2019 Fiscal Year Annual Research Report
重症薬疹における特異的細胞死機序解明とバイオマーカー探索
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18H04047
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
阿部 理一郎 新潟大学, 医歯学系, 教授 (60344511)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新熊 悟 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (00613788)
小澤 岳昌 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (40302806)
朝長 毅 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬デザイン研究センター, 上級研究員 (80227644)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 重症薬疹 / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究において「表皮細胞壊死機序」「薬剤に対する生体反応惹起機序」「発症感受性因子」に焦点を絞り、重症薬疹特異的因子を探索し、疾患発症関連候補因 子を応用した診断法および治療薬開発を目的とする。本研究課題では網羅的手法を行い、重症薬疹の発症機序の解明および新たなバイオマーカーの探索を行う。 1)重症薬疹特異的因子探索 i) In vitroモデルを用いた培養上清タンパク質の解析:治癒後の重症薬疹患者末梢血細胞に薬疹原因薬剤を加え、培養液中に発現するタンパク質を質量分析法にて解析した。まずshotgun法で上清中に含有されるタンパク質を同定する。その後、変化するタンパク質をSRM/MRM法(選択反応モニタリング(SRM)と多重反応モニタリング(MRM)を組み合わせた質量分析)を用いて対象タンパク質を定量する。さらに実際の重症薬疹発症時の血清を用いて発現亢進があるかを、経時的な患者血清を用いてELISAを用いた候補因子の発現レベル解析を行い同定を行った。バイオマーカーとしてgalrectin-7とRIP3を同定した。 2)表皮細胞壊死機序の解明:重症薬疹病変部における細胞死(apoptosis/necroptosis)の詳細な解析を行う。重症薬疹病変部(表皮)をapoptosisマーカー(cleaved caspase8)、necroptosisマーカー(phosphorylated MLKL)を用いてその陽性細胞数、分布状態を検討した。 3)疾患発症関連候補因子からの診断法および治療薬開発:細胞死阻害活性を持つ化合物の同定を行った。FPR1アンタゴニストの新規化合物、およびdrug repositioningによる既存薬の中での候補化合物の同定も行った。細胞死阻害活性を持つ化合物の同定を数種行い、モデル動物を用いた検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、当該年度において1)重症薬疹特異的因子探索のIn vitroモデルを用いた培養上清タンパク質の解析、2)表皮細胞壊死機序の解明、および3)疾患発症関連候補因子からの診断法および治療薬開発を行った。 バイオマーカーとしてgalrectin-7とRIP3を同定した。 細胞死阻害活性を持つ化合物の同定を数種行い、モデル動物を用いた検討を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、特に以下の研究課題に注力して行う。 1)Single cell RNA-Seqを用いた薬剤特異的リンパ球における細胞内mRNAの解析:薬剤特異的リンパ球が含まれる薬剤添加患者末梢血細胞からシングルセル単離後、選択した細胞について、Chip上で細胞を溶解後、逆転写反応およびPCRを行いcDNAを取得する。同時に細胞識別のバーコードnano-well barcode or cell specific barcode(WBC)および分子識別のUnique Molecular Identifier(UMI)の付与を行う。次にPCRを行いシーケンスに供するライブラリーを作成し、次世代シーケンサーを用いてWBC/UMI配列の取得および遺伝子配列の取得を行い、WBCに基づき細胞ごとの配列データに分類する。取得した配列データを参照配列へマッピングし、遺伝子発現定量解析を行う。重症薬疹患者と通常薬疹患者の薬剤特異的リンパ球でデータを比較することで、重症薬疹の薬剤特異的リンパ球の特異性を明らかにし、特異因子の同定を行う。 2)皮膚を用いたRNA-Seqによる重症薬疹感受性因子の探索:細胞死が誘導されるターゲット組織としての皮膚組織において、重症薬疹感受性を規定する因子の探索を行う。具体的には、治癒後の重症および通常薬疹患者で、皮疹が生じなかった部分の皮膚を用いてRNA-Seqを行い、重症薬疹患者皮膚における特異的因子を探索する。現在すでに解析を開始し、いくつかの候補分子の同定に至っている。 3)疾患発症関連候補因子からの診断法および治療薬開発として、今年同定したバイオマーカーについて迅速診断キットの作製を行う。
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