2018 Fiscal Year Annual Research Report
Uncovering the secrets of lipid-transporting ABC proteins
Project/Area Number |
18H05269
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
植田 和光 京都大学, 農学研究科, 教授 (10151789)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 泰久 京都大学, 農学研究科, 助教 (10415143)
笠井 倫志 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (20447949)
古寺 哲幸 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (30584635)
中津 亨 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (50293949)
木下 政人 京都大学, 農学研究科, 助教 (60263125)
|
Project Period (FY) |
2018-06-11 – 2023-03-31
|
Keywords | ABC蛋白質 / コレステロール / トランスポーター / 動脈硬化症 / アルツハイマー病 / 神経変性疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
ABCA1がHDL(いわゆる善玉コレステロール)の産生に必須な膜脂質輸送体であること、そしてHDL産生を通して動脈硬化症の予防に大きく寄与していることは明白である。しかし、HDL産生機構およびABCA1の機能にはいまだ多くの謎が残されている。30年度は、まずHDL産生機構解明のため、脂質アクセプターであるアポリポ蛋白質apoA-Iに光反応性官能基Sulfo-SBEDを付加することによって、HDL産生においてABCA1とapoA-Iが直接相互作用することを明らかにした(Kawanobe, BBB 2019)。次に、コレステロール依存的に細胞膜に孔を形成する細菌毒素であるストレプトリジンO (SLO)を用いて、細胞膜中のコレステロール存在様式を解析した。その結果、ABCA1発現細胞の細胞膜にはSLO孔形成が起こらないことを見出した。細胞膜表面のコレステロールに依存して結合する別の細菌毒素PFOとの比較から、SLOは細胞膜内層のコレステロールに依存して孔を開けており、ABCA1が細胞膜内層のコレステロール濃度を低下させることによってSLO孔形成を阻害することを明らかにした。これらの結果から、ABCA1は、細胞内の過剰なコレステロールを細胞外へ排出しHDLを形成するだけでなく、細胞膜中でコレステロールを内層から外層へ輸送(フロップ)していることが明らかになった(Ogasawara, Sci Rep 2019)。さらに、内在性ABCA1の発現を抑制したマウス胚性線維芽細胞を用いて解析を行った結果、ABCA1が細胞膜内層のコレステロール濃度を変化させることで、細胞密度の変化に依存した細胞遊走を調節していること、さらに細胞内シグナル分子Rac1とERKがその調節に関わることを明らかにした(Ito, BBB 2019)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
10年以上かけて解析をしてきた脂溶性化合物排出ポンプであるABCB1の基質輸送後の構造を1.9Åの高分解能で解明し、ABCB1の輸送機構の解明に成功した。その結果、脂溶性化合物を細胞外へ直接排出する輸送体と、膜脂質を細胞内でフリップフロップする輸送体の基質輸送後の構造が異なることを明らかにした(Kodan, Nat Commn 2019)。ところが、30年度の研究から、ABCA1がコレステロールを細胞外へ排出する活性以外に、コレステロールを細胞膜中でフロップする活性を持つことを実証することに成功した(Ogasawara, Sci Rep 2019)。つまり、ABCA1はコレステロールを細胞外へ排出する活性と、細胞膜中でフロップする活性の2つの異なる活性を何らかの機構でスイッチしていると考えられる。その機構の解明は今後の研究において重要である。さらに、これらの研究から、コレステロールの生理的役割がこれまでの常識を大きく超え「細胞膜内シグナル分子」として機能していることがわかってきた。本研究によって、細胞生物学の常識を大きく塗り替えると期待できる。また、ABCA1のAFM観察の実現のために、基板上に脂質二重膜を形成する条件の大幅な改善に成功した。さらに、ABC蛋白質をノックアウトしたメダカに、表現型の変化が表れてきた。今後の展開が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
31年度は、ABCA1によるHDL産生反応の初速を解析することによって、HDL産生が細胞内コレステロール濃度に依存していることを示し、それによってABCA1がコレステロールを直接輸送していることを証明する。さらに輸送したコレステロールを細胞外ドメインに溜め込んだABCA1を高速AFMによって観察するため、脂質二重膜をAFM観察基板に形成させ、精製したABCA1の活性を保ったまま基板上の脂質二重膜に再構成する条件を確立する。また、クライオ電子顕微鏡を用いたABCA1の構造解析の条件も確立しつつある。31年度に本格的な観察を開始する。さらに結晶化条件のスクリーニングも順調に進展しており、すでに微結晶が観察できている。メダカのABCA1、ABCA7、ABCA13オーソログのノックアウトにも成功しており、本年度は生理的影響の観察を本格的に行う。
|
Research Products
(29 results)