2020 Fiscal Year Annual Research Report
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18H04110
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
梶本 裕之 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (80361541)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 触覚 / 力覚 / バーチャルリアリティ / ヒューマンインタフェース |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は個々の力覚提示手法の最適化を測るとともに、複数手法を組み合わせる手法を開始した。腱振動刺激に関しては昨年度までの研究により運動に関わる複数の腱を同時に刺激することで運動錯覚の効果を増大させられることを明らかにしており、特に手腕の運動に関しては、片腕あたり7箇所の振動刺激を行うことで検証を行い、3箇所の刺激が特に重要であることを見いだした。本年度はこれを利用してVR空間中での作業の最中に腱振動提示を行う評価実験を行った。その際には多軸力センサを内蔵した不動ジョイスティックを用い、ユーザの運動意図にあわせた腱振動提示を行った。またあわせて、固定されたバーを手で把持した状態で運動錯覚を生じさせると、バーが動いたように感じられる錯覚を発見した。この現象は、従来身体そのものに関する錯覚現象とされていた運動錯覚が、手で把持している道具や外界の解釈を変化させる錯覚現象となりうる可能性を示している。この現象を更に追求し、運動中にあるタイミングで腱振動を与えると把持物体の長さや重さなどの解釈に影響を与える可能性を見出した。電気刺激を用いた運動錯覚提示に関しては、昨年度までに引き続き、深部への選択的な刺激を複数の電極を用いて行うことを試みた。さらに指の筋に対する電気刺激に関して、あらたに甲側からの電気刺激によって手をにぎる方向の力を提示可能であることを見出し、手の複雑な運動を教示可能であることを示した。皮膚せん断変形による力覚表現に関しては、これまで皮膚への圧迫と横ずれの双方が必要とされていた本現象に対し、新たに皮膚せん断変形のみで現象を生じうることを見出した。具体的には額部の皮膚に対して輪ゴムで水平方向の力を提示するという簡便な装置で頭部回旋が生じることを見出した。本成果については日本VR学会にて発表を行い、学生表彰を受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、腱振動、腱電気刺激、皮膚せん断変形という3つの手法を最適化しつつ組み合わせるということを当初の目的としていた。このうち、複数の組み合わせによる効果の増大に関しては、予備実験レベルでは効果を確認しているがコロナ禍の影響もあり詳細な実験には至っていない。一方で、運動錯覚において把持している道具の物理特性知覚を変化して知覚するという発見、電気刺激において手の甲からの電気刺激で屈曲側の刺激が可能となるという発見、皮膚せん断方向のひずみ提示のみで擬似力覚を生じるという発見を行っており、多くの新たな可能性を見出したと言える。以上からおおむね順調と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで我々は、ウエアラブルな力覚提示のための個々の要素のブラッシュアップを図ってきた。電気刺激による深部刺激については、腱部の刺激で力覚が生起することを確認し、振動による運動錯覚については多数の協同筋を同時刺激することで効率よく力覚を生起することや、運動を伴わずに力覚のみ生起させることが可能であること、条件によっては自身の運動ではなく把持物体の物性の変調として知覚しうることを確認した。また皮膚変形による錯覚については、頭部の力錯覚であるハンガー反射現象において、これまで考えられていたよりも遥かに簡易な装置で効率的な力覚提示ができることを見出した。 本年は第一に、これらの手法の融合による力覚提示の効率化と、バーチャルリアリティ空間における評価実験を行う。さらにこれまでに、従来考えられていなかった新たな力覚提示手段が複数見つかっている(皮膚電気刺激による「横ずれ」の感覚など)。これらをさらに探求することで、劇的な力覚提示効果を見出すことが本年の目標である。 また「皮膚感覚」と「力覚」のシームレスな融合も本研究の重要な目標となる。このためのテストベッドとして、電気刺激を用いた従来にない高密度な電気触覚提示装置と、簡易な2自由度力覚提示装置を試作している。これらを組み合わせ、例えば「柔らかい」物に触れた感覚を、皮膚感覚、力覚の両面で高い完成度で実現する。
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