2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of cybernetics technology based on decentralized control for paralysis treatment
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18H04063
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
平田 仁 名古屋大学, 予防早期医療創成センター(医), 教授 (80173243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下田 真吾 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, ユニットリーダー (20415186)
岡田 洋平 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (30383714)
林部 充宏 東北大学, 工学研究科, 教授 (40338934)
長谷川 泰久 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (70303675)
栗本 秀 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (70597856)
岩月 克之 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90635567)
大山 慎太郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 特任助教 (80768797)
山本 美知郎 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (90528829)
建部 将広 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (60420379)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 同種細胞移植治療 / サイバネティクス / 中枢神経再生 / 分散型制御 / 人工知能 / 暗黙学習 / 筋萎縮性側索硬化症 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄損傷(SI)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの外傷・疾患では脳機能が正常に維持される中で広範な神経原性筋萎縮が進行し、生命維持が困難な高度な障害へと発展していく。本研究は、このような難治性麻痺状況に対して、(1)末梢神経幹内神経幹細胞移植による麻痺筋近傍での脊髄様構造の神経節誘導、(2)新たに開発をする複数制御可能な埋め込み型電気刺激装置、(3)脳の制御信号を予測し、暗黙知による制御を可能とする人工知能、という独自に開発した3つの基盤技術を適用して、自立した生活が可能なレベルの機能回復を実現するサイバネティクス技術を開発している。この技術は、歩行や把持動作などの運動機能を回復させるだけでなく、嚥下や呼吸、腸の蠕動運動といった自律神経系の支配が強く、生命維持の根幹に関わる機能を回復させることもできる。本研究では末期ALS患者への治療を想定し、主な死因となっている呼吸嚥下障害をターゲットとして、げっ歯類に留まらず、大型動物モデルでも技術実証を行う。(1)は名古屋大学医学部と愛知医科大学医学部により編成される研究チームが担当し、(2)は名古屋大学工学部が技術開発を行う。(3)は理化学研究所と東北大学工学部で開発を行う。大型動物での技術実証は岐阜大学応用生物科学部附属動物実験施設で実施する。(1)で用いる神経幹細胞には愛知医科大学がヒトiPS細胞より分化誘導した運動神経前駆細胞と、岐阜大学応用生物化学部で採取される豚胎児由来運動神経前駆細胞の2種類の神経前駆細胞を用いており、より安全で臨床応用に適した神経幹細胞の供給技術を確立しつつある。(2)に関しては、一つの刺激装置により複数筋を個々に制御可能な技術と、電磁給電技術の開発に目処をつけており、特許申請を進めている。(3)に関しても、四肢制御用に開発した独自のAIであるtacit learningを嚥下・呼吸に適用させている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成31年3月までに、上記(1)、(2)、(3)のそれぞれに対して以下の開発を完了している。 (1)末梢神経内への脊髄様構造を有する神経節の誘導と、それを用いる麻痺筋の再支配と電気刺激による制御技術の開発を進めた。iPS細胞へのGFP遺伝子と、チャネルロドプシン遺伝子の導入は完了し、げっ歯類モデルにて神経節形成、軸索再生、および神経筋接合部再支配を確認し、電気刺激によりMMT3以上の筋力で運動制御が可能であった。これらの成果を踏まえ末梢神経片横隔膜内移植と胸腔鏡下での神経幹細胞移植を試みた。一方で、ヒトiPSからの神経幹細胞の安定供給に関しては、腫瘍形成を確実に抑制する技術の開発を進めている。 (2)これまでに電磁給電方式の皮下埋め込み型電気刺激装置を開発し、げっ歯類での技術実証を進めているが、特許申請の関係により詳細を説明しない。 (3)ALSの死因で最も頻度の高い球麻痺に起因する誤嚥・呼吸障害を対象として、独自の収束制御型制御のアルゴリズムを開発している。これまでに開発した暗黙学習型人工知能は単一器官の制御にとどまるため、ニューラルネットワークと組み合わせて複数機能を学習し、柔軟な制御を実現する人工知能の開発を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年3月末までにヒトiPS細胞から分化誘導した神経幹細胞移植によるミニブタモデルでの技術実証に必要な基盤技術開発を完了させることを目指していた。ミニブタに対する低侵襲なモデル作成技術の確立と、移植幹細胞からの奇形腫形成の防止策の確立が大きな課題として挙げられていた。iPS細胞へのGFP遺伝子とチャネルロドプシン遺伝子の導入は完了し、げっ歯類モデルにより軸索再生と神経筋接合部再支配のメカニズムを詳細に解析することには成功し、また、ミニブタモデルへの移植実験においても横隔膜の再支配と、機能的電気刺激による制御を確認できた。一方で、腫瘍化の抑制に関してはgammaserectase inhibitorの活用を様々に試みたが、確実に奇形腫の形成を防止して末梢神経幹内に脊髄様組織を形成することができなかった。この問題を解決するために、岐阜大学応用生物学部の高須を2019年度より研究班に加え、神経幹細胞のソースをSPFマイクロミニブタから確保することとした。ブタは1960年代より移植用臓器の供給源として臨床応用された実績がある。異種移植に対する急性・慢性拒絶反応の回避技術や人獣共通感染症に関する知見の集積やガイドラインの整備なども進んでおり、異種移植細胞・臓器の供給源として最も有望視されている。本研究が目指す細胞移植は臓器移植と異なり急性拒絶が起こりにくく、また、マイクロミニブタでは遺伝子改変やクローン作成などの技術開発が進んでおり、臨床応用可能な神経幹細胞移植の供給源として高いポテンシャルを有すると考えている。
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Research Products
(8 results)