2018 Fiscal Year Annual Research Report
集団構造を考慮した言語変化のプロセス解明のための数理的研究
Project/Area Number |
18J00484
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野原 彩香 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | Tag-Based Cooperation / Ethnic marker / Coordination/Cooperation / Trust game / Spurious correlation / linguistic diversity |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本語の変化のプロセスと変化のメカニズムを、集団構造を考慮して数理的に解明することを中心課題としている。これを達成するために、一年目の本年度は、「協力」という観点をベースに研究を行った。内集団内における日本語のバリエーションの程度を定量化し、それと協力行動の相関関係から、言語のバリエーションの背後にあるメカニズムとして協力行動があることを明らかにすることを目的とした。また、協力行動と言語のバリエーションの程度の世代差を明らかにすることで、変化のプロセスを同時に明らかにすることができると考えた。 また、近年、大規模なデータベースを元にした言語研究におけるデータの質について、いくつかの問題があることが明らかになっているため、データ収集は、それらの問題を解決できるように綿密な調査設計を行った。データの質に起因する偽相関や分析時に想定するモデルの複雑化を避けるため、分析に必要な正しいサンプルサイズでデータの収集を行った。 このような背景の元、2018年9月25日~2018年11月17日の期間において、滋賀県米原市柏原にて108人を対象に調査を行った。調査では、対象地域における協力者のアクセントを調査するとともに、協力行動の量的指標となる協力ゲーム理論を用いた質問を協力者に回答していただいた。収集したデータを元に、一部の分析を進め、結果を2018年12月に行われた日本人間行動進化学会において、ポスター形式で発表した。 一方で、言語の機能面の違いが、言語の変化のプロセスやメカニズムに影響を及ぼすことが十分に考えられる。機能面の違いがこれらに影響を及ぼすとすれば、言語の系統を、大規模データベースを用いて明らかにするという研究アプローチに質的な言語の違いを盛り込まなければならないことになる。これを明らかにする方向性で、現在、日本国内の方言に関する大規模データを電子化中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画上1年目に予定していたデータ収集が完了しており、収集したデータを元に仮説の検証を行える状態にあり、一部の成果を発表したため。当初の計画以上に進展しているとまでは言えない理由としては、雑誌の投稿準備が遅れているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
協力行動を中心とした課題:次年度以降、残りのデータを分析し、仮説の補強を行った上で、国内外の雑誌に投稿予定。 大規模データを中心とした課題:残りのデータの電子化(全データの1/2)。分析(系統推定)。 共通事項:整理したデータの公開。
|
Research Products
(1 results)