2019 Fiscal Year Annual Research Report
揮発性が異なる元素の気化に伴う同位体分別が拓く環境地球化学の新展開
Project/Area Number |
18H04134
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 嘉夫 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10304396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板井 啓明 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (60554467)
足立 光司 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 主任研究官 (90630814)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エアロゾル / XAFS / 同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
高栄養塩・低クロロフィル海域における生物一次生産の制限要因の一つとして溶存鉄の不足が挙げられる。海洋表層への主要な鉄供給源として鉱物ダスト等の自然起源鉄が挙げられる一方、人為起源鉄は自然起源鉄に対して発生量は少ないが水への溶解度が高く、重要な鉄の供給源となる可能性がある。しかし、人為起源鉄の海洋表層への寄与の推定は未だ十分になされていない。試料間の鉄安定同位体比を比較することは供給源ごとの寄与推定に有効な手段である。Kurisu et al. (2016)により、微小粒子中に含まれる人為起源鉄が、粗大粒子に対して低いδ56Feを示すことが明らかとなった。本研究では、様々な人為起源鉄の発生源付近の試料を分析し、低いδ56Feを示す要因を考察した上で、人為起源鉄のδ56Feの代表値を用いて、海洋エアロゾルのδ56Feから人為起源鉄の寄与の推定を行うことを目的とした。 排出源付近の試料はトンネル内、焼却場、製鉄場、野焼きの発生源付近で、海洋エアロゾルは白鳳丸KH-14-3次航海において採取した。人為起源鉄の排出源付近で採取された微小粒子は、燃焼温度の低い野焼きを除き、原料や粗大粒子に対して2-4‰程度低いδ56Feを示した。微小粒子中には10-100 nm程度の球形の鉄(水)酸化物粒子が多く見られ、カルシウム等の難揮発性元素が共存していないことから、高温燃焼の気化の過程で同位体分別が起きたことが示唆された。気化した成分のδ56Feはおおよそ-4 - -5‰であることが見積もられ、Rayleigh分別の式から考えると、(i) 鉄が難揮発性であることと、(ii) 高温で塩化鉄等の分子量の大きな化学種として気化することが、大きな同位体分別の要因であることが示唆された。海洋エアロゾル試料の微小粒子は、粗大粒子よりも1-2‰程度低い同位体比を示し、人為起源鉄の影響があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、様々な燃焼起源排出源から放出されたエアロゾル中の鉄の同位体比を測定することに成功した。その結果、人為起源鉄と自然起源鉄のδ56Feの代表値として-4‰と0‰を仮定し、溶解率を加味して寄与を計算すると、溶存鉄のうち最大30-50%程度が人為起源鉄であると推定され、人為起源鉄が海洋表層への溶存鉄の供給源として重要であることを、δ56Feに基づいて示すことができた。これらは、鉄安定同位体比を用いて人起源鉄の量を推定することを示しており、関連分野において大きなインパクトがある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後さらに詳細な検討を行い、陸域や海域における大気中のエアロゾル中の鉄の何割が人為基起源(燃焼起源)であるかを定量的に示すべく研究を継続する。
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[Presentation] Abundant ferromanganese microparticles in oxic pelagic sediments (IODP Exp. 329)2019
Author(s)
Go-Ichiro Uramoto, Yuki Morono, Naotaka Tomioka, Shigeyuki Wakaki, Ryoichi Nakada, Rota Wagai, Kentaro Uesugi, Akihisa Takeuchi, Masato Hoshino, Yoshio Suzuki, Satoshi Mitsunobu, Fumito Shiraishi, Hiroki Suga, Yasuo Takeichi, Yoshio Takahashi, Fumio Inagaki
Organizer
日本地球惑星科学連合2019年大会
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[Book] 大気環境の事典2019
Author(s)
大気環境学会
Total Pages
464(2ページ)
Publisher
朝倉書店
ISBN
978-4-254-18054-1