2019 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の教育メディアと〈教員の物語〉の総合的研究
Project/Area Number |
18J00021
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
出木 良輔 同志社大学, 文学部, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 日本近代文学 / 教育史 / 教育雑誌 / 教育小説 / 教員像 / 国語教科書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度実施した教育雑誌類(『教育実験界』『教育界』『教育学術界』など)の調査に基づき、それらの雑誌に掲載された小説や論説類の具体的な読解を進めた。その内容は以下のように大別される。 (1)明治・大正期の学校教員の文学受容に関する調査・考察 この研究成果の一端は、論文「「有島事件」と教育メディア―有島武郎像の生成と転回―」(『リテラシー史研究』13、2020年1月)として発表した。この論文では、国語教科書や教育雑誌、教師用指導書といった種々の教育メディアが、日本近代文学の作家像の構築にいかなる形で関与していたのかを考察している。とりわけ大正期の国語教科書の「定番作家」だった有島武郎と、彼の心中事件が教育メディア上でどのように表象されていたのか、そして国語教員たちがこの「事件」をどのように乗り越えようとしていたのかを検討した。 教育関係者の文学受容については未だ詳らかになっていない点が多く、関連する先行研究も殆ど存在しない。今後も継続して調査・考察を実施したい。本年度末には信州大学教育学部図書館のご協力を得て同窓会誌『学友』を閲覧する機会に恵まれたため、次年度は主にこの資料に関する考察を進める予定である。 (2)教育雑誌に掲載された文学作品の分析と、教育雑誌の「小説戦略」に関する考察 これに関する成果の一部は「明治期『教育界』の小説戦略―国木田独歩「富岡先生」と「村夫子」幻想―」(日本文学協会第39回研究発表大会、2019年7月)として口頭発表を行なった。この発表では明治期の教科書出版社・金港堂の教育雑誌『教育界』とその掲載小説群を取り上げ、国木田独歩「富岡先生」が掲載小説の中で一際特異性を持つテクストであることを指摘した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の通り本年度は前年度からの調査を深化し、成果も順調に発表することができているように思われる。本年度行なった調査に基づいた論文も現在二編執筆しており、次年度以降の成果発表も期待される。 以上の点から、本研究は「おおむね順調に進展している」と判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染拡大が研究遂行にも大きく影響している。登壇を予定していた次年度の研究会が中止になり、資料調査の予定も見通しが立たない状況である。 それゆえ「今後の研究の推進方策」も安易に策定し難い状況ではあるが、まずは現在執筆している論文の投稿を行うと共に、本年度得られた調査結果の整理と考察を進める予定である。次年度が本課題の最終年度となることは確かであるため、研究成果のさらなる深化を図りたい。
|
Research Products
(2 results)