2021 Fiscal Year Annual Research Report
Investigation for mechanisms underlying cell cycle regulation and metabolism in stem cells
Project/Area Number |
18H05215
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中山 敬一 九州大学, 生体防御医学研究所, 主幹教授 (80291508)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 聡子 (高井聡子) 藤田医科大学, 総合医科学研究所, 助教 (00415564)
中山 啓子 東北大学, 医学系研究科, 教授 (60294972)
|
Project Period (FY) |
2018-04-23 – 2023-03-31
|
Keywords | 細胞周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれは以前、細胞周期の静止状態を維持するp57遺伝子が造血幹細胞や神経幹細胞といった代表的な組織幹細胞に特異的に発現することを発見しており、このp57の発現を指標とすることで、腸管においても新たな幹細胞集団を同定できるのではないかと考えた。われわれの予想通り、造血幹細胞や神経幹細胞の細胞周期停止に重要なp57遺伝子が、腸管上皮においても稀少な細胞集団に特異的に発現していることを発見した。そこでp57の系統追跡マウスを作製し、p57発現細胞の挙動を解析した結果、p57発現細胞は通常の状態では分化細胞の一種として存在しているが、組織がダメージを受けると脱分化して幹細胞となり、腸管の再生に重要な役割を果たすことがわかった。さらに腸管上皮を1細胞RNA-seq法によって解析したところ、再生途上のp57発現細胞では本来成体腸管には発現していないはずの胎児腸管の遺伝子群や胃上皮の遺伝子群が高発現していることがわかり、幹細胞性獲得の過程において通常の成体腸管とはまったく異なった細胞状態を経ていることが明らかとなった。つまり腸管の傷害後再生においては、分化した細胞の遺伝子発現プロファイルをダイナミックに作り変える(=リプログラミングする)ことで脱分化を引き起こし、新たな幹細胞集団を作り出していると考える。われわれは、この時間的(胎児返り)・空間的(胃上皮様変化)なリプログラミングを「時空間的リプログラミング」と名付けた。p57発現細胞はまた、Apc変異マウスで自然発生する腸管腫瘍においてもがん幹細胞として機能しており、かつ腫瘍内でも上記と同様の時空間的リプログラミング現象が起こっていることが判明した。将来的には、このような時空間的リプログラミングのメカニズムを研究することにより、がん幹細胞を根絶する治療法を確立できると期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既にアリル特異的Hi-Cシステムは開発済であるので、これを用いてp57インプリンティング領域のTADをESCとASCにおいて調べたところ、解像度の点で満足すべき結果が得られなかった。そこでさらに高解像度のTAD解析を行うため、4Cによる解析も同様に行ったところ高解像度のTAD解析に成功し、新たなエンハンサー領域の同定に成功した。またp57陽性細胞がどのような幹細胞機能を有するかについて、腸管と胃において系統追跡実験を施行し、一部は論文として発表した(Higa et al., Nat. Commun. 13: 1500, 2022)。さらに腫瘍化において、p57陽性幹細胞が果たす役割についても明らかにすることができ、現在治療法の開発についても基礎理論の形成ができつつある。このように全体の進捗は順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)高解像度4C解析によって同定されたエンハンサー領域を欠損した遺伝子改変マウスを作製し、p57の発現、ゲノムインプリンティング、幹細胞の細胞周期およびその機能、にどのような影響をもたらすかを検討する。 2)胃におけるp57陽性幹細胞の性質を明らかにする。特にこの幹細胞は迷走神経支配を受けている可能性があるため、迷走神経の切断実験を行い、幹細胞性の変化を検討する。 3)その他の細胞周期-代謝系に影響を与える分子群の研究、特にc-Myc-Fbxw7系やp53-CHD8系等もp57/Skp2系と同様に細胞周期と代謝制御の接点に位置することがわれわれの研究から分かっており、それらについてもノックアウトマウスの解析を進める。
|
Research Products
(17 results)