2020 Fiscal Year Annual Research Report
運動の恩恵効果が骨格筋から分泌されるマイオカインによって媒介されることの証明
Project/Area Number |
18H04086
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
藤井 宣晴 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 教授 (40509296)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古市 泰郎 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 助教 (40733035)
眞鍋 康子 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 准教授 (60467412)
中川 嘉 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (80361351)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マイオカイン / 分泌 / 骨格筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまで分泌器官とは考えられてこなかった骨格筋が多数の生理活性因子を分泌していることを証明し、さらにそれらの中から未知の機能を担っている分泌分子の生理機能を明らかにすることにある。骨格金から分泌されている分子は総称してマイオカイン(Myokine。myo;筋、kine;作動因子)と呼ばれていて、これまでに複数の分子の存在が報告されてはいるが、生理機能が明確に証明されたものは非常に少ない。本研究グループは骨格筋特異的に、マイオカインを過剰発現させたり、あるいはノックアウトさせた遺伝子組み換えマウスによる証明が何よりも重要と考えている。本研究では、我々が新規に発見したマイオカインAが、肝臓の細胞膜を構成するリン脂質種の組成を変化させることを、骨格筋特的過剰発現マウスを作製して明らかにしている。そのため本年度は、肝臓に生じている生理的変化を検討した。その結果、過剰発現マウスでは肝臓の中性脂肪およびコレストロール含有量が、野生型マウスに比較して少ないことが明らかになった。過剰発現マウスの肝臓では野生型マウスのそれと比較して、脂肪滴のサイズが明らかに小さかった。脂肪滴のサイズが小さいことは、体積に対する表面積の比が大きいことを示し、すなわち脂肪が使用されやすくなっていることが示唆された。高脂肪食を長期間与えると、野生型マウスでは脂肪肝が形成されたが、過剰発現マウスでは脂肪の蓄積は認められなかった。これらの結果から、マイオカインAは、骨格筋から分泌されて遠隔の肝臓に作用し、脂肪の蓄積を抑制することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイオカインAの骨格筋特異的過剰発現マウスの解析から、肝臓に対する作用をあきらかにすることに成功した。また、本年度は、マイオカインBの骨格筋特異的・時期特異的なマウスの作製にも成功した。このマウスは、ドキシサイクリンを飲ませると骨格筋特異的にマイオカインBがノックアウトされるように設計されており、実際にそのようになることが確認された。マウスは正常に生まれ、ドキシサイクリンを与えるまで正常に成長した。また、雄雌比も正常であることが確認された。ドキシサイクリン投与後の解析も一部進行している。そのため、おおむね順調に進展していると自己評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
マイオカインBノックアウトマウスの基礎解析を行い、表現型を探る予定である。まだ週齢は浅いものの、ノックアウト後に骨格筋周囲に変化を認めているので、骨格筋から分泌され骨格筋に作用する自己分泌タイプのマイオカインであることが推測されている。そのため、まずは骨格筋から解析を進める。それ以外の臓器にも変化があるかどうかも検討する。それらの手順はマイオカインAで行ったものと基本的に同じであるため、この時点までの方法論には問題が無いと考えられる。新たな表現型が何らかの臓器に見つかった場合は、その専門家からの助言を得て研究を進める予定である。
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