2019 Fiscal Year Annual Research Report
高空隙標的のクレーター形成に伴う衝撃圧伝播過程の解明:小天体表層進化への応用
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18J00027
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
岡本 尚也 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 高速衝突実験 / 数値衝突計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
太陽系の天体上には大小様々なクレーターがある。これらは過去の衝突の履歴を反映していると考えられている。近年、盛んな太陽系探査活動により小天体表面の詳細な画像が得られつつあるが、探査機が得た天体表面に関する詳細なデータを正確に解釈し、過去に起こった表層進化史を明らかにするには、クレーター形成の素過程の解明が鍵となる。本研究は、特に空隙の高い小天体上のクレーターがどのように形成されるかを知るため、その生成に関しての基礎的な物理メカニズムを理解することである。 令和元年度は衝突により高空隙標的内の衝撃圧がどのように伝播するのかを調べるため、空隙率94%、バルク密度0.15g/cm^3を持つ標的を作成しこれに対して高速衝突実験を行った。トレーサー粒子として鉄球を使用し、標的内部に配置した。弾丸が貫入中にフラッシュX線を照射することで、衝突直後に広がる衝撃波に伴って標的内部の粒子がどのような方向にどのような速度で移動するかの計測を行った。得られた実験結果に対して画像処理を施し、衝突の前後でトレーサー粒子の移動量を調べたが、トレーサー粒子の移動は認識することができなかった。これは標的とトレーサー粒子の間で非常に大きな密度差があったため、標的粒子が十分にトレーサー粒子を押し進めることができなかったと考えられる。本実験結果について、国内シンポジウムでの書面発表を行った。 今後は数値シミュレーションを推し進め、本実験でトレーサー粒子の移動が認識できなかった原因を突き止めるとともに、実験で取得できるクレーターサイズの成長データとの比較を行い、入力パラメータの校正を行って、高空隙標的内に広がる衝撃圧の分布について調べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は室内高速衝突実験を押し進め、実験結果で得られる標的内部粒子の移動速度・移動方向から衝撃波の伝播過程を調べる予定であった。しかし今年度に行った実験の条件・方法では、標的内部に配置したトレーサー粒子が移動せず、標的内部の粒子の可視化を行うことはできないことがわかった。これにより当初予定していた実験データの取得が行えず、数値計算結果との比較を行うまでに至らなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の実験でトレーサー粒子が動かなかったことを理解するためにも、今後は数値シミュレーションを推し進め、衝撃圧の減衰や標的粒子の運動方向・運動量を定量的に見積もり評価していく予定である。同時にクレーターサイズの成長についての実験データを取得し、実験結果と数値計算を比較して数値計算の内部パラメータの校正を行う予定である。
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