2019 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の柔軟性の制限因子の解明および効果的なストレッチング方法の確立
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18J00400
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
平田 浩祐 芝浦工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 柔軟性 / 関節可動域 / 筋 / スティフネス / 加齢 / 高齢者 / ストレッチング / 神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢に伴い,関節の可動範囲に代表される身体の柔軟性は低下する.関節可動域の低下により,運動パフォーマンスの低下や傷害リスクの増加が生じるだけでなく,日常生活動作の制限が生じる.よって,高齢者における関節可動域の制限因子を明らかにすることは重要である.先行研究により,若年者においては,関節可動域と筋の硬さには関連性が示されており,筋が硬いほど関節可動域は狭いことが知られている.一方で,高齢者における両者の関係は不明であった.2018年度の研究により,高齢者においては,筋の硬さと関節可動域に強い関係が認められないことが示された.よって,高齢者においては,筋以外の組織の硬さが重要である可能性が示された.そこで,2019年度は「1.高齢者における関節可動域と筋膜・神経の硬さの関係」を明らかにするため,実験を実施した.さらに,「2.ストレッチングによって高齢者の筋が軟らかくなるのかどうか」を明らかにする実験も行った. 研究対象者は20名の若年者および20名の高齢者とした.受動的な足関節の背屈可動域を等速性筋力計により計測した.また,ふくらはぎの筋群,下肢の後面にある筋膜および神経の硬さを超音波エラストグラフィにより測定した.静的ストレッチングは,90秒×5回おこなった.ストレッチング後も同様に,関節可動域および組織の硬さの測定を行った. この結果,高齢者においては,関節可動域と筋の硬さに関係は認められず,神経の硬さと関連が認められた.すなわち,高齢者の関節可動域を制限する因子として,神経の硬さが重要である可能性が示された.また,90秒×5回の静的ストレッチングは,高齢者の筋を効果的に軟らかくしないことが示された.ただし,ストレッチング実施時に十分伸長できている高齢者の筋にはストレッチング効果が認められたことから,十分な強度で長い時間ストレッチングを行うことが重要であると示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
測定実施および解析に関わるスキルを十分に有していたため,スムースに研究が進捗したことが挙げられる.また,所属研究室は大学近隣の高齢者コミュニティと協力関係を築いているため,参加者の募集が容易であった.測定機器の不調も認められなかった.研究結果も仮説に基づくものであったため,研究成果のとりまとめにも大きな混乱はなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,「高齢者の関節可動域を増加させるために効果的なストレッチング方法の考案」をさらに発展させるべく,高齢者の神経の硬さを低下させ,効果的に関節可動域を向上させるストレッチング方法を探る方針である.現在,Andrade et al. (2017) の研究により,若年者に対し,座位における足関節背屈による静的ストレッチングが坐骨神経の硬さを低下させることが示されているため,これが高齢者に対し効果的かどうか検証しようと考えている.
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