2021 Fiscal Year Annual Research Report
Fundamental Study of Robust Molecule Recognition Electronics
Project/Area Number |
18H05243
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳田 剛 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50420419)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 隆雄 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (00630584)
内田 建 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (30446900)
|
Project Period (FY) |
2018-06-11 – 2023-03-31
|
Keywords | 金属酸化物ナノワイヤ / 自己組織化単分子膜 / 分子センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のアプローチは、(i) 金属酸化物ナノワイヤの精密結晶成長制御技術を駆使して構築した堅牢な分子識別機能の適用可能性と限界の調査、(ii)堅牢な分子識別酸化物ナノワイヤ構造とセンサとの組み合わせによるハイブリッド分子センサの創製 、(iii) 分子センサを集積化させたアレイ型センサによる分子識別動作の実証、の3項目からなる。(i)について、前年度までに金属酸化物ナノセンサの高温に対する高い堅牢性を達成していた。今年度は、金属酸化物表面の処理方法を検討することで、幅広い溶液環境(pH)に対する堅牢な金属酸化物表面の構築を行った。さらに、構成カチオン種の変調・混合によるセンサ能の高機能化を行った。これまでに優れたセンサ特性を示していた酸化亜鉛ナノワイヤに対する異種金属カチオンの付与によるさらなる高性能化に加え、酸化タングステンを用いた新たなナノワイヤセンサの開発を行った。(ii)については、分子分離部位である酸化亜鉛ナノワイヤを極めて狭い流路内に構築する技術開発を行った。さらに、この酸化亜鉛ナノワイヤアレイ流路の分子分離能を評価した。(iii)について、アレイセンサチャネル上の分子選択性を変調するために、有機分子膜上に対する2段階修飾によって、分子膜の均一性を保ったまま表面分子構造を変調する手法を開発した。さらに、クロマトグラフィ解析結果に対する画像処理技術を応用した新たなバイオマーカー自動同定方法の開発を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
溶液中における金属酸化物表面の安定化については、ドーパントの導入に関わるアニオン/カチオン欠損の存在が表面極性に重要な影響を与えることを見出し、逐次アニーリングという新たな手法を開発することで、酸性~塩基性におよぶ幅広いpH領域で安定な表面を得ることに成功した。表面カチオン種の組成変調については、酸化亜鉛と酸化銅とを含むヘテロ型金属酸化物ナノワイヤを新たに合成することに成功した。このナノワイヤ表面上では、分子センサの回復を阻害する分子間の縮合反応が抑制され、より優れた繰り返し特性と回復時間が向上することを見出した。さらに、タングステンをカチオンとして用いたナノワイヤにおいて、ナノワイヤ合成時のアニオン種の変調によってセンサ応答・回復特性を劇的に改善可能なことを偶然見出した。センサ応答に必要なカルボン酸への酸化とその脱離は材料設計上相反する要請であることから、本材料はセンサ材料として特に優れた性質を有するものである。これらの金属酸化物ナノワイヤの合成を流路環境下で行うために、極めて狭い流路内部に均一なナノワイヤアレイを構築させる方法論の確立に成功し、、芳香族化合物に対して優れた分離能を示すことを見出した。アレイセンサ上の分子膜の構造変調にあたっては、クリック反応を利用した2段階修飾によって優れた効率と適用範囲で先端分子構造を変調可能なことを見出した。この際、反応の起点となる官能基の表面密度を適切に制御することで、修飾後の分子膜の温度耐性を大きく向上可能なことを示した。画像処理と機械学習を組み合わせることで、クロマトグラフィ質量分析データ中の分析物の多変量化学/バイオマーカー特徴を自動的に識別するための新手法開発に成功した。本手法により、ピークピッキング処理を行うことなく、データ中のシグナルを特徴付けることが可能となる。以上のように、当初の計画以上に研究が進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度の知見に基づき、以下のような指針で研究を推進する。(i)分子サンサの長期間の安定性を評価検証を行う。夾雑物存在下における安定的なセンサ動作を実現するために、特に最大の障害となる空気中の水蒸気を除去し、目的化合物のみを選択的に検知するためのセンサ機構を確立する。(ii)金属酸化物ナノワイヤの表面構造変調技術開発をすすめ、より高次な構造変調手法の開発を行う。これらの新規ナノ構造利用することで、生体関連化合物の検出・識別への展開を図る。さらにそのセンサ表面を分子修飾によって変調し、実際に優れたセンサ応答・回復能を示す金属酸化物表面を構築する。(iii)1024chのクロスバーアレイ構造を有するセンサアレイについての開発を進め、堅牢かつ安定的にセンサ特性を得るための構築手法を確立する。さらに、今回開発した機械学習モデルを活用し、本研究成果を実際のヒトの呼気による識別へと応用する。
|
Research Products
(17 results)