2018 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of pathogenesis and novel therapeutics for refractory leukemias
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18H04052
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒川 峰夫 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80312320)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 急性骨髄性白血病 / 難治性白血病 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
Evi1高発現白血病モデルマウスにけるFBP1発現亢進の意義について解析した。EVI1をマウス造血幹細胞に過剰発現させるとFbp1のmRNAおよび蛋白量が速やかに上昇した。EVI1-FLAGを過剰発現した細胞でFLAGを用いたChIP-qPCRを行い、EVI1がFbp1のプロモーター・エンハンサー領域に結合していたことから、EVI1はFBP1の発現を直接促進する可能性が示唆された。FBP1の発現上昇が解糖系からペントースリン酸経路への糖代謝の切替を行うという仮説に基づき、ペントースリン酸経路の酵素群に対するノックダウンの効果を検討したところEVI1を強制発現したマウス造血幹細胞のコロニー形成能は有意に低下した。更に細胞外フラックスアナライザを用いた解析によりFBP1を強制発現させたマウス造血幹細胞は酸化的リン酸化活性と細胞内の活性酸素種が有意に増加することが判明し、ペントースリン酸経路活性化を介した高い還元活性を要求していると考えられた。 DNMT3A変異導入マウスの長期造血幹細胞においてはp53遺伝子の発現が増加していることから、DNMT3A変異陽性造血細胞ではp53経路が活性化することにより白血病化を妨げているという仮説の下に、p53遺伝子ヘテロノックアウトのバックグラウンドでDNMT3A変異を有するマウスを作製した。それぞれの要素のみを持つマウスと比較して生存期間の短縮がみられた。また掛け合わせマウスの長期造血幹細胞を用いコロニーアッセイを行い同様の比較を行ったところ継代数の延長がみられた。以上よりDNMT3A変異陽性血球の白血病化阻害ではp53経路が一定の役割を果たしていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EVI1白血病の治療標的としてのFBP1について、発現亢進機序の一端を明らかにし、治療標的として意義があることを明らかにした。またFBP1高発現に伴う代謝経路の変化に対して、この代謝経路が治療標的になりうることを確認した。今後はFBP1高発現に伴う代謝経路のグローバルな変化の全容を明らかにするとともに、代謝異常がAMLの難治化に与える影響をさらに明らかにしていく。 またEVI1の下流標的の網羅的解析のために、FLAG抗体によるChIP解析を可能にするような細胞株やマウスの作製とChIPを含めた解析を順調に進めており、今後はこの系やマウス白血病の系を用いて、見出された標的候補の意義について解析を進めていく予定である。 難治性白血病モデルであるDNMT3A変異の系において、仮設通りにp53の喪失が病態の増悪因子になりうることを確認し、その意義を順調に解析している。
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Strategy for Future Research Activity |
EVI1高発現白血病マウスモデルにおける代謝標的としてのFBP1阻害に対する効果を、in vivoで検証する。またEVI1高発現白血病患者検体を免疫不全マウスに移植して作成するEVI1高発現白血病xenograftモデルにFBP1阻害薬を投与し、FBP1の治療標的としての意義を評価する。FBP1阻害によりEVI1高発現白血病の化学療法抵抗性を克服する可能性を検証するため、AraCなどの白血病治療薬とFBP1阻害薬を併用する。一方で、EVI1高発現によるFBP1の発現亢進がペントースリン酸経路の活性化を含め実際にどのような代謝プロファイルの変化を生じているかを、マス・スペクトロメトリを用いたメタボローム解析を通じて明らかにし、ペントースリン酸経路の酵素群およびFBP1の阻害による抗白血病効果の背景にあるメカニズムを探索する。 正常造血細胞におけるEVI1の転写標的を網羅的に同定するために、Evi1遺伝子座の3’末端にFlagタグを挿入したEvi1-Flagノックインマウスを用いてEVI1に対するクロマチン免疫沈降(ChIP)を行う。EVI1を高発現することでMDSを経てAMLに至るマウスから、それぞれの病期のEVI1高発現骨髄細胞分画を採取し、RNAシーケンス(RNA-seq)による網羅的発現解析、EVI1に対するChIPシーケンス(ChIP-seq)、および結合タンパク質のマス・スペクトロメトリーを用いた網羅的同定を行う。この解析により、正常造血幹細胞、EVI1高発現MDS細胞およびEVI1陽性型白血病細胞に特異的なEVI1の共因子・転写標的の同定を進める。 DNMT3A変異によるp53経路活性化機序とその喪失が及ぼす影響を明らかにするため、変異型DNMT3Aの発現を誘導し、またDNMT3A変異を有する状態でp53喪失を誘導し、その影響をトランスクリプトームを用いて比較する。
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