2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of cell diversity analysis method based on gene regulatory prediction by Bayesian network
Project/Area Number |
18H04124
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松田 秀雄 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50183950)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬尾 茂人 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (30432462)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | トランスクリプトーム解析 / 遺伝子発現解析 / 時系列データ解析 / バイオインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに開発した、シングルセルRNAシーケンスデータから得られる一細胞レベルの遺伝子発現量データに対する疑似的な時系列の推定による細胞系譜解析を、がん細胞の薬剤耐性のシングルセルRNAシーケンスデータに適用した。公開されている口腔扁平上皮癌の患者由来の培養細胞株から取得されたデータであり、化学療法としてシスプラチン投与前の薬剤感受性状態、4カ月投与後の薬剤抵抗性状態、薬剤抵抗性状態から投与の休止による薬剤休眠状態のそれぞれの状態での細胞を取得している。 これらの細胞株についてクラスタリングを行ったところ、次元削減による2次元マップ上での配置が細胞株の種類によって異なるバッチ効果を示したため、バッチ効果の除去を行い、疑似時系列解析と細胞系譜解析を行った。その結果、細胞株の違いに起因すると思われるバッチ効果が補正され、薬剤感受性状態から、薬剤抵抗性状態を経て、薬剤休眠状態へと続く一連の細胞系譜が検出された。さらに、この細胞系譜に沿って発現が変動する遺伝子を検出したところ、卵巣がんなどで薬剤抵抗性に関与することが報告されている遺伝子群が薬剤感受性から薬剤抵抗性に向かう過程で発現上昇しており、薬剤休眠状態ではそれらの一部の発現が低下するという結果が得られた。 このシングルセルRNAシーケンスデータを公表した元論文では薬剤感受性状態から、抵抗性状態と休眠状態につながる一連の細胞系譜が示されておらず、薬剤抵抗性に関与する遺伝子群の発現変動も報告されていないため、本研究での結果は、本研究で開発した細胞系譜解析手法の優位性を示していることが推測されるため、今後さらなる解析とその結果の検証を進める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で開発した細胞系譜解析手法は、前年度までは主に細胞分化過程でのシングルセルRNAシーケンスデータに適用して、その有効性を確認していた。今年度は、これに加えて、公開されている口腔扁平上皮癌の患者由来の培養細胞株から取得されたシングルセルRNAシーケンスデータに適用したところ、クラスタリングにより、抗がん剤投与前の薬剤感受性状態から、長期間投与後の薬剤抵抗性状態、さらには、薬剤抵抗性状態から薬剤投与を停止した薬剤休眠状態のそれぞれの状態にある細胞群を、細胞株の違いによるバッチ効果の影響を除去して、それぞれの状態を表すクラスタにまとめることができた。また、細胞系譜解析では、薬剤感受性状態から、薬剤抵抗性状態を経て、薬剤休眠状態に向かう一連の細胞系譜を検出することに成功した。次に、検出された細胞系譜において、発現変動を示す遺伝子を探索したところ、薬剤感受性状態から薬剤抵抗性状態に向けて、卵巣がんなどで薬剤抵抗性に関与することが報告されている遺伝子群が発現上昇していることが示された。 以上の結果は、本研究で使用したシングルセルRNAシーケンスデータを公表した元論文のデータ解析では検出できておらず、特に、本研究で開発された細胞系譜解析と発現変動遺伝子解析によって、薬剤感受性から薬剤抵抗性を経て薬剤休眠状態に向かう一連の細胞系譜が細胞株の種類によらずに検出できたことと、他のがんで薬剤抵抗性に関与する遺伝子群が口腔扁平上皮癌の細胞株で検出されたことは、本研究の解析手法の有効性を示唆していると考えられる。以上のことから、本研究は順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度までに行った、細胞分化やがん細胞の薬剤応答での細胞系譜解析により、細胞系譜の解析手法についての有効性は十分に示されたと考えられる。しかし、本手法による細胞系譜解析は、その前段に行う、バッチ効果除去、次元削減、クラスタリングなどの結果に依存するため、細胞系譜解析の結果をフィードバックして、前段の処理を補正していくなどの対応が必要と思われるため、その検討を行う。 また、解析により得られた細胞系譜の結果を評価する方法論の確立と、細胞系譜からそれに含まれる細胞群の抽出する方法を確立する必要があると考えられるため、これらについても検討していく。 次に、細胞系譜に含まれる細胞群を、系譜に沿って付与された疑似時刻と、発現変動遺伝子解析で検出された遺伝子群の発現量を基に、時系列遺伝子発現プロファイルを構築する方法を確立し、そこから動的ベイジアンネットワークモデルにより遺伝子ネットワークを推定する手法を確立する。特に、細胞分化などでは、分化により細胞系譜が複数に分岐するため、それらの分岐点でのどの系譜に向かう細胞であるかを判別する必要があると考えられるため、そのための方法論を確立していく。 さらに、得られた遺伝子ネットワークを、既知の遺伝子機能との対応付け等により、評価する方法論を確立する。シングルセルRNAシーケンスデータから、同一の細胞系譜に沿って状態遷移する細胞群であっても、遺伝子発現で多様性を示すことが示唆されているため、このような多様性を遺伝子ネットワークの推定にどのように反映させるかを検討していく。
|
Research Products
(1 results)