2018 Fiscal Year Annual Research Report
Investigation of the photophysical properties of lanthanide compounds using single-ion/molecule fluorescence spectroscopy
Project/Area Number |
18J00226
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大曲 駿 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | トリボルミネッセンス / 蛍光顕微鏡 / 原子間力顕微鏡 / 希土類化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では希土類化合物の蛍光顕微鏡観察による発光メカニズム解明を目的とする。去年度の研究では、単一単結晶のトリボルミネッセンス(結晶を粉砕した際に発光する現象)を定量的に評価し、この現象のメカニズムを解明することを目的としている。具体的には原子間力顕微鏡のプローブで印加圧力を測定しながら結晶を粉砕し、生じた発光を蛍光顕微鏡で観察する。 去年度ではこの目的を達成するために、1)蛍光顕微鏡の技術の習得、2)試料作成の条件の最適化、3)希土類間エネルギー移動の理論シミュレーションを行った。 蛍光顕微鏡の技術の習得のために、高効率発光を示す安定な試料においてその観察を行い、単一分子分光に成功した。これによって、実験を行うために必要な試料の条件や測定系のセットアップに関する知見および限界等を得た。トリボルミネッセンス測定においては、希土類配位高分子を石英基盤に微単結晶として作成するための条件出しを行った。また、作成した試料に対して結晶への印加圧力と同時に発光を測定した。その結果、現条件では試料側の都合で発光が観測されなかった。希土類間エネルギー移動のトリボルミネッセンスへの影響を明らかにするために、希土類間エネルギー移動の理論シミュレーションを試みた。その結果、エネルギー移動に起因した励起状態ダイナミクスを明らかにし、その可視化に成功した。この結果については光化学討論会においてその研究を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)蛍光顕微鏡および単一分子分光法の技術の習得について:本研究課題を実施するにあたって蛍光顕微鏡や単一分子分光法の技術を習得する必要である。ここでは、量子収率が高く発光寿命が長いPerylene-bis-dicarboximideの蛍光顕微鏡観察を行った。低濃度では単一分子の発光が観察されたため、ここで分光器を使用することにより単一分子分光に成功した。 2)原子間力顕微鏡+蛍光顕微鏡の測定装置におけるトリボルミネッセンス評価について:本測定系では基板上に試料の微単結晶(粒径100nm程度)を作成する必要がある。ここで、スピンコートとドロップキャストを中心に条件模索を行った。用いる溶液の試料濃度や、溶媒、また溶媒の組み合わせの条件も検討した。得られた基板上の試料は単結晶ではなく、圧力を印加しても発光は観測されなかった。今後、再沈殿も行う予定である。 3)希土類間エネルギー移動のシミュレーションについて:今後、EuとTbを混ぜた配位高分子において、各希土類の発光強度がフォトルミネッセンスとトリボルミネッセンスにおいて異なることを解明する。ここでは、TbからEuへのエネルギー移動効率が異なる可能性に着目し、シミュレーションを行うことを考えた。まずはエネルギー移動のシミュレーションを、理論的に扱いやすいYbについて行ったところ、定常励起やパルス励起による励起状態ダイナミクスの可視化に成功した。この成果に関しては光化学討論会にて発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては1)トリボルミネッセンス測定に用いる試料の微単結晶作成法の確立、および2)Tb/Eu混合配位高分子におけるトリボルミネッセンスシミュレーションを中心に行う予定である。 1)トリボルミネッセンス測定に用いる試料の微単結晶作成法の確立:石英基盤に適切な粒径の配位高分子の微単結晶を作成するために再沈殿法を行う予定である。再沈澱を行うにあたって、溶媒の溶解性について検討する。微単結晶が得られた場合、それで蛍光顕微鏡+原子間力顕微鏡のトリボルミネッセンス観察を行う。 2)Tb/Eu混合配位高分子におけるトリボルミネッセンスシミュレーション:光音響分光、吸収スペクトル、発光スペクトルを通して、放射・無放射・エネルギー移動の速度定数を算出し、レート方程式によってTb/Eu混合配位高分子のトリボルミネッセンスをシミュレーションする。ここでは、MATLABを用いて行列法でTb/Euの分布をランダムに配列し、レート方程式を自動的に立てて計算するプログラムを作成する。これによって、エネルギー移動がいかにトリボルミネッセンスに影響し得るかを検討する。 以上の方策によって得られた結果は学会や論文にて発表する予定である。
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Research Products
(9 results)