2021 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of new mechanism for dual-ion storage batteries concerted by lithium and multivalent ions
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18H05249
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
市坪 哲 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (40324826)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 範彦 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (60505692)
河口 智也 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (00768103)
谷村 洋 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (70804087)
八木 俊介 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (60452273)
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Project Period (FY) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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Keywords | デュアルキャリア / 多価イオン / 蓄電池 / デントライト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は多価イオンをキャリアとして利用する蓄電池のための材料科学を確立し,一価および多価イオンが奏でるデュアルキャリアの協奏的相互作用の学理を構築することを目指す. 一価イオンとしては,Liイオンを想定しているが,資源として豊富なNaイオンなどを選択することも考慮に入れている.ここでいう協奏効果とは,正極においては,カチオン間相互作用による多価カチオンの固体内拡散の促進であり,また負極においては,アルカリ金属のデンドライト形成の抑制効果である. 正極材料の開発において,デュアルカチオンの協奏効果を活用するため,スピネル型や層状構造など,典型的な結晶構造を有する遷移金属酸化物を広範囲で実験的に合成し,特にLi-Mgデュアルキャリア電解液中の反応挙動を調査した.その結果,単一キャリア電解液中の結果に比べ,キャリアの併用により放電容量・電位が向上することを見出した.また,キャリア元素とホスト元素の混合が充放電特性や構造安定性に与える効果を調査するため,本年度はLi単一キャリア系に着眼し,多種類の遷移金属元素の混合効果を考察した.等量的混合に伴う配置エントロピーの増加により,層状岩塩の単相構造の直接合成が可能になり,ホスト構造の相安定性が向上することを実験的に解明した. 負極におけるデンドライト成長の抑制機構(これが最重要課題)については,Li-Mg系のほか,LiやNaのアルカリ金属元素に多価カチオン元素を併用する効果を調査した.その結果,多価カチオン元素が還元析出しない系においても,電解液中のキャリア間のクーロン相互作用により,溶媒和構造に変化が生じ,析出反応の律速過程の制御によりデンドライト成長を回避できることを解明した.さらに,添加元素や溶媒を選択し,析出・溶解反応の可逆性を向上させ,実用レベルに近い性能を得るめどが立っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デュアルキャリア電解液系における協奏的相互作用を解明するために,電極反応を熱力学と速度論の両面から理解し,基礎的な学理の構築と実用的な材料の開発を並行して推進している.LiとMgの協奏効果を初めて発見したシェブレル化合物Mo6S8正極に対して,電気化学測定や計算機シミュレーションを併用して,インターカレーション反応における活性化過程を分解し,拡散モデルの構築を進めている.また,デュアルキャリア電池正極材料候補を探索するため,多種類の準安定構造をもつMnO2多形を用いて,キャリアの挿入・脱離挙動を調査し,LiとMgの同時挿入により室温においても高い放電容量を示すことを明らかにした.さらに,キャリアの固溶組成範囲の拡大やホスト構造の安定性向上を目指して,酸化物正極における遷移金属元素の混合効果を検討した.多数の元素を同時に混合して配置エントロピーを高めることで,層状酸化物構造で構成される単一相からなる正極材料の合成に成功した.現在はキャリア元素の混合を加えて,デュアルキャリア系での電極特性を調査している. 金属負極におけるデンドライト成長の抑制機構の解明においては,アルカリ金属(Li,Na)電解液にアルカリ土類金属塩(Mg,Ca,Ba)を添加した効果を系統的に調査した.多価元素の添加により,LiやNa金属負極の析出形態が顕著に変化し,デンドライト成長を抑制できることを発見した.さらに,実験結果をベースに,第一原理計算や分子動力学シミュレーションを用いて,析出・溶解挙動を調べた結果,アルカリ土類金属塩の添加により,LiやNaイオンの溶媒和構造の結合が強くなり,電析時に反応律速過程に移行して,デンドライト成長が抑制されるという機構を明らかにした.添加カチオン元素候補や溶媒の最適化により,析出物表面の電解液分解層の安定化を実現し,析出・溶解反応の可逆性を顕著に改善できつつある.
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Strategy for Future Research Activity |
金属負極蓄電池を成功させるためには,充電時のデンドライト形成をいかに抑え込むかが最重要課題となる.リチウムイオンなどの一価イオンを併用するデュアルキャリア蓄電池の構築にあたり,負極におけるデンドライト電析の抑制機構と,正極における二価イオン収納に関する研究は非常に重要である.本研究では,第一原理計算や分子動力学などの計算手法を援用し,主に実験的立場からこの難問に対して系統的に取り組む.
負極でのデンドライト成長の抑制に関しては,これまでの合金負極や金属負極の反応機構を解明した研究結果を踏まえて,キャリア間の相互作用が電析過程に与える影響を引き続き研究する.異種キャリア添加による溶媒和構造の修飾・改変および析出物表面の電解液分解層の組成制御により,平滑な形態かつ可逆的な析出・溶解が得られることを明らかにしつつある.そこで最終年度の本年度では,電極性能の向上と金属負極元素種の拡張に向け,新たに導入するスパッタ装置を用いて,集電体界面に金属コーティングを行い,コーティング層におけるキャリア元素の析出機構と電解液の化学安定性に与える影響を解明する. 正極物質に関しては,遷移金属硫化物や幅広い結晶構造をもつ酸化物において,LiとMgイオンの協奏的な拡散挙動によって,Mgイオンの固体内拡散が促進される現象とその一般性を確立した.本年度では,正極材料などの高容量化・長寿命化を目指して,デュアルキャリアの固溶領域を拡大し,相安定性を向上するための材料設計を行う.具体的には,第一原理計算による元素混合が相安定性に与える影響を調査し,実験的に候補材料の合成を行い,安定な共存領域を可能とする設計指針を立てる.また室温において酸化物内部で多価イオンの拡散が促進される伝導機構の確立を目指す.さらに,デュアルキャリア系の拡張として,Liより資源量が豊富なNaやCaに対して正極材料の電極特性を調査する.
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