2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Integrated Knowledge through Establishment of an Interactive Research Scheme based on the Open-Data of Research Resources for Wooden Tablets and Related Topics
Project/Area Number |
18H05221
|
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
馬場 基 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 室長 (70332195)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 正樹 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (10126295)
久留島 典子 東京大学, 史料編纂所, 教授 (70143534)
高田 智和 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変化研究領域, 教授 (90415612)
耒代 誠仁 桜美林大学, リベラルアーツ学群, 准教授 (00401456)
山本 和明 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (90249433)
山田 太造 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (70413937)
笹原 宏之 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (80269505)
大山 航 埼玉工業大学, 工学部, 教授 (10324550)
渡辺 晃宏 奈良大学, 文学部, 教授 (30212319)
桑田 訓也 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (50568764)
高田 祐一 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 研究員 (50708576)
山本 祥隆 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (50610804)
星野 安治 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 室長 (50644481)
|
Project Period (FY) |
2018-06-11 – 2023-03-31
|
Keywords | 木簡 / オープンデータ化 / 文字文化 / 日本史 / IIIF / 交流史 / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度から引き続き、「史的文字データベース連携検索システム」の機能改修を進めた。令和元年に「実証試験版」で公開した奈文研・編纂所・国文研の文字画像データに加え、令和2年10月には台湾中研院・京大人文研のデータを連携し、多言語(英語・繁体/簡体中国語・韓国語)にて本公開を開始した(https://mojiportal.nabunken.go.jp/)。また、連携強化とさらなる参加促進のため、ポータルサイト・APIの詳細設計書・異体漢字対応テーブルをポータルサイト上で提供した(日本語)。なお、機関連携およびサイトの公開については、国内および台湾メディアで報道された。 今年度より深層学習を活用して木簡文字を鮮明化させる画像認識プログラムの開発に着手した。具体的には、木簡の外形と墨痕領域のみを自動抽出し、仮想実測図を作成するものである。一定程度の認識率を得られ国内シンポジウムで報告したところ、木簡・漢字だけでなく多様な媒体・文字資料(例えば、紙文書・ヒエログリフ等)への活用について有益な意見を得られた。 木簡情報の研究資源化として、令和元年度に開発したIIIF用の文字画像切出ツールを活用し、新規に約24,000文字(延べ)のデータを作成した。過年度と合わせて合計約140,000文字の研究資源化を実現した。また、文字に関する知識の集積作業として、木簡文字観察記録シートを約25,000文字作成した。 研究資源化加速のため、史料編纂所が開発した史料情報管理システムを改良し、木簡情報整理作業への援用実験を開始した。また、多様な木簡情報の研究資源化に向けて、筆の傾きや筆圧を含む精緻な筆順情報をデジタルデータとして記録するプログラムの開発に成功した。 国際共同研究として、韓国慶北大学校・HK事業団が主催した国際オンライン学会で研究報告をおこない、東アジア漢字文化に関する研究課題を提起・共有した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「史的文字データベース連携検索システム」は、令和元年度に公開した実証試験版で得られた知見をもとに、今年度本公開に至った。実証試験版でのユーザからの多様な意見を反映させ、より利便性の高い検索サービスを提供することができた。さらに本サイトでオープンデータ化した文字画像を活用して、深層学習を利用した文字画像認識プログラムや、筆跡情報のデジタルデータ化が実現した。これをうけて研究グループ内で協議した結果、上記手法を、類似文字画像の検索システムや、膨大な筆跡情報をデジタル記録するアプリケーションの開発等に援用する研究へ繋がる見通しが立ったことは重大な成果だと考える。 また、新型コロナウイルスの影響がありながらも、木簡研究資源のオープンデータ化も着実に進めることができた。 国際的な共同研究については、新型コロナウイルスの影響によりシンポジウムや学会の多くが順延したため、本研究の手法・成果を国際的に公表する機会が少なくなってしまったが、令和元年度に実施した中日韓国際簡牘学会の共催機関を中心に、共同研究へ向けた協議を着実に進めている。 一方、昨年度若干の遅延が生じていた、木簡整理作業のオールデジタル化による木簡研究資源化の促進や、参加誘発のための直接的な体制の整備については、今年度末のオンライン研究会での協議により、一定の目処が得られた。現時点での遅延は、研究計画の変更や、他の研究項目に影響を与えるものではなく、令和3年度以降は、効率的に遂行できるものと考える。 以上から、研究は全体として着実に遂行できており、おおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
「史的文字データベース連携検索システム」について、令和2年度に日本語で公開したポータルサイト・APIの詳細設計書・異体漢字対応テーブルを、英語・中国語で公開することで、多様なポータルサイトの構築が可能な「開かれた」環境の提供を目指す。 新型コロナウイルス感染症の影響により順延となった国内外の学会・シンポジウムに参加し、「史的文字データベース連携検索システム」の紹介をおこない、さらなる連携機関を募る。 類似の文字画像を検索するウェブシステム「MOJIZO」を改修し、令和3年度に試験版の完成、令和4年度の公開を目指す。また、今年度に開発した、筆順情報をデジタルデータとして記録するプログラムの成果を基礎として、参加誘発型のアプリケーション開発を目指す。 研究資源化加速のため、木簡整理作業のデジタル化を推進する。これにより、木簡の調査・整理作中の情報を直接デジタル化し、木簡の研究資源化を飛躍的に促進すると共に、作業中の様々な気付きをデジタルデータとして記録・活用できるシステムの実現を目指す。並行して、木簡文字の研究資源化ならびに観察記録シート作成を継続的に実施する。なお、上記作業は、新型コロナウイルスの影響を念頭に置き、オフライン環境でも遂行できる作業フローを確立させ、作業の効率化を図ることが望ましいと考える。 東アジア漢字文化に関する共同研究については、中国社会科学院や韓国HK事業団との共同研究を強化しつつ、多様に展開する「ローカルな漢字文化」に迫る観点からの研究を推進する。その他に、分担者を中核とするオンライン研究会や、外部講師を招いての講演会、全国の木簡調査者とのワークショップを定期的に開催することにより、研究内容・成果の共有とブラッシュアップ、調査現場への普及や調査現場からのフィードバックを確実に積み重ねたい。
|
Research Products
(45 results)