2019 Fiscal Year Annual Research Report
Chemistry of Boron-Containing pi-Electron Materials
Project/Area Number |
18H05261
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 茂弘 名古屋大学, 物質科学国際研究センター(WPI), 教授 (60260618)
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Project Period (FY) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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Keywords | ホウ素 / パイ電子系 / 近赤外色素 / 蛍光イメージング / 有機電界発光素子 / ルイス酸性 / ラジカル / 超分子重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,多様な元素の中でもホウ素に着目し,ホウ素の電子欠損性の活用により,秀逸な光電子機能性分子の創製を目的としている.最近我々は,トリアリールボラン骨格の平面固定化により,ホウ素の立体保護が無くても十分に安定化できることを示し,ホウ素ドープグラフェンのモデル系ともいえる「平面ホウ素π電子系」の合成と物性の理解、機能開拓について検討してきた.本研究では,これをさらに一段進め,ホウ素の特性を最大限活かすことにより,近赤外蛍光や,両極性半導体特性,フォトクロミック特性などの点で突出した特性をもつ分子系を創出に挑戦している.また,ホウ素とピリジン配位子との錯形成平衡の活用により,平面π電子系の超分子重合の制御にも挑んでいる.この高次構造制御をもとに,有機半導体材料の機能発現に適した薄膜構造の形成や,多重刺激応答性超分子材料の創製,細胞内での超分子化学の実現など,他の分子系では困難な物質機能を実現し,有機エレクトロニクスや生命科学研究の進展に寄与することが究極の目標である.この中で本年度は,3つの異なるアリール基を導入した平面固定化ホウ素π電子系の合成法の開発に取り組むとともに,一連のホウ素π電子系の構造とLewis酸性との相関を精査し,顕著なLewis賛成をもつ新骨格の創出を達成した.また,蛍光波長の長波長化にも取り組み,ホウ素を含むD-A-A型π骨格からなる近赤外蛍光分子を新たに創出した.ホウ素により極度に安定化した平面固定ラジカルに関しては,有機LEDへの応用を検討し,二重項励起状態に由来した高い効率を実現し,その潜在的有用性を示した.また,平面固定ホウ素パイ電子系の平面性を活かした自己組織化についても検討し,速度論的制御による超分子ポリマーの合成にも成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホウ素の電子欠損性の活用を基軸とした光・電子機能性分子の創製を目指し,本年度は以下の4点に重点的に取り組み,進展を得た. i) 平面固定トリアリールボラン骨格の合成法の開発:ホウ素上に3つの異なるアリール基を導入し,異なる役割をアリール基にもたせることにより,より緻密にデザインされたホウ素コア骨格を創り出せる.この観点から,非対称平面固定トリアリールボラン骨格の合成法の確立に取み,3つのアリール基を事前に連結した前駆体を経由する合成法を用いることで,合成を可能にした.この合成法をもとに,顕著なLewis酸性をもつ新骨格の創製にも取り組んだ. ii) 近赤外蛍光骨格の創出:近赤外領域で吸収・発光をもつ分子の開発を狙い,電子受容性のホウ素π骨格と,電子受容性スペーサー部位を組み合わせたD-A-A型骨格を創ることにより,高輝度の近赤外蛍光の実現に成功した. iii) ホウ素安定化ラジカルの物性と応用:ホウ素で極度に安定化したπラジカルが強い赤色蛍光を示すことに焦点を当て,構造―物性相関の検討によりその起源と修飾の可能性を明らかにした.また,このπラジカルの有機ELへの応用についても検討し,πラジカルを発光性ドーパントとして用い,電子構造のバランスのとれた一連の材料と組み合わせた素子作製を塗布プロセスにより行い,高い励起子生成効率を達成した. iv) ホウ素π電子系からなる超分子ポリマーの創製:平面固定化ホウ素π電子系の平面構造とLewis酸性を活用することにより,ホウ素π電子系からなる超分子ポリマーの種重合に取り組んだ.自発的な会合の抑制部位としてジアミド骨格を導入したホウ素π電子系の精密超分子重合を検討し,螺旋状の一次元集合体をもつ超分子ポリマーの形成に成功した.また,同じ形をもつ平面固定トリアリールボランとトリアリールアミンπ電子系とのブロック超分子共重合体の形成にも成功した.
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Strategy for Future Research Activity |
ホウ素を含む光・電子機能性分子の創製を目指し,以下の点に継続して取り組む 1) 構造固定ホウ素π電子系のコア骨格の合成・物性評価:3つの異なるアリール基を導入した構造固定トリアリールボラン骨格の創製を引き続き行う.役割の異なる3つのアリール基の導入や,構造固定を広義に捉えた骨格の合成法の確立を行い,それらのコア骨格としての有用性,潜在性を明らかにする.得られるπ電子系のパッキング様式,光物性,ルイス酸性等の基礎物性の評価を進め,各々に特有の機能を追求する. 2) ホウ素π電子系の物性の追求:ホウ素骨格部位をacceptor部位に用いたD-A-A型もしくはA-D-A型構造の構築により,引き続き近赤外蛍光特性を追求する.また,ホウ素安定化ラジカルにおいても,まだ赤色発光にとどまっているので,この長波長化を実現する新骨格の合成を行う.ホウ素π電子系の光反応についても引き続き検討を行い,フォトクロミック分子系の創製を狙う. 3) ホウ素π電子系からなる超分子ポリマーの機能開拓:ジアミド側鎖を導入した平面固定ホウ素π電子系の超分子重合を引き続き追求する.平面ホウ素π電子系のπスタック能,ルイス酸性,ジアミド部位の水素結合形成といった特性の相乗的活用により,高度な配向手法の確立を目指す.また,これらの種重合による精密超分子重合にも取り組み,超分子ポリマーの分子量・長さが物性に及ぼす効果について精査する. 4) ホウ素π電子系の有機エレクトロニクスへの展開:ホウ素安定化πラジカルの両極性電荷輸送特性と赤色発光特性に着目し,近赤外有機ELの発光材料としての有用性を引き続き検討する. 5) ホウ素π電子系のバイオイメージングへの展開:ホウ素π電子系の蛍光イメージングへの応用の可能性を引き続き精査する.特に上記で得られる近赤外蛍光色素骨格を用い,深部イメージングへの応用の可能性を追求する.
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Research Products
(26 results)