2020 Fiscal Year Annual Research Report
Performance improvements of algebraic statistical methods
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18H04092
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
竹村 彰通 滋賀大学, データサイエンス学部, 教授 (10171670)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 数理統計学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は多入力多出力の無線通信方式(MIMO)の性能評価の問題に関して,研究発表のリストにある通り,複素非心ウィシャーと行列の非心度行列がランク1の場合について標本最大根の累積分布関数に対するホロノミック勾配法の結果を以下の論文で発表することができた: Y.Fukasawa and A.Takemura (2020) "Holonomic Gradient Method for the Cumulative Distribution Function of the Largest Eigenvalue of a Complex Wishart Matrix with Noncentrality Matrix of Rank One". この論文の結果は,非心度行列がランク1という限られたケースを扱っているが,一方で行列の次元は一般の場合であり,一定の一般性のある結果になっている.この論文ではまずは累積分布関数の式変形により,ランク1の非心度を特定の2変数関数に集約し,他の次元には非心度が含まれないようにした.そしてその2変数関数が満たすホロノミック系を求めた.これによりその関数の正確かつ効率の良い数値計算ができることを示した.そして,その結果を他の次元を表す関数と組み合わせた.このようにして,ランク1の場合には一般の次元の行列にホロノミック勾配法が適用できることを示した.実は,行列全体のホロノミック系は次元に依存してしまい導出が困難である.したがって以上のような中間的なアプローチも数値計算の観点からは非常に有効であることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように,多入力多出力の無線通信方式(MIMO)の性能評価に関して具体的な結果を得て,論文として刊行することができた.また,ホロノミック勾配法に関するサーベイ論文が近日中に刊行予定となっている.このように,研究はおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
ホロノミック勾配法の実装においては,1) 初期点の選択と,2) 初期点から目的とする点までの積分経路の選択,の二つの選択が重要である.初期点の選択では原点などの自明な点は微分方程式系の特異点であることが多く,特異点から少し離れた点を初期点とする必要がある.初期点の選択については本研究において経験を積んできたが,積分経路の選択については自然な座標についての直線を用いるなど,これまでは単純な経路を選択しており,積分経路の最適化の検討は不十分であった.特に関数とその微分の絶対値が極端に大きくなったり小さくなったりする経路は避けなければならない.そこで,いくつかの実際的な例題を用いて,関数とその微分の絶対値が一定の範囲におさまるような方向に進んでいくような積分経路の選択のヒューリスティックスについて研究を進める.
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