2019 Fiscal Year Annual Research Report
内因性光感受性網膜神経節細胞と杆体の色知覚への寄与の定式化と五元測色学の構築
Project/Area Number |
18H04111
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
岡嶋 克典 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (60377108)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 感性情報学 / 心理物理学 / 色彩工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
開発したマルチスペクトル光源と分光放射計を組み合わせた特殊な実験装置を用いて、錐体のみならず杆体と内因性光感受性網膜神節細胞(ipRGC)も同時に制御することで、静的置換法(silent substitution method)を応用した色知覚実験を推進した。3種の錐体、杆体、ipRGCの分光感度は波長域においてオーバーラップしているため、特定の色光(スペクトル)で5種の光受容体を独立に制御することは原理的に不可能であるが、5種類の光受容体、即ち、L錐体、M錐体、S錐体、杆体、ipRGCの刺激量を個別に増減することが可能な実用プログラムをさらに改良し、効率的にデータを取得するとともに、専用の解析システムを開発することで、5元の色メカニズムモデルの解明も進めた。さらに、カラースケーリングデータを解析し、計算論的アプローチも進めた。その結果、中心窩においても、色知覚に杆体とipRGCが寄与していることを示し、その影響の定式化を試みた。また、様々な原刺激の組み合わせを用いた多彩な色刺激を作成し、多面的に5つの光受容体の効果の定量化と定式化を推進するための準備を開始した。これにより、パラメータが多数存在する複雑な5元色覚メカニズムを定式化することができるようになる。また、色彩学で未解決な異デバイス(印刷物と液晶ディスプレイ)間の色再現の問題を解決するために、表示させるデバイスが異なる色刺激を並置呈示でき、また色の見えのモードも変調でき、完全等色条件を生成可能なシステムを開発し、異種デバイス間の測色値による色合わせが成立しないという問題において、見えのモードに依らず、発光機構の違いがその要因ではないことを明らかにした。さらにこれらと並行して、キセノンランプを用いた補助光源装置の開発も推進し、複雑な刺激条件を実現可能な色刺激呈示システムを試作した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ予定どおり、マルチスペクトル光源と分光放射計を組み合わせた実験装置を用いて、錐体のみならず杆体と内因性光感受性網膜神節細胞(ipRGC)も同時に制御する色実験を実施した。5種類の光受容体、即ち、L錐体、M錐体、S錐体、杆体、ipRGCの刺激量を個別に増減することが可能な実用プログラムをさらに改良し、効率的にデータを取得するとともに、専用の解析システムを開発することで、5元の色メカニズムモデルの解明も進めることができ、結果として、中心窩においても、色知覚に杆体とipRGCが寄与していることを示し、その影響の定式化を行なった。また、様々な原刺激の組み合わせを用いた多彩な色刺激を作成し、多面的に5つの光受容体の効果の定量化と定式化を推進するための準備も開始したが、光源装置の故障・修理で若干スケジュールが後ろにシフトした。また、予定どおりモードの異なる色刺激を呈示できるシステムも開発し、異種デバイス間の色合わせの問題が発光機構が要因ではないことを明らかにした。さらに並行して、キセノンランプを用いた補助光源装置の開発も推進し、複雑な刺激条件を実現可能な色刺激呈示システムを試作し、まだ精度を高める必要があるが、任意の色刺激が呈示できるようになった。以上のことから、おおむね順調に進展している状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
マルチスペクトル光源と分光放射計を組み合わせた実験装置を用いることで、様々な分光分布を要する多様な色刺激を作成し、5種類の光受容体、即ち、L錐体、M錐体、S錐体、杆体、ipRGCの刺激量を個別に増減することが可能な実験用プログラムにさらに改良を加え、中心窩のみならず網膜周辺における5元の色覚メカニズムモデルの解明も進めていく。網膜位置によって、錐体のみならず、杆体やipRGCの分布や応答特性が異なるため、その影響を明らかにしていくとともに、個人差も解析していく予定である。また色覚異常者の色の見えにおける杆体とipRGCの寄与についての検討にも着手し、これまでの理論では説明できない色覚異常者の色知覚の謎を解き明かしていく。さらにこれらと並行して、キセノンランプを用いた補助光源装置の開発も継続し、光学系の設計をさらに進めることで、精度の高い任意の分光分布を有する色光を呈示可能なマルチスぺクトル制御システムを実現させ、実験システムの拡張を試みる予定である。
|