2018 Fiscal Year Annual Research Report
Ecogenomics of prokaryotes, viruses, and microbial eukaryotes in deep freshwater lakes
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18J00300
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
岡崎 友輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 大水深淡水湖 / メタゲノム / 細菌 / ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は淡水湖の微生物環境ゲノム情報基盤の構築に向けたサンプリングを主に実施した。メインフィールドである琵琶湖においては、2018年5月から月に1度の頻度で調査を実施しており、現在まで継続中である。具体的には、沖合の定点(水深73 m)において、表層(5m)および深層(65m)の2層より10Lの湖水を採集し、フィルターを用いて5-200μm(真核微生物), 0.2-5μm(原核生物), 0.2μm以下(ウイルス)の3つのサイズ画分に分けて採集した。これらの操作は湖水の採集後船上で直ちに行い、全DNAおよびRNA抽出用サンプルとして-80℃にて瞬間凍結して保存した。加えて、2018年10月に国内の代表的な大水深淡水湖である十和田湖(最大水深326m)と支笏湖(同360m)の調査を行い、沖合最深部にて鉛直的に5水深より採水した湖水より、琵琶湖と同様にして微生物用DNAサンプルを捕集した。これら2湖のサンプルについてはすでにDNA抽出及びショットガンメタゲノムシーケンスまで完了している。 上記に加え、昨年度までに採集済みであったサンプルの解析も本研究において実施した。具体的には、スイス・イタリア・オーストリアにまたがるアルプスの7つの氷河湖より採集したサンプルを利用し、Fluorescent in situ hybridization(FISH)法を用いて、淡水湖の深水層で優占するCL500-11系統の細菌が、欧州の大水深淡水湖においても量的に重要な細菌系統であることを示した。さらに、昨年度までに琵琶湖で得られた細菌・ウイルスのショットガンメタゲノムシーケンスのデータ解析を進め、57の細菌ドラフトゲノム、183の完全長ウイルスゲノムをアセンブルし、大型淡水湖における細菌とウイルスの多様性を網羅的かつゲノムレベルの解像度にて初めて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題初年度である今年度は当初の計画通り、全国の湖における細菌・ウイルス・真核微生物の環境ゲノムサンプルの採集を進めた。特に最大水深が300mを超え、国内有数の大水深淡水湖である支笏湖(北海道)・十和田湖(青森県)における鉛直的な環境ゲノムサンプルの採集に成功し、既に原核生物については、DNAシーケンスまで完了している。この点は期待を超える進展があったといえる。さらに、琵琶湖沖の定点においては5月から現在に至るまで毎月の調査を欠かさず継続しており、細菌-ウイルス-真核微生物生態系の時系列・季節的な変動を捉えた貴重なデータが得られつつある。一方で、本課題に関連して前年度までにサンプルの採集を進めていた欧州アルプスの大水深氷河湖におけるCL500-11細菌系統の分布調査について、成果を論文として発表した。上記の取組および成果を鑑み、総じて今年度の研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で計画していた湖調査は今年度までにおおむね完了しており、来年度は得られたサンプルからのDNA/RNAの抽出、シーケンス、およびデータの解析が主な研究計画となる。DNAサンプルについてはすでに技術・知見の蓄積があるため解析の見通しが立っているが、RNAサンプルに関してはDNAよりも処理の難易度が高く、実験・データ解析経験も乏しいため、貴重なサンプルを失うことの無いよう、十分に予備実験を行い手法を検討したうえで着手する方策である。
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