2018 Fiscal Year Annual Research Report
Prosodic typology in Turkic languages
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18J00096
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
菅沼 健太郎 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | トルコ語 / 現代ウイグル語 / チュルク諸語 / アクセント / 韻律 / 類型論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は主にトルコ語と現代ウイグル語それぞれにおいて文レベルのアクセントがどのように実現するのかに着目した研究を行った。 まず平叙文においては、両言語とも、文内の各語のアクセントが実現するようなアクセントパターンになる。しかし、トルコ語では「誰」や「何」などのwh語(疑問詞)を含む疑問文(wh疑問文)においては、そのwh語の作用域内に含まれる語のアクセントが実現しない(単純なwh疑問文であれば、疑問詞より後ろにある、文末までの全ての語のアクセントが実現しないことになる)。トルコ語におけるこのようなアクセントパターンは先行研究でも述べられており、菅沼が平成30年度に行った調査でも同様のアクセントパターンが得られた。 しかし、このようなアクセントパターンが他のチュルク諸語でもみられるかどうかは明らかになっていない。そこで平成30年度は(同じチュルク諸語に属する)現代ウイグル語を対象とした調査を行った。 調査の結果、現代ウイグル語ではトルコ語のwh疑問文のようなアクセントパターンは現れず、平叙文と変わらない各語のアクセントが実現するようなアクセントパターンが現れることが明らかになった。このことから、トルコ語ではアクセントはwh語の作用域を示す役割がある一方で、現代ウイグル語ではアクセントにそのような役割がないこと、および両言語は同じチュルク諸語に属する言語であるが、アクセントに着目した類型論的観点からみると異なる性質をもつことが明らかになった。この研究成果は平成30年度8月に開催された国際学会において発表した。 また、平成30年度は今後のチュルク諸語との対照のために、日本語諸方言のアクセントの研究として秋田方言のを行った。今後他の日本語諸方言も対象とした研究を行い、チュルク諸語との対照を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の3つの理由から、おおむね順調に進展していると判断した。 1. チュルク諸語間のアクセントにまつわる相違点を発見し、言語類型論的研究に貢献するようなデータを提供することができたため。 2. 学会での意見交換や発表を通して、今後の課題、およびその解決方策を見つけることができたため。 3. 平成30年度主に対象としたトルコ語と現代ウイグル語以外のチュルク諸語、および日本語諸方言についても調査を進めており、将来的により広範な研究を行う基盤が整っているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、トルコ語と現代ウイグル語以外のチュルク諸語、および日本語諸方言などの、チュルク諸語以外の言語のアクセント研究を行う必要がある(チュルク諸語に関しては現時点ではキルギス語とエスキシェヒル・カラチャイ語を対象とする予定をしている)。また、平成30年度はwh語の作用域などの主にwh語の後方の語(※)のアクセントに着目した研究を行ったが、今後はこれに加え、wh語の前方に位置する語のアクセントについての研究、および、wh疑問文ではなく、フォーカス要素(強調されている要素)が含まれる文におけるアクセントの研究を行う必要がある(※チュルク諸語の場合、基本的には、wh語に後続する語がwh語の作用域内に含まれる)。
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