2021 Fiscal Year Annual Research Report
Fluid-Structure Interaction Modeling of Heart Valves and Red Blood Cells
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18H04100
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
滝沢 研二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60415809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 陽介 神戸大学, 工学研究科, 教授 (60431524)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 接触 / 厚み / 流体構造錬成 / 心臓弁 |
Outline of Annual Research Achievements |
心臓弁の開閉に伴い、その内側を流れる赤血球を含む血液は1)流速3 m/sから急激に静止する強い非定常性、2)弁尖同士に挟まれるという 特異性がある。そのため、実験での観測が極めて困難であり、従来の数値計算でも再現できない。従って、弁の開閉やそれに伴う血流動態といった物理の解明には至っていない。本研究では、心臓の弁近傍の血流動態の解明に向け、流体構造連成解析手法を拡張する。具体的には、弁を 含む流体構造連成問題、高速流れ中の赤血球挙動、心臓弁開閉時の赤血球挙動の数値計算手法を順に構築する。統合した手法を用い、赤血球が 弁の開閉時にどのように振る舞うかを詳細に再現することで、血流動態を明らかにする。これにより、心臓弁の機能を損なう疾患の予防・治療 方法に、力学的視点から新たな指針を提示することを目的としている。
本研究では、心臓弁の開閉が起こるようなトポロジー変化が起きる空間を占める流体を、物体適合格子を用いて計算する手法を構築している。この方法は従来の信頼のある解析手法を損なうことなく同時にトポロジー変化も考慮できる方法で、トポロジー変化に特化した手法に比べ信頼性が高い。この方法による計算から、弁が閉じる際に流速は必ずしも徐々に小さくなるわけではないことが示されており、開閉時に生じる速度境界層を捉えることの重要性などがわかる。この事実から、他手法では議論しにくい開閉近傍の現象解明を数値計算により検証ができるようになっている。また赤血球を含む流体解析は多く場合、その影響度合いの高い毛細血管のような低速の箇所であるが、本研究では速度の高い領域での赤血球挙動を議論するために、Navier-Stokes方程式に基づく流体と赤血球の連成問題について取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は4つの研究項目からなる。それは1)血管壁の流体構造連成問題、2)弁の流体構造連成問題、3)高速流れ中の赤血球 運動問題、4)心 臓弁開閉時の赤血球の挙動の理解である。本年は2)、3)として研究を進めた。心臓弁は薄肉の材料と見ることができるが、曲げ剛性は無視できないレベルである。このような材料はKirchhoff-Love shellで表現することができる。その一方で、超弾性体であることから厚み方向の変化も少なくないことがわかっている。そこで、本年度はこのKirchhoff-Love shellの近似において厚み方向の定式化を高度化することで、従来行われていた平面応力近似をせずに解く方法を提案した。本手法に関連し、赤血球のモデルにも新しい研究成果を出すことができた。赤血球の膜はSkalakによるモデルが有名で、非常に薄いため曲げ剛性が考慮されないものも多い。その一方でHelfrichは別途、曲げ合成を考慮しておりそれらを足し合わせた形のモデルが使われている。本研究では、Kirchhoff-Love shellに基づいてSkalakの定式化に厚みを考慮するとHelfrichと同一の定式化になることを示した。この考えの利点は、Skalakにおいて面積弾性率は非常に高いという漠然としたモデルになることに対して、曲げ合成を定量的に評価することがSkalakの面積弾性率を定めることになるという点である。このことより、不明瞭なモデルパラメータの数を減らすことができているといえる。さらに本年度は、弁のような薄肉物体の接触について一定の成果を上げることができた。以上のことより本研究は順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として、心臓弁開閉時の赤血球の挙動の理解について進める。赤血球の挙動についてはマクロスケールにおいて、開閉時の赤血球分布の密度という考えと、 個別の赤血球の挙動という2つに分けて考えれば良いことがわかっている。したがって両者の側面から研究を進めることでいくつかの知見を示すことができると考えている。さらに、このような知見に基づいて人工弁に対する評価に適用できるような評価項目を検討する方針である。
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Research Products
(24 results)