)
服部 正平 早稲田大学, 理工学術院, 教授(任期付) (70175537)
北條 浩彦 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 神経薬理研究部, 室長 (60238722)
林 幼偉 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 免疫研究部, 併任研究員 (80392439)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 神経・内分泌・免疫制御 / EAE / プロラクチン / Eomes陽性Th細胞 / 甲状腺ホルモン / Th17細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
1) 自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルにおいて、脳内抗原提示細胞の産生するプロラクチン(PRL)がEomes陽性Th細胞(慢性炎症を誘導する細胞障害性T細胞)の誘導能を保持し、PRL産生を阻害する複数の手法(ブロモクリプチン、lーDOPA、Zbtb20特異的siRNA)によって、同細胞の誘導が抑制され、EAEの慢性期が抑制されることを証明した(PNAS投稿中, under review)。さらにPRL産生に関する細胞免疫機序として、脳内ミクログリアの産生するI型インターフェロンが決定的な役割を果たすことを確認し、I型インターフェロンの関与する脳内炎症における、新たな治療戦略の方向性を示すことに成功した(未発表)。異所産生性PRLの免疫修飾作用について、きわめて重要な知見を得ることに成功したと考えている。
2)甲状腺ホルモン受容体TR-betaシグナルが免疫系に及ぼす影響をEAEモデルで解析したところ、TR-betaのTh17細胞における選択的な発現を確認し、その機能的な意義を検証したところ、同受容体選択的アゴニストであるsobetiromeにはT細胞のIL-17産生を促進させ、TR-betaのsiRNAは抑制させる効果を示すことが明らかになった。甲状腺ホルモンはlipogenesisに関与することに鑑み、lipogenesis抑制剤の存在下ではsobetiromeの作用は解除されることがわかった。またEAEモデルにおけるTR-beta活性化または阻害により、病態が悪化または改善することまで証明できた(論文執筆中)。sobetiromeによるEAEの脱髄が改善するという報告があるが、Th17細胞に対する影響を考慮すると、sobetiromeの治療薬としての評価については、疑問が残された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
異所性プロラクチンのEomes陽性Th細胞誘導能に関する論文がまとまり、PNAS投稿でレビューに回った(現在審査中)。PRL作用を抑制するすべての薬剤について、そのEomes陽性Th細胞抑制能とEAE慢性期における治療効果が確認されたので、脳内慢性炎症における内分泌性因子の役割はこの一年でさらに明確になったと考えている。研究はミクログリアを巻き込んだ中枢神経内の細胞間クロストークを評価する段階に達している。また甲状腺ホルモンによるTh17細胞制御に関するプロジェクトも、sobetiromeを用いた in vitro, in vivo実験で明確な結果が出せたので論文完成に近づいた(投稿準備中)。これらの状況を踏まえ、研究は当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
脳内抗原提示細胞産生性PRLによる慢性炎症誘導という新規知見について、抗原提示細胞の役割について、より詳細な検討を行う必要がある。現時点ではMHC class II拘束性の抗原提示に対してPRLは共刺激分子として作用することまでは明確になっているが、提示される抗原については未解明である。内在性レトロウイルスや腸内細菌由来抗原の可能性を検証する予定である。またミクログリアー抗原提示細胞ーT細胞のクロストークにおける分子機序についても、I型インターフェロンの役割に着目し、より詳細な解析を行い、治療標的分子を同定する。 マウスで得られた知見の妥当性をヒトで確認するために、患者末梢血およびNCNPで保有する多発性硬化症の脳試料を用いて、ホルモン受容体発現と病態の関連、あるいはT細胞亜分画ごとのホルモン受容体発現などを解析する。 共同研究者の研究によって、Eomes陽性Th細胞は、二次進行型MSのみならず、ALSやアルツハイマー病の血液でも増加していることが明らかになってきた。これらの疾病の病態において、内分泌性免疫制御の破綻が存在する可能性を検証していきたい。 CD69+CD103+ 制御性T細胞の研究でも、in silico解析によって画期的な成果が上がっているが(未発表)、来年度以降は論文として成果を世に問いたい。
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Research Products
(20 results)