2019 Fiscal Year Annual Research Report
ミジンコの環境依存型性決定を制御する幼若ホルモン生合成系の解明
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18J00149
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
豊田 賢治 神奈川大学, 理学部 生物科学科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | ミジンコ / 幼若ホルモン / 環境依存型性決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究から見出したオオミジンコDaphnia magnaの日長依存型性決定を示す2系統(LRV13.2, LRV13.5-1系統)を用いて、D. pulex WTN6系統で得られた知見の検証実験を実施した。まずLRV13.2系統とLRV13.5-1系統の産仔プロファイルを明らかにするため、長日条件(14時間明:10時間暗)と短日条件(10時間明:14時間暗)の両条件下で生涯飼育を行なった。その結果、既報通りLRV13.2系統は長日条件でメスを、短日条件でオスを産生するが、LRV13.5-1系統はその逆の長日条件でオスを、短日条件でメスを産生すること、さらに加齢に伴いオス産生能が低下することを見出した。続いて、研究代表者の先行研究により、イオンチャネル型グルタミン酸受容体(iGluR)の阻害剤であるMK-801やプロテインキナーゼC(PKC)経路の阻害剤であるbisindolylmaleimide IV(BIM)をオス誘導条件下で成体メスに投与することでオス産生が抑制され、メス産生が促進されることが明らかになっており、本現象が上述のオオミジンコの2系統でも保存されているのか調べた。その結果、両系統において、MK-801とBIMの投与でオス産生が有意に抑制されることを見出した。本結果は先行研究と一致するものであり、iGluRとPKCを介して日長時間に応じて雌雄を産み分けるミジンコの性決定機構はD. pulexとD. magnaの間で保存されていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたミジンコDaphnia pulex WTN6系統を用いた解析に加え、新たに光周期依存的な性決定システムを有するオオミジンコ2系統を確立した。これにより性決定システムの種間比較および系統間比較が可能になった。 すでにオオミジンコ2系統についてはWTN6系統で得られた知見の比較解析は終えており、共通した性決定因子とWTN6系統のみで観察される現象を明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ミジンコに加え、十脚目甲殻類(エビやカニなど)を用いて幼若ホルモンの生理機能解析を進めている。幼若ホルモンは昆虫類では変態や脱皮などの現象を制御していることが知られているが、甲殻類ではミジンコを除きその生理機能がほとんど解明されていない。研究代表者は甲殻類において幼若ホルモンの生理機能を明らかにするため、クルマエビやワタリガニなどの水産的に重要な甲殻類をモデルとして比較研究に着手している。
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Research Products
(6 results)