2019 Fiscal Year Annual Research Report
methanogenesis from root organic matters in deep subsurface
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18H05295
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
鎌形 洋一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 招聘研究員 (70356814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉木 秀幸 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ長 (00421842)
眞弓 大介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (30549861)
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Project Period (FY) |
2018-06-11 – 2023-03-31
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Keywords | 地下圏微生物 / 根源有機物 / 原油 / 石炭 / メタン生成アーキア / 共生微生物 / メタゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
地下圏には多様な微生物が存在し、地球規模の炭素循環に深く関わっている。しかし、その多くは未知であり、1) どのような有機物が地下生命圏を支えているのか、2) またどのような微生物がどのようにしてそうした地下の根源的有機物を分解しメタン生成に至るのかについてもほとんどわかっていない。そこで本研究では、地下圏における生物学的メタン生成に関わる微生物群を明らかにするとともに、地下生命圏を支える有機物の実態を解明することにより、地下圏におけるメタンの成因解明に資する基盤的知見を得ることを目指している。 今年度、1)については、根源有機物からの熱化学反応生成物の解析を実施した。特に、褐炭の熱分解を試みたところ、中―長鎖脂肪酸のほか、ヒドロキシ安息香酸、ナフトールなど、直鎖炭化水素やイソプレノイドアルカン、芳香族化合物(メトキシ系含む)が検出され、こうした多様な有機物が地下の生命圏を支えている可能性が示唆された。 2)については、深部地下油層環境に生息する微生物叢を16S rRNA遺伝子アンプリコンシークエンシングにより解析した。その結果、高温性の酢酸酸化共生細菌と水素資化性メタン生成菌が優占しており、これらの微生物群が油層環境における酢酸からのメタン生成反応において重要な役割を担っていることが示唆された。地下環境を模擬した培養システムを活用して、深部地下圏の根源有機物分解に関与しうる微生物群の集積培養を試みた。その結果、山形油田の油層水から、原油中のアルカンを分解しメタンを生成する集積培養系の獲得に成功した。またこれまでに実施者らが純粋分離に成功したメトキシ芳香族化合物分解メタン生成アーキアについて、ゲノム解析ならびにメタトランスクリプトーム解析を実施し、同株が従来経路とは全く異なる新規なメタン生成経路を有していることを明らかにしつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) どのような有機物が地下生命圏を支えているのか、2) またどのような微生物がどのようにしてそうした地下の根源的有機物を分解しメタン生成に至るのか、という二大命題について研究が進んでいる。本年度の研究推進により、深部地下生命圏を支えうる根源有機物の解明ならびにその有機物分解メタン生成プロセスに関与しうる中核的な微生物群の特定と培養化の第一歩としての集積培養が着々と進んでいる。またすでに分離培養に成功しているメトキシ芳香族化合物分解メタン生成アーキアの新規な代謝経路解明にも成功しつつある。またこうした研究過程で、水素資化性メタン生成アーキアと共生し、進化系統的にも真核生物に最も近く、これまで実態が全く知られていなかった海底地下圏のアーキアの精緻なゲノム解析、深部地下圏で起こりうる水素からの有機物生成に関する発見にも貢献した。こうしたことから現在までの達成度を「概ね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、深部地下圏においてその生命圏を支え、かつ、天然ガス資源でもあるメタン生成の基質となりうる根源有機物ならびにその高温高圧反応生成物の同定を進めていく予定である。また、深部地下圏において根源有機物分解メタン生成プロセスを担う地下微生物群の生理生態を、環境ゲノム情報解析と培養技術を駆使してより詳細に明らかにする予定である。既に集積培養が確立しつつあるものから完全な分離培養に挑み、その知られざる生理生態機能の解明を通じて、地下生命圏におけるメタン生成機構の包括的な理解につなげたいと考えている。
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Research Products
(10 results)