2018 Fiscal Year Annual Research Report
Toward understanding the principle of neuronal computation in learning behaviors: Pan-neuronal analysis in the central nervous system of the leech
Project/Area Number |
18J00526
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
冨菜 雄介 慶應義塾大学, 理工学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 神経行動学 / 神経生理学 / 学習 / 記憶 / 無脊椎動物 / 膜電位イメージング / 電気生理学 / ヒル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は脳・神経節の広域に分布する細胞集団の活動ダイナミクスの役割という観点から, 学習行動を担う神経回路網の動作原理を解明する。 網羅的な細胞同定が可能なヒル神経節を用い, 細胞集団全体のダイナミクスが学習プロセスをどのように表現し, 個々の細胞の活動がこれに如何に寄与するのかを明らかにする。対象となる学習としては電気生理学実験により再現が容易な鋭敏化学習に的を絞り, 対象となる行動として圧感覚刺激に対する反射行動である局所湾曲反射を選んだ。ヒルの単離体節神経節標本を用い, 圧感覚細胞と侵害感覚細胞をそれぞれテスト刺激と鋭敏化刺激のターゲットとして細胞内電流注入により刺激するプロトコルをパイロット実験を通して確立した。運動出力は同定運動ニューロンを含む神経根から細胞外記録的にモニターした。これまでに共同研究機関であるカリフォルニア工科大学で確立した両側膜電位イメージング法による網羅計測を利用して網羅的活動データを収集した。この多数のニューロン活動からなる多次元データをテンソル成分分析により次元縮約を行い, 集団活動としての学習前後での振る舞いを表現することに成功した。この成果は第89回日本動物学会大会において報告した(2018年9月)。また, 日本比較生理生化学会の会報誌である『比較生理生化学』の技術ノートにおいて, これまでに確立した両側型顕微鏡を用いた網羅的膜電位イメージング技術を日本語で紹介した(2018年12月)。現在, 圧感覚刺激および侵害刺激を提示された際, どのニューロン群が動員されるのかをより定量的に調べる必要性があると判断し, 両側膜電位イメージング法で得られたデータにコヒーレンス解析を適用した網羅的マッピングによる解析を遂行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はヒルの行動として全身短縮反射を選択する計画であったが, 局所湾曲反射を選んだ。その理由は, 局所湾曲反射は全身短縮反射に比べて, 刺激から反射行動に至るまでの主要な神経回路がより詳細に知られており, 現在使用している顕微鏡セットアップ内で簡便に再現可能なためである。学習形態としては鋭敏化学習に加えて古典的条件づけも試みる予定であったが, 局所湾曲反射においてはその先行研究が存在せず, プロトコル確立が優先されるため, 現時点では鋭敏化学習に焦点を絞り, イメージング実験とその数理解析を進めている。第89回日本動物学会で発表した研究内容に基づき, 今年度を目処に鋭敏化学習前後における神経集団活動の変化の定量的解析結果を論文にまとめることが可能と判断している。以上より, 本研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の8月を期限として, 共同研究機関であるカリフォルニア工科大学において両側膜電位イメージング法を用いて, 局所湾曲反射における鋭敏化学習の神経集団活動データの収集を終え, 数理解析結果をまとめる計画である。また, 学習に伴う神経集団活動の変化に寄与する候補と考えられる少数ニューロン群への細胞内刺激・抑制実験のパイロット実験を並行して行う。また, 細胞内電流注入によって再現した機械刺激提示に対して, どのニューロン群が動員されるのかを網羅的にマッピングする解析を進めており, これを優先度の高い実験として位置づけ, 論文としてまとめる予定である。8月中旬に受入研究機関である慶應義塾大学理工学部に異動し, ヒルにおける電気生理実験セットアップの組み立てを行い, 引き続き細胞内電流注入・細胞内染色実験を行う。これにより, 学習に伴う神経集団活動変化に寄与する少数ニューロン群の同定を行う。
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Research Products
(6 results)