2019 Fiscal Year Annual Research Report
Biochemical approaches to understanding the reaction platforms of the piRNA pathway
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18H05271
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
泊 幸秀 東京大学, 定量生命科学研究所, 教授 (90447368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 真一 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (50324679)
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Project Period (FY) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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Keywords | piRNA / PIWI / 反応場 / ミトコンドリア / Zucchini / Trimmer |
Outline of Annual Research Achievements |
piRNA生合成経路の過程において、残されていた最も大きな謎の1つである「Pre-pre-piRNAを切断しpre-piRNAを生み出している因子は何なのか?」ということについて、反応場であるミトコンドリアを丸ごと用いた独自の無細胞系と、情報生物学的アプローチを組み合わせた詳細な解析を行った。その結果、カイコにおいては、pre-piRNAが「Zucchiniによる切断」と「(別の)PIWIによる切断」という、2つの異なる様式によって産生されていることを見いだした。重要なことに、Zucchiniによる切断には、切断位置の1塩基後のUだけではなく、その前後の位置に存在するこれまで知られていなかった新たな配列モチーフが重要であることが明らかになった。さらに詳細な解析から、この配列モチーフが存在するか否かが、2つの様式のいずれで切断されやすいかを決めていることを突き止めた。これらの結果は、Zucchiniが正しく機能するには、いくつかの補助因子と、それらが適切に配置されたミトコンドリア外膜という「反応場」こそが重要である、ということを実験的に実証するものであり、従来の遺伝学と生化学との矛盾を解消するものである。 また、PIWIを含めたArgonauteファミリータンパク質は、単体では安定性が極めて低いという共通した性質を持つが、全長に渡って特定の構造を取らず煮沸にも耐える「超天然変性タンパク質」とも呼ぶべき機能未知タンパク質群(Hero [HEat-Resistant Obscure]タンパク質と名付けた)によって、高度に安定化されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「反応場」に着目するという独自の視点に基づいたpiRNA経路の解析は、当初の研究目的通り順調に進捗し、当該分野が抱えてきた大きな課題を正面から突破することによって、国際的にも高く評価される研究成果に結びついた。「反応場」を丸ごと試験管内に取り出すという生化学的アプローチは、piRNA経路だけではなく、様々な生物学的経路に適応可能であり、広範囲な影響が期待される。また、Heroタンパク質の予想外の発見は、piRNAやRNAサイレンシングの分野にとどまらず、基礎生物学分野から医薬産業応用に至るまで、大きな波及効果を及ぼすものと考えられる。重要なこととして、piRNA経路の中核因子であるPIWIタンパク質自身も、生体内においてHeroタンパク質に保護されるクライアントタンパク質の1つであると考えられると同時に、piRNAによる標的切断の反応場であるニュアージュなどの非膜性凝集体の形成も、Heroタンパク質によって制御されている可能性が高い。したがって、Heroタンパク質の発見は、piRNA経路の理解にも大きく貢献することが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
「piRNA生合成の反応場」であるミトコンドリアに着目した解析は、生物情報学的アプローチによって新たに同定したZucchini切断モチーフの認識機構に焦点を当て、今後の解析を進める。また、「piRNAによる標的抑制の反応場」である非膜性凝集体ニュアージュについては、これまでにその構成因子を蛍光タンパク質でラベルしたBmN4細胞の破砕液から、フローサイトメトリーを用いて高純度で回収することに成功しているが、収量が低く、無細胞系の構築に移行するには時期尚早であると判断している。一方で、ニュアージュの主要な構成因子であるATP依存性RNAヘリカーゼVasaや、PIWIタンパク質自身の様々な変異体において、ニュアージュの形成や局在、さらには細胞内反応場の区画化に大きな異常が生じるという興味深い知見を得ている。そこで、高解像度顕微鏡によるライブイメージングを活用し、反応場であるニュアージュのダイナミックな細胞内動態をリアルタイムで精緻に観察して定量的に解析するとともに、生物情報学的アプローチも駆使しながら、ニュアージュの動態変化が、piRNAによる標的抑制とそれに引き続く新たなpiRNAの生合成にどのような影響を与えるのかを明らかにする。
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Research Products
(11 results)