2019 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive studies on thirst and salt-appetite controls
Project/Area Number |
18H04055
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
檜山 武史 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (90360338)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 口渇感 / Naセンサー / 脳室周囲器官 / 飲水 / アンジオテンシンII |
Outline of Annual Research Achievements |
1、口渇感を誘発する新規Naセンサーの発見。 これまでに、脳室に高張食塩水を投与すると飲水行動が誘発され、それにNaxとTRPV4が関与することを明らかにしていた。しかし、両者のノックアウトマウスでもわずかながら飲水が誘発されることから、第2のNaセンサーの存在が示唆されていた。今回、RNASeqにより脳室周囲器官に特異的に発現する遺伝子を網羅的に調べ、株化細胞に発現させてNa応答性を示す分子を選び出した。その遺伝子発現をマウスの脳室周囲器官において特異的に欠損させて、高張食塩水の投与に対する応答を調べた結果、飲水行動の誘発を担う新規センサー分子Xを見出した。
2、口渇感抑制機構の発見。 過剰な水分摂取は低ナトリウム血症や水中毒などの病的状態を引き起こすため、水分摂取行動の制御は生命にとって重要である。これまでに、SFOの中にアンジオテンシンII受容体(AT1a)を発現し、OVLTに投射する口渇感誘発ニューロンが存在すること、細胞外分泌ペプチドであるYによって駆動されるGABA作動性の抑制性ニューロンによって、口渇感誘発ニューロンの活動が抑えられることを明らかにしていた。しかし、そのペプチドYがどこから来るのか不明であった。今回、ペプチドYを産生するニューロンがSFOに存在し、ペプチドY受容体を介してGABA作動性ニューロンを駆動していることを明らかにした。さらに、自由行動中のSFOの神経活動を測定した結果、ペプチドY産生ニューロンの中には複数のサブタイプが存在し、その中には、低ナトリウム状態で活動が持続するタイプや飲水を開始直後に一過性に活動するタイプが存在した。以上より、SFO内部の回路の詳細が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画立案時点では、口渇感は血中アンジオテンシンIIによって惹起される機構とナトリウムセンサーであるNaxや、その下流で活性化されるTRPV4を介して惹起される機構の2つだけを想定していた。ところが、まったく予想外なことに、口渇感の惹起に関わる第二のセンサーの存在が示唆された。脳弓下器官や終板脈管器官に特異的に発現する分子を網羅的に探索し、センサー候補と思われる分子を網羅的に解析した中から、Naセンサーとして機能する分子を新たに見出すことに成功した。当初、まったく想定していなかった成果である。 また、計画立案時点において、口渇感抑制に関わる神経回路の存在は想定していたものの、その実体はまったくわかっていなかった。その解明には、自由行動中のマウスの脳内の神経細胞活動を記録する技術の実現によって初めて可能になった。こうした脳内イメージングは、これまで海馬や大脳皮質など、比較的大きな神経組織では実施例があったものの、脳弓下器官のような極めて微小(幅200ミクロン)で脳室に突き出した損壊しやすい神経核では例が無かった。この技術開発によって、口渇感抑制に関わる神経回路の実体を世界に先駆けて解明することに成功した。こうした技術の実現は、当初の想定を超えており、本研究は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今年度の成果を論文発表するために必要な追加実験を行い、成果発表に結びつける。特に、新規Naセンサーの研究については、分子Xと併せて、過去にセンサー分子であると報告されているSlc22a3について、センサー機能があるのか、ノックダウン実験によって検証する。また、口渇感抑制神経回路の研究については、ペプチドY発現細胞の活動を抑制することによって、飲水量が増加するか検証する。また、当初の計画以上に進展しているため、当初計画には無かった発展的な研究を追加して進める。
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