2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of cell diversity analysis method based on gene regulatory prediction by Bayesian network
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18H04124
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松田 秀雄 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50183950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬尾 茂人 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (30432462)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トランスクリプトーム解析 / 遺伝子発現解析 / 時系列データ解析 / バイオインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
1.1細胞トランスクリプトームデータからの動的ベイジアンネットワークモデルによる遺伝子制御ネットワーク推定法の開発 マウスの造血幹細胞からの細胞分化での1細胞トランスクリプトームデータに対して、細胞系譜解析を行い、単球・好中球へ分化する細胞集団を抽出した。抽出した細胞集団を細胞系譜順に整列することにより得られる遺伝子発現プロファイルを時系列遺伝子発現プロファイルとみなして、動的ベイジアンネットワークモデルにより遺伝子制御ネットワークの推定を行った。本手法では、最適なネットワークの探索でエッジゲイン(ネットワークに新たな辺を付加する前後のスコアの差)という新しい評価尺度を取り入れているのが特徴である。既存のネットワーク推定法と推定精度の比較を行った結果、既存手法はネットワークのトポロジによって精度の低下が見られるという欠点があったが、本手法にはトポロジによらずに高い精度を達成できることが示された。 2.トランスクリプトーム解析による寒冷刺激応答に関与する新規ノンコーディングRNAの発見 マウスに寒冷刺激をかけたときのRNAシーケンスデータにおいて、刺激時間と共に継続的に発現量が上昇するノンコーディングRNAを新たに発見した。褐色脂肪組織は白色脂肪組織と異なり、寒冷刺激において熱を産生して体温調節に寄与しているが、この熱産生にはUcp1という遺伝子が主に関与していることが知られている。今回見つかったノンコーディングRNAは、寒冷刺激の初期に生じるUcp1の発現上昇に伴う熱産生を受けて、寒冷刺激時間に応じて継続的に発現が上昇することで、Ucp1の発現を段階的に抑制し熱産生を抑えることが示された。これにより、このノンコーディングRNAは、寒冷刺激の時間経過に応じて熱産生を段階的に抑えていくというユニークな調節機構を持つことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1細胞シーケンシングにより得られた各細胞単位の遺伝子発現量のセットから細胞系譜解析により、各細胞の疑似時刻上で占める位置を求め、動的ベイジアンネットワークモデルにより遺伝子制御ネットワークを推定する手法のプロトタイプシステムを開発した。造血幹細胞からの細胞分化の1細胞トランスクリプトームデータを取得し、好中球および単球へ分化する細胞集団を抽出した。このデータセットに対して開発したシステムを適用することで、抽出した細胞集団を細胞系譜順に整列することにより得られる遺伝子発現プロファイルを時系列遺伝子発現プロファイルとみなして、動的ベイジアンネットワークモデルにより遺伝子制御ネットワークの推定を行った。これにより、造血幹細胞から好中球および単球への分化を制御する遺伝子制御ネットワークが得られ、文献等で既知の制御関係と比較して推定結果の妥当性を評価している。 また、マウス脂肪組織のトランスクリプトームデータに対して遺伝子発現解析を行うことで、特定の組織由来の細胞集団でのみ特異的に発現する新規のノンコーディングRNAを発見している。このノンコーディングRNAは、寒冷刺激の初期に生じるUcp1の発現上昇に伴う熱産生を受けて、寒冷刺激時間に応じて継続的に発現が上昇することで、Ucp1の発現を段階的に抑制し熱産生を抑えることが示された。これにより、寒冷刺激の時間経過に応じて熱産生を段階的に抑えていくというユニークな調節機構を持つことが示唆されており、本研究での解析の有効性が示された。以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した遺伝子制御ネットワーク推定手法を、細胞分化以外のより多くの生命現象での1細胞トランスクリプトームのデータに適用することで、有効性を示していく。具体的には、免疫系の細胞について、種々の炎症刺激を加えたときの応答において機能する遺伝子制御ネットワークを推定し、異なる刺激に対する制御ネットワークの共通性と相違点を求める。また、遺伝子制御ネットワークの動的な時間変化、例えば、炎症刺激の初期と後期での遺伝子制御関係の変化を推定することで、動的に変化する制御関係のネットワークとしての推定手法や評価手法について検討する。 さらに、時系列上の各時点で、ベイズ情報量基準を用いてネットワーク中の遺伝子間の制御関係の強さを時点ごとに求める手法を既に開発しており、個々の細胞相互に、遺伝子間の制御関係の強さを比較することで、細胞系譜解析で求めた疑似時刻と遺伝子間の制御関係の相関について解析できるように拡張していく。これにより、例えば、炎症刺激応答の初期と後期での制御関係の変化を解析することで、炎症の進行過程についての知見を得ることを目指す。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Long non-coding RNA 2310069B03Rik functions as a suppressor of Ucp1 expression under prolonged cold exposure in murine beige adipocytes2020
Author(s)
Mari Iwase, Shoko Sakai, Shigeto Seno, Yu-Sheng Yeh, Tony Kuo, Haruya Takahashi, Wataru Nomura, Huei-Fen Jheng, Paul Horton, Naoki Osato, Hideo Matsuda, Kazuo Inoue, Teruo Kawada, Tsuyoshi Goto
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Journal Title
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
Volume: 84
Pages: 305~313
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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