2020 Fiscal Year Annual Research Report
Uncovering the secrets of lipid-transporting ABC proteins
Project/Area Number |
18H05269
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
植田 和光 京都大学, 高等研究院, 特定教授 (10151789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 泰久 京都大学, 農学研究科, 准教授 (10415143)
笠井 倫志 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (20447949)
古寺 哲幸 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (30584635)
中津 亨 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (50293949)
木下 政人 京都大学, 農学研究科, 助教 (60263125)
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Project Period (FY) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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Keywords | ABC蛋白質 / ABCA13 / コレステロール / 精神疾患 / 統合失調症 / 神経細胞 / ノックアウトマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ABCA13の生理的役割を検討した。ヒトABC蛋白質で最も大きいABCA13 (5,058アミノ酸)は、これまで遺伝的多型の研究などから精神疾患との関連が示唆されていたが、疾患との直接的な関連やその機能に関しては、不明であった。そこで、マウスABCA13cDNA (15 kb)を単離し、HEK293細胞に一過性発現させ、その機能を解析した。また、ABCA13KOマウスを樹立し、網羅的行動テストバッテリーを実施した。 まず、ABCA13の細胞内局在を確かめるため、HEK293細胞に一過性発現させ免疫染色を実施した。その結果、ABCA13は細胞膜のコレステロールを細胞内小胞に輸送することが示唆された。コレステロール輸送と精神疾患との関連を検証するため、精神疾患の発症リスクとして報告されている変異をABCA13に導入し検討した。その結果、精神疾患の発症リスク変異により、ABCA13の細胞内局在やコレステロール輸送が障害されることが明らかとなった。 次に、ABCA13の生理的役割を解明するため、ABCA13 KOマウスを作製し、網羅的行動テストバッテリーを実施した。その結果、ABCA13 KOマウスは、統合失調症患者や精神疾患モデルマウスに特徴的な症状であるプレパルスインヒビションの障害を示すことが明らかとなった。さらに、ABCA13 KOマウスの初代培養大脳皮質神経細胞を用いて検討した結果、ABCA13の欠損によりシナプス小胞のエンドサイトーシスが障害されることが明らかとなった。 これらの結果から、ABCA13が逆行性輸送により細胞膜から細胞内小胞にコレステロールを取り込むこと、ABCA13はシナプス小胞のエンドサイトーシスに関与し、ABCA13の機能不全が精神疾患の病態生理に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ABCA13の生理的役割を解明するため、CRISPR/Casシステムを用いてABCA13 KOマウスを作製し、網羅的行動テストバッテリーを実施した。その結果、ABCA13 KOマウスは、統合失調症患者や精神疾患モデルマウスに特徴的な症状であるプレパルスインヒビションの障害を示すことが明らかとなった。それ以外の行動評価は野生型と有意な差は観察されなかった。細胞生物学的な解析から、ABCA13が逆行性輸送により細胞膜から細胞内小胞にコレステロールを取り込むこと、ABCA13はシナプス小胞のエンドサイトーシスに関与し、ABCA13の機能不全が精神疾患の病態生理に関与することが明らかになった。本ノックアウトマウスは、統合失調症のモデルとして有効であり、精神疾患の病態解明において役立つと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
ABC蛋白質によるコレステロール輸送の生理的役割に関しては、未だ不明な点が多い。本研究では、発現場所や時期の解析が容易なモデル動物であるメダカを用いて、ABCA1によるコレステロール輸送の生理的役割の解析を進めている。ABCA1KOメダカの解析によって、これまで知られていなかったコレステロール輸送の生理的役割の解明ができると期待できる。また、細胞膜中でコレステロールが非対称的に分布していること、それによってコレステロールがシグナル分子として機能することを可能にしていることを明確に示す細胞生物学的な研究が進展してきた。R3年度中には論文として報告したいと考えている。
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